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テーマ別企業事例 クラウドファンディングは地域活性化の奥の手になるか?

事例2 信用金庫が〝購入型〟を支援した二つの理由

青梅信用金庫(東京都青梅市)

東京都西多摩地域と埼玉県南西部を営業基盤とする青梅信用金庫(以下、あおしん)が、地域のクラウドファンディング「FAAVO東京西多摩」と提携して地域活性化を支援している。事業資金の融資が本業の信用金庫がなぜ、クラウドファンディングを始めたのだろうか。

青梅信用金庫は、青梅マラソン大会の運営協力、美しい多摩川フォーラムの応援活動などさまざまな地域貢献活動を行っている

事業化前の資金調達手段

創業93年を迎えたあおしんは顧客に身近な「のめっこい信用金庫」である。「のめっこい」とは西多摩地域や埼玉南西部地域の一部で使われている言葉で「なめらかな」とか「親しみがある」という意味を持つ。平成27年度にスタートした3カ年の中期経営計画では、今まで以上に地域の顧客との接点を持ち、信用金庫の原点である「face to face」を実践。「のめっこい信用金庫」として地域の中で存在感を高め、地域金融機関としての課題解決型金融を提供することを目指している。

政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」により地域金融機関は地域に積極的に関与することを求められているが、あおしんではそれ以前からさまざまな形で地域に関わり、活性化に力を尽くしてきた。平成19年7月、官民により設立された地域運動「美しい多摩川フォーラム」では事務局を務め、環境・経済・教育文化の3つの観点から持続可能な地域社会の実現に努めている。しかし国全体の問題でもある少子化・高齢化の影響は深刻だ。理事長の平岡治房さんは地域の現状をこう説明する。

「当金庫の営業地域も経営者の高齢化などにより事業所が減少傾向にあります。後継者を確保するための支援を行っていますが、それだけでは問題の根本的な解決にはなりません。新たな事業を立ち上げ、発展させていくための支援が地域の活性化には必要です。でも、たとえ事業の起案者に思いがあっても地域全体として支援する場がないとなかなか実現できないという課題がありました」

起案者にとって最も必要な支援は資金だ。しかし起業への資金融資は金融機関にとって与信判断が難しいことは言うまでもない。そこで、総合企画部経営企画課係長の本橋大輔さんはクラウドファンディングの可能性に着目した。

「新規事業、NPOなど慈善事業の商品や企画を実現するための資金を調達する仕組みとして適しています。クラウドファンディングによって既存の金融機関のフレームワークを越えた課題解決が図れるはずと考えました」

事業起案者だけでなくあおしんにもメリットあり

27年4月、地元企業との共同運営により全国で購入型クラウドファンディングを展開するサーチフィールドが青梅市の奥住運輸(代表取締役:奥住尚弘さん)と提携して地域特化型の「FAAVO東京西多摩」を開始した。西多摩地域の発展と活性化という思いはあおしんと同じだ。そこで、あおしんは、本橋さんが青梅青年会議所で一緒に活動している奥住さんと話を進めていき、8月19日に業務提携に関する契約を結んだ。

しかしクラウドファンディングの形態が「購入型」でなかったとしたら結論は違うものになっていたかもしれないと平岡理事長は説明する。

「当金庫のWebページで紹介する限りは私たちにも責任があります。支援したお客さまが損失を被る可能性がある投資型を扱うことは難しかったのです」

あおしんは、プロジェクトにおいて事業化を検討する場合には、創業に至るまでの事業計画作成や資金調達の相談などに応じている。さらに「地域貢献」のため、起案者が運営側に支払う達成金額の20%の手数料のうち、あおしんの取り分3%も免除している。

もちろん、あおしん側のメリットも大きい。「目標金額の達成度合は、プロジェクトに対しての賛同を意味するものであり、当金庫は事業性評価のノウハウを蓄積できる」(平岡理事長)のだという。

夢を実現する手段としても利用できるはず

「青梅信用金庫 応援プロジェクト第1弾」となったのは「衰退しつつある東京の木工業界を盛り上げたい」という家具職人の吉野知喜さんが起案者となって始まったプロジェクト『これからも東京の森を守り、育てるために、手作りの家具で人と森をつなげたい』である。資金を集める目的は「思いがこもった東京の木材とその材からつくる家具の魅力を届けたい」。資金の用途は「東京の森の木で家具をつくり、地域の林業の需要を生み出す」ことだ。

購入できる商品は3000円の支援でヒノキ材のコースター3枚セット、1万円ではフラワースタンドや靴べらなどで最高25万円までの商品の制作が予定されている。あおしんでもWebページで告知するとともに本店や支店で展示会を開くなどPR支援もしている。

本橋さんは、このプロジェクトの他にも「地元のNPOなどからも声を掛けていただいています。事業化を目指さなくても、市民の夢を実現する手段としても利用できるのではないでしょうか」と説明してくれた。

プロジェクトが育ち、事業化が可能になれば、あおしんとしても支援していくという。地域に密着した信用金庫の新たな試みに注目していきたい。

会社データ

社名:青梅信用金庫

住所:東京都青梅市勝沼3丁目65番地

電話:0428-24-1111

代表者:平岡 治房 理事長

従業員:656人(27年3月現在)

※月刊石垣2015年11月号に掲載された記事です。

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