8月4日からロンドンで行われる世界陸上競技選手権(世界陸上)。今回の最大の注目はやはり男子100mだろう。誰が公式記録で日本人初の9秒台を出すか。その注目を一身に集めているのがサニブラウン・ハキーム選手(東京陸協)だ。
6月に行われた日本選手権。男子100m決勝には、日本を代表する高速ランナーが集結した。サニブラウンに加えて、2年前にアメリカで9秒87(追い風参考)を出した桐生祥秀選手(東洋大)、今季国内で9秒94(追い風参考)の快走を見せた多田修平選手(関西学院大)、去年の日本選手権覇者ケンブリッジ飛鳥選手(ナイキ)、リオデジャネイロ五輪のリレー(銀メダル)で第一走者を任された山縣亮太選手(セイコーホールディングス)の面々。結果は周知の通りサニブラウン選手が他の選手を置き去りにして優勝した。決勝は雨の中のレースで決してコンディションは良くなかったが、それでも10秒05の好記録。予選、準決勝も10秒06をそろえて安定した走力を披露した。
福岡県出身、18歳のサニブラウン選手。父親はガーナ人の元サッカー選手、母親は日本人の元陸上短距離選手で申し分のないスポーツ一家で育った。今春、東京の城西大学附属城西高校を卒業してからはオランダを拠点に練習を続けてきた。身長187㎝、体重72㎏の恵まれた体格。久しぶりに日本のトラックに現れた彼は、世界を意識する戦士に変貌を遂げていた。期待がかかる9秒台は、もはや時間の問題だと捉えている。「気にして出るものじゃない。でも一人出せば、どんどん9秒台を出す(選手が現れる)と思う。自分が第一歩になれたらうれしい」
そして「そのレベルの(9秒台の記録を持つ)選手と走っていれば、そのうち必ず出ると思います」。
それどころか今は「世界記録の樹立」を目標に掲げている。彼の世界ユース選手権(2015年)の200m優勝記録は同大会(03年)で勝ったウサイン・ボルトよりも速いのだから荒唐無稽な話ではない。いくら才能に溢(あふ)れていても、それを磨く意識がなければ輝けない。9月からはアメリカの大学でさらに走りを追求する。決して現状に満足しているわけではない。「9秒台で走ればすごく気持ちいいんだろうと思います。スタートが良ければ9秒台にいくかな」
さて、結果やいかに。
(7月18日執筆)
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