「冷や汁」は、読んで字のごとく冷たい汁をぶっかけた飯で、宮崎を代表する郷土料理。汁といっても、家庭のみそ汁とはレベルの違う薬味がたっぷり入ったごちそう汁だ。パリッとしたキュウリの小口切り、青ジソとミョウガの千切り、刻みネギ、手なりでつぶした豆腐などがどんぶりいっぱいに盛り込まれている。
郷土料理店「杉の子」の冷や汁もこだわり抜いている。天日干ししたカマスに2種類のみそを調合したもの、頭とワタを取ったイリコ、ゴマ、落花生のすり身などをすり鉢ですったものを合わせ、みそ玉にしてオーブンで30~40分焼く。これをあらかじめよく冷やしておいた出汁(だし)で少しずつ適当にのばして、ようやく掛け汁が完成する。ご飯は熱々の麦飯。冷たい汁との取り合わせが絶妙だ。味は想像以上に濃厚で、キュウリのシャリシャリ感がたまらない。
女将の前田省子さんは、「キュウリやシソは体を冷やす野菜だし、豆腐はタンパク源。冷や汁一杯で十分な栄養が取れます。昔の人は冷や汁がバランスのよい食事であることを知っていたのでしょうね」と語る。長くて暑い宮崎の夏を乗り切るための冷や汁は、チリ~ンと鳴る風鈴の下で食べたい名物である。
Data
店名:株式会社 杉の子
住所:宮崎県宮崎市橘通西2-1-4
電話:0985-22-5798
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