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スポーツライター 青島健太の注目アスリート プロの意地を見せた 男子ゴルフの池田選手

ゴルフ・日本オープン最終日 11H、優勝した池田勇太選手。ドライバーをフルスイング、ミドルホールでワンオンに成功した 写真提供:産経新聞

『月刊石垣』の読者にもゴルフを嗜む方は多いはずだ。「今日はドライバーの調子が悪いので、ティーショットをアイアンで打とう」とコースや状況に応じて安全策を選ぶ日もあるだろう。その選択がはまる時もあれば、かえってトラブルになる時もある。多くの場合、それは技術的な問題だが、精神的な要素も大きく絡んでくる。成否を分ける要因は、その選択が積極的な姿勢から生まれたものなのか、消極的な考え方から生じたものなのかということだ。

男子ゴルフツアー・日本オープン最終日(10月15日、岐阜関CC東C)でそんなことを考えさせられる場面があった。2位に5打差でスタートした池田勇太選手だったが、3番と15番の第1打(ドライバー)でOBを打ってアマチュアの金谷拓実選手(東北福祉大)と大接戦になる。堅実なゴルフを展開する金谷選手は、要所で3Wやアイアンを使って池田選手を追い詰める。

1打差で迎えた最終18番。首位の池田選手は、不安の残るドライバーを敢えて握って果敢に勝負に出る。ドライバーで思い切り打ったボールはフェアウエーへ。お互いにパーをセーブして池田選手が2度目の日本一に輝いた。その池田選手がラウンド後に言った。「俺はプロとして商売をしている。彼はアイアンで刻んだ。その考えがアマチュア。金を払って見に来てくれる観客にドライバーを握って『これがプロ』という姿を見せたかった」

アマチュアの金谷選手が勝てば90年振りの快挙であり、19歳での優勝は最年少記録を更新するところだった。逃した魚は大きかったが、池田選手のコメントはそのプレーぶりを揶揄する話ではない。金谷選手はアマチュアらしく丁寧な戦いを演じただけだ。ただ池田選手にはプロとしての意地があったのだ。彼はこうも言っている。「優勝争いをしていて1打2打のリードだったら刻んでいいかって? 刻んでパーで終わるかもしれないけれど、そんなのを観に来ているギャラリーはいない。プロゴルファーって、男子プロって、こういうもんなんだと(ギャラリーだけでなく)テレビを観ている人にも伝えたかった」

どんな仕事でも攻める時と守る時がある。アイアンで刻む時もあるだろう。しかしいかなる時も忘れてはいけないのは、それを仕事にしているという「誇り」だろう。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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