一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)はこのほど、人口減少下での経済の好循環と企業の持続的成長の実現を目指す「経営労働政策委員会報告」を公表した。報告書では、多様な人材の活躍と働き方改革に向けた方策や雇用・労働における政策課題を提示。「年収ベースでの賃上げ」など今年の春闘における経営者側の基本姿勢も示した。
経団連は、今年の春闘における基本スタンスについて、「賃金は、さまざまな考慮要素を踏まえ、適切な総額人件費管理の下、自社の支払い能力に基づいて決定することが原則」との考えを強調。収益が拡大した企業では、設備投資、研究開発投資、雇用拡大などと合わせ、「2015年を上回る『年収ベースでの賃金引き上げ』について、前向きで踏み込んだ検討が望まれる」との考えを示した。
賃金引き上げの方法については、月例賃金の一律的な水準引き上げ(全体的ベースアップ)に限らず、多様な選択肢の中から、各社の経営環境や業績などの状況を踏まえた検討が必要との考えを提示。労使で継続的に生産性向上に取り組むことなども求めている。
また、30年に労働力人口が現在より約800万人減少する問題への対応として、ダイバーシティ経営、働き方・休み方改革、健康経営、仕事と介護の両立支援などの重要性を指摘。企業の成長に必要な労働力の「量」と「質」の維持・確保と働きやすい職場環境の整備について、具体的な取り組みや今後の方向性などを示した。
雇用・労働政策に関しては、「労働時間制度」「労働者派遣法」「育児・介護休業法」「非正規労働者問題」「採用選考活動の在り方」「最低賃金」などの課題を強調。最低賃金については、影響を受けやすい中小零細企業の生産性向上に資する効果的な施策が不可欠との考えを示した。
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