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コラム石垣 2016年2月1日号 宇津井輝史

産業革命は偶然には起きない。五体の限界を科学技術が代替できるレベルに達したときに実現する。速く移動したい願いが内燃機関をつくり、空を飛びたい願望が飛行機に結実した。電信技術が遠く離れた場所にいる人との会話を可能にし、目では見えない場所で起きたことを瞬時に知ることができるようになった。だが実用化が人の生活を飛躍的に便利にした裏で、技術は何かを犠牲にしてきた。

▼自動車の場合、それは排ガスによる環境負荷であり、事故による人命へのダメージだった。いま前者は燃料電池や電気の活用で克服されつつある一方、後者を克服するために自動運転車への期待が急速に高まっている。まだ公道実験段階とはいえ、技術の進化・融合がすすみ、実用化の道筋が見えてきた。東京五輪の2020年が自動車メーカーの目標という。政府も成長戦略の柱に位置付ける。

▼いつの日かすべての操作を完全自動化する「レベル4」に向けて、加速、ハンドル、ブレーキの3つの運転操作のうち複数を自動化する「レベル2」の段階に入った。搭載したカメラやセンサーが障害物を認識し、曲がり角の先に待ち受ける危険をGPSが知らせる。何より機械は居眠りをしない。

▼右折時のアイコンタクトなど総合力では人が勝るのに、事故もまた人の不注意で起きる。世論調査では、誤作動への不信など否定的見解も少なくないが、この技術はそもそもユーザーの希望でなく、事故を無くしたいというメーカーの強い決意に発する。実用化へは、むろん道路インフラや事故時の法整備が欠かせない。夢へのハードルは高い。それよりも、高速道路の逆走や、アクセルとブレーキの踏み間違え事故を防ぐことが先決かもしれない。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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