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スポーツライター 青島健太の注目アスリート レスリング吉田沙保里が引退 多様になってきた選手の引き際

会見後、母・幸代さん(左)と笑顔で抱き合う女子レスリングの吉田沙保里=都内ホテル

スポーツ選手の引退を、女性歌手に例えるのも無謀かもしれないが、実力と人気で時代を駆け抜けるという生き方において共通点は多い。そこには四つのタイプがある。

まずは山口百恵さん型。全盛時に潔く引退する。スポーツ界で言えばサッカーの中田英寿さんやゴルフの宮里藍さんがこのタイプか。横綱の引退も昔からこの形だ。

続いては安室奈美恵さん型。デビューから長い間走り続けて完全燃焼で引退する。直近の引退で言えば、プロ野球広島で活躍した新井貴浩選手や中日の岩瀬仁紀選手、サッカー元日本代表の川口能活選手や楢崎正剛選手、小笠原満選手のケースだ。

長いキャリアを重ねながらも年齢に応じて輝き続けているのは、松田聖子さん型だ。40代で活躍を続けるスキージャンプの葛西紀明選手(土屋チーム)やバスケットボールBリーグの折茂武彦選手(レバンガ北海道)に、サッカー界には50代でも壮健なカズ(三浦知良選手)がいる。

一時のブランクを経て再び第一線に戻ってきた宇多田ヒカルさん型の選手には、プロテニスの伊達公子さんやフィギュアスケートの高橋大輔選手などがいる。

先月引退した吉田沙保里選手は、アテネ五輪から3大会連続で金メダルを獲得。リオデジャネイロは銀メダルに終わったが、日本スポーツ界の顔として、世界の舞台で戦ってきた。その彼女も東京五輪を前についに引退を決意した。3歳から始めたレスリングを36歳で引退。見事な完全燃焼といえるだろう。吉田さんが時代を代表する選手であり続けた理由には、メディアとも良好な関係を築いてきたことが挙げられる。マット以外では、天真らんまんに振る舞い多くのファンを獲得した。彼女の影響もあって今や多くの女子選手が世界で活躍している。水泳、卓球、サッカー、ソフトボール、バドミントン、柔道、空手、ボルダリング……。

こうしてみるとスポーツ選手の引退も時代の流れの中で多様になっている。背景には男女を問わず、さまざまなスポーツで選手活動に専念できる環境が整ってきたことが挙げられる。どんな競技であれ「プロ的」な活動が可能になってきたのだ。実力と人気さえあれば、これまでの常識に縛られることなく、好きなだけ世界と戦うことができる。その象徴ともいえる選手が、女子レスリングの吉田沙保里さんだろう。

写真提供:産経新聞

あおしま・けんた スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている

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