すごいことが秘(ひそ)かに進行している。といっても、もちろんうれしいことだが。バスケットボールの本場、米国のプロリーグNBAで日本人選手が着々と活躍を続けているのだ。メンフィス・グリズリーズの渡邊雄太選手である。
現地米国では、そのプレーぶりがもうすでに注目を集めているが、日本で大騒ぎになるのはこれからだろう。なぜすごいのか?は、バスケットボールファンなら百も承知だ。これまで日本人選手でNBAでプレーしたのは田臥(たぶせ)勇太選手(Bリーグ・栃木ブレックス)一人しかいない。田臥は身長170㎝余りの日本人らしい体格のポイントガードだが、渡邊は身長2m6㎝と完全にアメリカサイズのプレーヤーだ。過去には日本国内にも長身の選手はたくさんいたが、NBAの選手たちと比べるとスピードやシュート力という点で見劣りすることが多かった。しかし、渡邊はNBAの選手たちの中にあっても全ての面で堂々と渡り合っている。
現地2月7日に敵地オクラホマ州オクラホマシティーで行われたサンダー戦では、自己最長26分46秒の出場時間で10得点をあげた。これはかつて田臥が記録した7得点を抜いて、一試合当たりの日本人最多得点になったが、渡邊が目指すのはもっと高い次元だ。レギュラーとして毎試合二ケタ得点を記録しチームをけん引する選手だ。現在の彼は「ツーウエイ契約」の選手でグリズリーズに呼ばれたときだけトップチームでプレーできる控え的な立場なのだ。だから出番が来たときには昇格するために必死にアピールする必要があるのだ。
神奈川県横浜市生まれで香川県育ちの24歳。元選手の両親の下、幼少期からバスケットボールの腕をめきめきと上げた。そのボールタッチの柔らかさと抜群のシュート力は親譲りの才能だろう。尽誠学園高校時代から日本代表候補にも選ばれ、大学から米国に渡った。文武両道の名門、ジョージ・ワシントン大学で活躍し、そのままNBAを目指して米国に残った。
90年代、マジック・ジョンソンやマイケル・ジョーダンが華麗なプレーを見せる中、日本人の登場は夢のまた夢のように思われた。そこについに現れたバスケットヒーロー。ゴンザガ大では八村塁(はちむらるい)選手も活躍を続け、NBA入りを目指している。バスケットボールの新時代が彼らによって築かれることになるだろう。
写真提供:USA TODAY・ロイター=共同
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