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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 世界記録での金メダル獲得に期待 渡辺一平

【競泳日本選手権6日目】<決勝男子200m平泳ぎ>優勝した渡辺一平の泳ぎ=東京辰巳国際水泳場

東京辰巳国際水泳場で4月に行われた競泳日本選手権。韓国で開催される世界選手権(7月)の代表選考を兼ねた大会だけに、有力選手の泳ぎに注目が集まった。バタフライと個人メドレーの瀬戸大也選手(ANA)や背泳ぎの入江陵介選手(イトマン東進)らが順当に代表権をつかんだが、タイム的にはまだまだ本調子ではなかった。そんな中で圧倒的な存在感を見せたのが、平泳ぎの渡辺一平選手(トヨタ自動車)だった。

渡辺は、この大会で200mの世界記録(1分6秒67)更新を狙っていた。2017年1月の東京都選手権で渡辺自身が打ち立てた記録だ。

男子200m決勝。渡辺は序盤から世界記録を上回る驚異的なペースで突っ込んでいく。150mをターンした時点で0・59秒世界記録より速かった。記録更新か。ところが最後50mで失速してしまう(1分7秒02)。

優勝と代表権は確保したが、残念ながら世界記録の更新はならなかった。「最後は、ここ最近では一番バテた。足がヒヨヒヨだった」とスタミナ切れを悔やんだ。この日の記録でも、16年リオデジャネイロ五輪では金メダルに相当する好タイム。それでも渡辺には、東京五輪で「ぶっちぎりで優勝する」イメージしかない。もちろん、それは世界記録での金メダル獲得だ。

彼のレースを見ていると不思議な感覚に襲われる。誰よりもゆっくり泳いでいながら、それでいて一番速いのだ。今大会ではそのストローク数をさらに減らして世界記録更新を狙った。平泳ぎは、4泳法の中で最も難しい泳ぎ方といわれている。泳ぐ動作そのものに、スピードを失う抵抗を生じるからだ。それだけに、ストロークの少ない泳ぎでありながら好タイムが出るというマジックが叶う。それは、高い技術のなせるワザなのだ。

身長193㎝。そのフィジカルは、この種目の第一人者だった北島康介氏のさらに上を行く、世界スケールのスイマーだ。その北島氏のインタビューに答えて言った。

「平泳ぎは日本のお家芸。リオで悔しい思いをしたので(6位)、東京ではぶっちぎりの世界記録で優勝します」。ライバルは、17年世界選手権覇者・ロシアのチュプコフ選手。それでも世界記録で泳げば敵はいない。

「一平」という平泳ぎの申し子のような名を持つ渡辺が、2020東京五輪で一番輝くことを期待しよう。

写真提供:産経新聞

あおしま・けんた スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている

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