Q 今年の労働者派遣法の改正で、これまで派遣期間の制限がなかった専門性のある26業務などへも一律に期間制限ができたと聞きました。今回、労働者派遣法は、どのように変わったのでしょうか。
A 派遣労働が、「臨時的・一時的な働き方」と位置付けられました。また、26業務の区分を廃止し、派遣労働者個人単位と派遣先単位の二つの期間制限が設けられました。今後は、同一派遣労働者の3年を超えた受け入れはできません。なお、3年以上継続して働いてもらいたい場合は、直接雇用を検討することになります。
大きな変更点は二つ
平成27年の労働者派遣法(以下派遣法)の大きな改正点は、「業務により派遣期間の制限を付していなかった制度(いわゆる専門26業務制度)の廃止」「全ての業務につき、個人単位と派遣先単位の期間制限を設ける」の2点です。派遣労働者の雇用の安定やキャリア形成が図られにくいことから、派遣労働は、「臨時・一時的な働き方」と位置付けられました(派遣法25条)。
従来、派遣先は、「事業所その他派遣就業の場所ごとに同一の業務につき3年を超えた派遣」を受けられませんでした。ただし、専門性のあるいわゆる「26業務」の派遣期間の制限はありませんでした。しかし、この区分の該当性が問題となることがある、派遣労働が「臨時・一時的な働き方」と位置付けられたことなどから廃止されました。
派遣期間は最長で3年
今回、新たに「個人単位」と「派遣先単位」の期間制限が設けられました。個人単位による期間制限とは、同一組織内での派遣期間は最長3年というものです。具体的には、「(派遣会社などの)派遣元は、派遣先の組織単位ごとの業務に、3年を超えて同一の派遣労働者(派遣元で無期雇用の者は除く)を派遣してはならない」(派遣法35条の3)「派遣先は、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れてはならない」(派遣法40条の3)ということです。3年を超えて、その派遣労働者を受け入れた場合は、派遣先が派遣労働者へ労働契約の申し込みをしたものとみなされます。
派遣先単位による期間制限とは、同一事業所での受入期間は3年が上限というものです。具体的に言うと、「派遣先は派遣就業場所ごとの業務につき、3年を超えて派遣労働者(派遣元で無期雇用の者は除く)を受け入れられない」(派遣法40条の2)ということになります。
ただし、派遣先が派遣労働者の受入開始から3年経過時までに、事業所の過半数の労働者を代表する組合、または代表者から意見を聴取した場合は、さらに3年間派遣労働者の受け入れができます。なお、過半数代表者が意見聴取で異議を述べた場合は、派遣先は、過半数代表者に延長の理由を説明しなければなりません。
労働者への雇用安定措置も講じられている
派遣労働者が3年経過後も引き続き就業を希望した時は、派遣元は、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな就業機会(新しい派遣先)の提供、③派遣元においての無期雇用、④その他安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかを講じなければなりません。なお、1年以上就業していた派遣労働者が3年を経過する前に就業を終えるときは、①~④のいずれかの対応をすることが努力義務となります。
もちろん、経過措置も講じられています。この派遣期間の制限は、派遣法の施行日である平成27年9月30日以降に締結される労働者派遣契約から適用されることになります。契約の締結が施行日前の場合は、改正前の法規定が適用されますので、施行日に専門26業務で派遣されていた労働者に関する扱いは変わりません。
(弁護士・山川 隆久)
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