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こんなときどうする会社の法律Q&A [今月のテーマ]会社分割と債権者保護

Q 取引先のA社から、会社を分割し当社と取引中の部門を子会社として独立させるという通知が届きました。この部門はどうやら不振らしく、もし清算や民事再生・破産となれば、当社の売掛金は踏み倒されてしまうかもしれません。そうなると、連鎖倒産しかねません。このような場合、当社の売掛債権は、会社分割後もA社が保証してくれるのでしょうか。

A 契約で、新設会社のみが債務に関して責任を負う規定となっている場合は、債権者として異議を述べ、既存の債権についてはA社に弁済を求めることができます。ただし、分割の効力発生後の新たな取引についてA社は責任を負いません。新設会社との取引を継続するかどうか、新たな条件を提示するかどうかを、判断する必要があるでしょう。

事業部門の子会社化には債権者の同意が不要

会社分割とは、ある事業部門を独立させて子会社にすることです。複数の事業を行う会社が、事業部門の一部を切り出す場合、事業譲渡の手法を選択すると個々の債権者の同意が必要となります。しかし、会社分割の場合は、このような同意がなくても権利義務関係を移転できます。会社分割の手続きは、吸収分割と新設分割で異なります。新設分割の場合では、分割会社(元の会社、A社)が「新設分割計画」(記載する事項は法で定められています)を作成し、株主総会決議で承認を受けることになります。なお、新設分割の登記は承認後に行います。

会社法はいくつかの異議手続を用意している

新設分割計画の法定記載事項には、「新設分割設立株式会社が新設分割により新設分割をする会社(中略)から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務(中略)に関する事項」があります。そして、「新設分割設立株式会社は、その成立の日に、新設分割計画の定めに従い、新設分割会社の権利義務を承継する」としています。債務に関する定めは、「設立会社のみが責任負担」「分割会社と設立会社の両者が責任負担」「分割会社の債務として残る」のかを明らかにします。その際、債権者の個別の承諾は不要です。そのため、質問者が懸念するように、設立会社のみが責任負担する計画の場合において、債権者への弁済資金や引当資産が減少するといった問題が起きることがあります。

そこで、会社法は債権者の異議手続きを複数定めています。例えば、新設分割計画で設立会社の債権者とされ、かつ、分割会社が当該債務について責任を負わない場合、当該債権者は異議を述べることができます。なお、所定の期間内に異議を述べた債権者は分割会社から弁済などを受けられますが、新設分割をしても当該債権者を害する恐れがないときは、この限りではありません。質問の場合では、A社に対して異議を述べたとしても、債権者を害する恐れがないとしてA社が弁済しない可能性もあります。異議を述べた債権者は、分割の効力が生じた日から6カ月以内に、会社分割無効の訴えを提起できます。なお実務上は、このような手続きを不要とするために、分割会社と設立会社の両者が責任を負う形にすることもあります。

その一方で、分割会社へ債務の履行を請求できる債権者は、分割会社は設立会社から相応の対価を取得するという前提から、異議を述べることができません。例えば、分割会社が設立会社の100%株主になるので分割会社の資産総額が変動しないという場合です。

悪質な手法には別手段も

このように、会社分割時には、一定の債権者保護手続きが用意されています。また、一部で横行している優良資産・事業と負債とを分離し、債権者の権利行使を困難にさせる「濫用的会社分割」「泥船分割」と呼ばれる手法に対しては別の対抗手段があります。このような場合には、債権者は、「詐害行為取消権」(民法424条)の行使や、「取締役の第三者に対する責任」(会社法429条)の追及などができます。

(弁護士・軽部 龍太郎)

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