消費が伸び悩む傾向のお菓子市場で、チョコレートの快進撃が続いています。調べてみると、10年前まではお菓子は景気動向の影響をあまり受けない分野といわれてきたようです。その理由は単価が安く手頃に購入できる嗜好(しこう)品で、メーカーが創意工夫した新商品を続々市場に投入することにより、消費者の購買意欲を高め続けてきたからだそうです。
ところが状況は変わってきました。少子高齢化で子どもの消費量が多かったチューインガム、せんべい、ビスケット、洋生菓子などの売り上げが減少するようになりました。しかし、チョコレートだけは売り上げが大幅に伸び続けています。それは、どうしてなのでしょうか? その理由は新たな市場で継続的に支持されるようになったからです。
振り返ればチョコレートも一昔前は「虫歯になるから食べ過ぎないように」と諭される子どものための「おやつ」でした。その市場が少子化で減少することを見越して、健康食品として大人に愛されるための仕掛けを10年以上前から行っていたのです。
大人に対して、カカオポリフェノールで血圧低下や動脈硬化予防、肌の美容、アレルギーの改善が期待できることから建康効果を得るためにチョコレートを食べる習慣の提案をPR。大人に食べてほしい高カカオ商品のリリースを続けてきました。ただ、当初は売れずに市場から消えた商品が多数にあったようです。それでも諦めず、業界のライバル企業が連携を取り合い、仕掛けを続けました。
そして、大きくブレイクする商品が登場しました。それが乳酸菌ショコラです。高カカオに加えて、乳酸菌を包んで女性の美容に効果があるとの評価で発売から半年で20億以上を売り上げるヒットとなりました。現在ではスーパーやコンビニ棚の目立つ場所に大人向けの健康食品として個性豊かなチョコレート商品がいくつも並ぶようになりました。
これに加えて、カカオ豆から最終的な製造までを一貫して手掛ける「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」で高級なチョコレートが大人向けで登場して人気を博するようになりました。さらに高級チョコレートの製造に関わるパティシエも注目度が高まり、女性誌やグルメ誌で取り上げられる機会が増えました。大人が食べるチョコレート市場の成長は当分続きそうです。
ただ、成果が短時間で出たわけではありません。失敗しても諦めない。そして、会社単位の利益だけに固執せず、業界の繁栄を考えて仕掛けを行ったからこそ快進撃につながったのです。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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