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コラム石垣 2016年2月11日号 丁野朗

いま観光が脚光を浴びている。そのせいか、観光まちづくりやビジョンづくりで各地をお訪ねする機会が大幅に増えた。

▼地域で必ず申し上げるのは、俯瞰(ふかん)する目、いわゆる鳥の目を持つことの大切さである。地元の人々は日々地域を見慣れているが、意外と俯瞰する目を持っていないことが多い。いわゆるアリの目で地域を見ているからである。鳥の目は来訪客・観光客の目である。私も含めて、初めて訪れる地域では、小高い丘や展望台など高いところに登りたがる。そして、その土地の歴史も深堀りしたい。

▼そんな鳥の目で地域を俯瞰した一人に、大正から昭和にかけて活躍した鳥瞰図絵師・吉田初三郎がいる。初三郎は生涯3千点以上の鳥瞰図を作成し、「大正広重」と呼ばれた。

▼「初三郎式絵図」と呼ばれる独自の作風には、見えないはずの富士山やハワイなどが描かれるなど大胆なデフォルメと遊び心がある。その大胆な構図とは裏腹に、中心には地域の暮らしの場や路地が細かく描かれている。迷い込んでみたくなるような路地には不思議な魅力がある。遠来の訪問客を空からの大きな構図で惹き付け、そして路地に誘う。そんな意図が込められているように思えてならない。

▼一枚の鳥瞰図は、それ自体が一つの物語である。大胆な絵図面からは、その土地が持つ固有の地政学的優位性が瞬時に分かる。その地形に沿った植生や生態が描かれ、その下に独特の都市の構造や産業・文化・暮らしぶりという社会が見える。

▼地域の人々は、日々の忙しさにかまけて自らの地域を見失っている。観光まちづくりとは、こうした俯瞰する目で改めて地域をダイナミックに捉えなおす行為ではないか。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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