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コラム石垣 2015年3月11日号 中山文麿

『21世紀の資本』という本が世界的に評判になっている。この本は2006年に創立されたパリ経済学校のトマ・ピケティ教授が出版したものだ。

▼同教授は、主要国の過去200年の税務データを分析して資本の収益率rが4~5%で経済成長率gの1~2%を上回っている(r>g)ことを示した。そして、この傾向が今後も継続するとしている。

▼従来、1971年ノーベル賞を受賞したクズネッツ教授による1913年~50年の米国経済の研究によって、経済成長率の方が上回っていると考えられていた。しかし、ピケティ教授は、これは大恐慌と二度の世界大戦によって資本が大きく毀損(きそん)したことによって生じた特殊なケースだとしている。

▼また、ピケティ教授は主要国の所得階層別、例えば、2010年のアメリカの所得上位10%の層は全体の70%を占めていることや、上位1%の人が16%を得ていることを示した。

▼このような大きな所得格差は、11年にウォール街で発生した金融業界経営者の強欲な報酬に対するデモ隊の「われわれは99%だ」という理論的支えとなった。

▼彼は、ある程度の格差はイノベーションのためにも必要だとしている。ただ、資本収益はいわば不労所得、経済成長は労働所得を表しており、いき過ぎた格差は民主主義を破壊するものだとしている。

▼また、レーガン政権時に唱えられたトリクルダウン説は市場任せでは起こり得ないことや、国境を越えて資本に課税するグローバル資本課税のようなものを導入すべきだともしている。

▼わが国においても、格差是正に適切に対処するとともに、イノベーションが起こる環境を整えながら着実な経済成長を目指したいものである。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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