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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 12年ぶりの五輪復活で金メダル 再び 上野由岐子

2008年北京五輪ソフトボール決勝(日本―アメリカ)で金メダルを決め喜ぶ上野由岐子投手

2020年東京五輪を心待ちにしているアスリートは数多くいるが、その中でもこの人ほど熱い思いで、その時を待っている選手はいないだろう。ソフトボール日本代表の上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)だ。

ソフトボールと言えば、誰もがあの瞬間を思い出すことだろう。悲願の金メダルを獲得した、2008年北京五輪での活躍だ。エース上野は、2日間で3試合、準決勝戦、3位決定戦、決勝戦を一人で投げ抜いて(413球)、日本に初めての金メダルをもたらした。指のまめがつぶれた状態での力投だった。日本は、1996年アトランタで4位、2000年シドニーで銀、2004年アテネで銅、そして宿敵アメリカを倒し、ついにつかんだ北京での金メダルだった。

しかし、そんな上野たちを待っていたのは厳しい現実だった。北京大会を最後にソフトボールは五輪から姿を消した。2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロでも採用されることはなく、東京で12年ぶりに復活することになったのだ。

北京五輪の金メダルメンバーで日本代表に残っているのは、〝女イチロー〟の異名を持つ山田恵里外野手(日立)と上野の二人だけだ。山田のバットと華麗な守備もいまだに健在だが、日本の勝敗の行方は今回も上野のピッチングにかかっている。

上野の真骨頂は、何といってもそのスピードボールだ。身長174㎝の恵まれた体から繰り出されるストレートは、世界最速の時速121㎞を記録している。

この球を打つために打者に与えられた時間は、約0・39秒しかない。時速150㎞のプロ野球でも約0・44秒ある。プロ野球投手の球を打つ以上に上野の球を打つのは難しいのだ。その上、シュートや浮き上がるライズボール、チェンジアップも多彩に操る。これまで完全試合も何度となく達成している、世界最高の投手だ。

4月の試合中に、打球が顎に当たり骨折。代表から離脱している上野だが、必ず帰ってくることだろう。山田と共に12年間待った五輪の舞台。その思いは、ソフトボールへの情熱と普及振興への責任感以外の何ものでもない。上野なら、ソフトボールの素晴らしさを世界に訴え、そして、日本中に感動をもたらすことだろう。

奇しくも、開会式(7月24日)に先立って五輪初戦が行われる22日は、上野の38歳の誕生日だ。

写真提供:産経新聞

あおしま・けんた スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている

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