コラム石垣 2016年1月21日号 神田玲子

今年の株式市場は、中国経済の製造業の弱さを示す指標が公表されたことに嫌気し、株価安から始まった。

▼中国の景気減速に関心が集まっているのは、中国が中所得国から先進国への仲間入りができるかどうかの分岐点に立っているからだ。中国政府は、農村から都市部への人口移動が一段落したため、労働力の「量」に頼った成長から、生産性向上による「質」の成長への転換を目指している。技術開発を促し、質の高い成長を実現するには、多くの識者が指摘しているように、知的財産権を法律で明記し、開発者の利益を保護することが重要だ。

▼他方、中国のいくつかの産業では、零細な部品企業が共通の「技術プラットフォーム」、すなわち開発のプロセスを半ばオープンにしながら研究開発費や一部のプロセスを共有する仕組みをつくり上げているといわれている(丸川知雄・東京大学教授)。この仕組みは、模造品製造による薄利多売の温床になっているともいえるが、研究の過程で情報をオープンにすることで費用節約や期間の短縮といった長所を享受することが可能になった。

▼昨今、大学などの基礎研究の分野では、研究成果や根拠となるデータの公開を義務付け、一般の人が自由に使えるようにすることで科学の発展に貢献しようという動きがある。しかし、知財保護が確立している日本のような国では、かえって積極的に取り組む気運に欠けるという。

▼研究者の集合知を形成するために、オープンな形で共同研究を促すための本格的な基盤づくりの議論が、日本で始まってもよい。多くの情報を研究者の間で共有化し、業界や国の境を越えて共同研究を進めていくことのできる環境を整備することが必要だ。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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