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スポーツライター 青島健太の注目アスリート バレーボールの未来をつくる 新戦術と木村沙織選手

写真提供:産経新聞

女子バレーボールの日本代表が、革命的な戦術に取り組んでいる。その名も「ハイブリッド6」だ。それぞれタイプの異なるものを混成するという意味を持つハイブリッド。「ハイブリッド6」とは、ブロックを主な役割とするMB(ミドルブロッカー)を置かず、セッターとリベロ以外、すべてをアタッカーで構成するという超攻撃的なバレーボールだ。

ロンドン五輪(2012年)で銅メダルを獲得した日本代表。しかし、体格(身長)とパワーで劣るため、このままでは2016年のリオデジャネイロ五輪での金メダル獲得は難しい。そこでアイデアマンの眞鍋政義監督が打ち出した新しい戦術が、コートにいる全員で攻撃を仕掛ける「ハイブリッド6」だった。先の東京で開催されたワールドグランプリ決勝リーグでも銀メダルを獲得し、着々とその成果を出している。

チームの中心は、キャプテンを務める木村沙織選手(東レ)だ。身長185㎝の長身ながら、アタックだけでなくサーブもレシーブも何でもこなすスーパーアスリート。「ハイブリッド6」も木村選手がいるからできる戦術、いや木村沙織をより生かすためのバレーボールとも言えるだろう。

ロンドン五輪の後、木村選手はトルコ(イスタンブール)のプロチームに渡る。世界中のトップ選手が集まるハイレベルなリーグだ。ここで欧州チャンピオンズリーグの優勝も果たし、これを花道に引退も考えたという。そんな木村選手を、眞鍋監督が説き伏せて新キャプテンとして新生日本代表に呼び戻す。

木村選手にとっては、しばらく日本を離れていたことが、きっと良かったのだろう。高校生から日本代表のメンバーとして戦い、3回も五輪を経験した彼女には、休む時間もなかったはずだ。もちろんトルコでもプレーしていたわけだが、周囲から過度に注目されることもなく自由に過ごせた海外での日々は、バレーボールプレイヤー木村沙織に新たなエネルギーを与えたに違いない。

長岡望悠(みゆ)選手や石井優希選手(ともに久光製薬)、大野果奈選手(NEC)といった才能豊かな若手の台頭も木村選手にとっては、よい刺激になっていることだろう。選手それぞれの持ち味をポジションにこだわらず発揮させる新戦術。木村沙織と日本のバレーボールが新しい時代をつくろうとしている。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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