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コラム石垣 2015年3月1日号 中村恒夫

「消費税率の引き上げでどうなることかと心配しましたが、むしろ売上は伸びました」──。西日本のある県でサービス業を展開する中堅企業の取締役は笑顔で話した。その背景には一線のスタッフたちの創意工夫があったという。

▼いくつかの営業所が着目したのが高齢者だけの家庭だ。長年の顧客に対し、自社の取扱商品とは別に、切れた照明の入れ替えやストーブへの給油、さらに簡単な買い物などを少額で請け負うサービスを開始。会社全体のファンとして囲い込むことによって、税率引き上げに伴う実質的な売上減少を防いだ。それと同時に、顧客からの口コミを通じて新たな顧客を掘り起こした。この中には定年退職した団塊世代が少なからず含まれ、高額な他社商品からの切り替え需要があることも再確認できた。

▼地域の周年イベントにも着目した。少ない予算でどんな新サービスを展開できるか、役職にも就いていない若手スタッフからアイデアを募ったところ、予想外の成果物が完成し、営業収入の拡大につながった。小規模営業店の成功事例を本社が積極的に取り上げた結果、県外でも新たな業績を積み増すことができた。

▼一連の成功事例についてこの取締役は「地域とともに発展するという意識が重要だった」と語る。「地域創生」を意識しなくても、地元企業として生き残るには当然の考えだというのである。

▼少子高齢化の進行に伴い、国内、特に地方の消費が縮小傾向にあるのは避けがたいことだ。しかし、競合企業が撤退し、自社だけが残れば、結果的に勝者になり得る。いたずらに地域の衰退を嘆くのではなく、活性化に貢献することによって、経営基盤の強化を図る道もあるのではないだろうか。

(時事通信社経理局長・中村恒夫)

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