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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 「勝つ自信は5パーセント」 数字に込められた張本の決意

卓球界の新星・張本智和選手 写真提供:産経新聞

日本の卓球界は若手の台頭が止まらない。女子の伊藤美誠(リオ五輪で銅メダル)、平野美宇(世界選手権で銅メダル)という10代(高校生)の選手が世界を舞台に活躍すれば、男子からはさらに若い13歳(中学生)の逸材が飛び出してきた。JOCエリートアカデミーに所属する張本智和選手だ。

もうすでにその活躍は大きく報じられ、東京五輪のメダル候補に名乗りを上げている。ハイライトは先の世界選手権だ。男子シングルス2回戦で、リオ五輪銅メダリストの水谷隼をゲームカウント4-1であっさりと破ってしまったからだ。その後も年長の選手に次々と勝って、ベスト8まで勝ち進んだ。

両親がコーチを務める仙台ジュニアクラブで2歳から卓球を始める。父も母も中国の卓球選手。母親の凌さんは95年世界選手権に中国代表として出場しているほどの卓球エリート一家だ。小学生の時には、1年生から6年生まで6年連続で世代別のチャンピオンになっている。

2016年に出場した世界ジュニア選手権(18歳以下)も史上最年少で優勝している。同年代ではもはや敵なしの存在だが、いよいよその脅威がジュニアを超えてシニアにまで及ぶようになってきた。

負けた水谷も「初めての対戦だったが、想像以上に一つ一つの技術が高かった。完敗です」とその実力を認めた。

張本の強さは驚異的な反応力と攻撃的なゲーム運びにある。水谷との試合でも、難しいチキータレシーブ(相手が読みにくい複雑な回転をかける)を連発して水谷のボールをネットにかけた。得点を挙げると「チョレイ」と大きな声を出して自らを勢いに乗せていく。ちなみに「チョレイ」に特別な意味はない。気が付いたら口にしていたそうだ。

水谷との試合を前に彼の言っていたことが印象に残った。勝つ自信を聞かれ、「5パーセント」と答えていたからだ。私はこの「5パーセント」という評価が絶妙だと思った。相手に敬意を払いつつも簡単に負けるつもりはない。むしろ「5パーセント」だからこそ思い切って仕掛けていく。チャンスはわずかでも必ずある。そんな決意が込められた数字だ。どんなことでも難しいことには「5パーセント」の気持ちで挑んでいく。大切なことはそれが決して勝負を諦めた数字ではない……ということだ。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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