事例2 多彩な観光資源を活用して新たな滞在型観光のまちへ
室蘭商工会議所
港を囲むように製鉄所などが立ち並ぶ「鉄のまち」として発展してきた室蘭市。そのため観光地としての認知度は高いとはいえないが、独特の地形が生み出す景観やご当地グルメなどの地域資源を多く擁している。連携事業を通じて今、それらを積極的に発信し、新たな滞在型観光地への脱皮を模索している。
お互いが持つ観光資源を連携でつなぐ
室蘭市は、製鉄所をはじめ多くの工場が集積する重工業地域である。同時に物流拠点港としても発展し、昭和40年代半ばには人口18万人超を数えた。しかし以降は人口減少が続き、現在約8万6000人と半減している。
かつてのまちのにぎわいを取り戻すべく、近年力を入れているのが観光だ。同市には、カップルで行きたい名所第1位に選ばれたこともある地球岬をはじめ、海のパノラマが一望できるスポットが市内各所にある。また、積雪寒冷地初の吊り橋である白鳥大橋、その橋と工場群が織りなす夜景など、昼も夜も楽しめる観光資源が多数あるのだ。
「以前から独自に観光PRを展開していましたが、名所を見るだけでは通過型観光地で終わってしまいます。隣には全国ブランドの温泉地や、豊富な食材の生産地があるのだから、お互いの強みを持ち寄った観光プランを提案すれば、この地域により長い時間滞在し、宿泊してもらうことも可能だと思いました」と室蘭商工会議所企画業務グループ副グループ長の東淳一さんは連携のいきさつを振り返る。
同市の強みは、景観、グルメ、体験がまんべんなく網羅されていることだ。例えば、景色を楽しみたい人には、地球岬展望台や室蘭夜景ナイトクルーズなどがある。グルメでは、地元に愛されてきた室蘭カレーラーメンや室蘭やきとりがある。特に室蘭やきとりは、平成19年開催の第1回「全国やきとりんピック」で優勝した一品で、何と材料には豚肉とタマネギが使われている。それを洋がらしで食べるのが定番という、ここでしか味わえない味覚だ。さらにものづくりに興味がある人は、「ボルタ」と呼ばれるネジやナットを組み合わせた人形の製作体験もできる。
宮古-室蘭フェリー航路の開設で観光客増を担う
「室蘭が持つ魅力の発信が奏功したのか、長年横ばいだった観光入込客数がここ3年増加傾向に転じています。インバウンドの数もずっと年間1000人程度だったのが、26年から急増して現在1万8000人弱を数えるまでになっています。その理由の一つに、登別温泉に来た個人旅行客が立ち寄ったり、リーズナブルな室蘭のビジネスホテルに宿泊したりするケースが増えていることが挙げられ、これも連携効果ではと感じています」と商工会議所企画業務グループの山田正樹さんは分析する。
さらに追い風となりそうなのが、来年6月に予定されている宮古-室蘭のフェリー航路開設だ。同市にとっては10年ぶりのフェリー航路復活であり、新たな観光・物流ネットワークとして、地元では大いに期待を寄せている。それを見越した新たな観光誘致の取り組みも開始している。
「フェリーの就航が観光客増のチャンスとなるか、単なる道内各観光地への経由地となるかは、いかに地域の魅力を向上できるかにかかっているといえます。そのためにも市内の観光拠点の整備を進めるとともに、さらに商工会議所の連携による観光開発に力を入れていきたいですね」と東さんは展望を語った。
※月刊石垣2017年10月号に掲載された記事です。
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