甲子園球場で行われたプロ野球、マツダオールスターゲーム第2戦(7月19日)。北海道日本ハムファイターズの大谷翔平投手が、1回から日本人投手最速の時速162キロをマークしたことで、すべての話題をさらわれた感があるが、この選手の活躍を忘れてはいけない。
福岡ソフトバンクホークス、柳田悠岐選手(右投げ左打ち25歳)だ。6回、柳田選手のバットが火を吹く。中日ドラゴンズ、山井大介投手の低めの直球を叩いた打球は、弾丸ライナーでバックスクリーン横に飛び込んでいく。本人も「ボールを叩きつぶそうと思って打った」とコメントしているが、まさにボールが悲鳴をあげそうな打球だった。柳田選手は、この一発を含め4安打の大暴れ。1回には先頭打者で出塁した直後に盗塁も決め、文句なしのMVP(賞金300万円)に輝いている。
入団4年目の柳田選手は、和製大砲として将来を嘱望されてきた。身長187センチ。恵まれた体格から放たれた打球は、誰よりも飛んだ。
しかし、去年までの彼はグラウンドで話しかけても、どことなく落ち着かない様子だった。若さや照れもあったのだろうが、まだまだ自分のスタイルに自信が持てなかったのだろう。ところが今シーズンの柳田選手は違う。囲まれた取材陣とも堂々と話し合い、今やチームの顔になっている。
それもそのはず。前半戦を終えて打率はリーグ2位の3割3分7厘、打点もリーグ3位の51打点、本塁打も12本打っている。それでもまだまだ納得していないのか、前半戦最後のカードとなった千葉ロッテマリーンズ戦の練習では、李大浩選手のバットを借りて試し打ちをしていた。「このバット、すごくバランスがいいんですよ。自分のバットがおもちゃみたいです」と、仕事道具(バット)への探求も怠らない。
オールスターゲームの4回には、センターからの好返球で2塁走者のトニ・ブランコ(横浜DeNAベイスターズ)を刺した。「おいしい場面だったので、(本塁へ走ってくれて)ありがたいと思いました」
自信をつけた若者ほど怖い存在はない。そんな柳田選手の成長に秋山幸二監督も目を細める。チームの躍進に若手の活躍は欠かせない。その躍動がチームを活性化する。ホークスの後半戦は、攻・走・守において柳田選手が鍵を握っている。
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