現在、政府は、財政健全化計画を含む「骨太方針2018」の策定に向けた議論を進めている。2025年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になるなど高齢化が進展する一方、支え手である現役世代の人口が急減していく中、将来にわたって持続可能な医療保険制度を構築するためには、制度改正など一歩踏み込んだ改革に取り組むことが急務である。
被用者保険関係5団体は、現状、以下のような共通する問題意識を持っており、今後、政府におかれては、これらを踏まえ骨太方針の策定に取り組み、適切な方向性を導き出されることを強く要望する。
○後期高齢者の窓口負担について
高齢者の医療給付費は増大し、それを賄うための拠出金が保険者の財政を圧迫し、保険料率引き上げなどにより現役世代の負担となっている。現役世代に偏った負担を見直し、高齢者にも応分の負担を求めることで、給付と負担の不均衡を是正し、公平性、納得性を高めていくことが重要である。特に、2018年度中に、70~74歳の高齢者の窓口負担が2割となることを踏まえ、75歳以上の後期高齢者の窓口負担についても、低所得者に配慮しつつ早急に原則2割とする方向で見直すべきである。
○拠出金負担の軽減について
過重な拠出金の負担に耐え切れず、解散を検討する健保組合も後を絶たない。現役世代の負担に過度に依存する制度では、持続可能性を確保できない。高齢者の医療給付費に対する負担構造改革を早急に断行すべきであり、安定財源を確保した上での公費負担の拡充など、現行制度の見直しを含め、現役世代の負担を軽減し、保険者の健全な運営に資する措置を講じるべきである。
○社会保障の持続性確保について
「全世代型の社会保障」の推進のためには、2019年10月の消費税率10%引き上げの確実な実施は不可欠である。さらに、2025年以降の新たな「社会保障と税の一体改革」を検討し、歳入・歳出一体での対応策についても、国民の理解を得ながら、検討を始めるべきである。また、財政健全化の観点のみならず、制度の持続性確保のためには社会保障給付の効率化による伸びの抑制が必要であり、被用者保険の保険料への負担転嫁は行うべきではない。
○医療費の適正化について
持続可能な制度を構築していくためにも、医療費の適正化に取り組むことは不可欠である。医療機能の分化・連携による医療の効率化や医療の地域間格差の是正、終末期医療の在り方の見直し(患者の意思の尊重など)、適切な受診行動の促進など医療のありようを見直していくとともに、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」「医療の質の向上」を実現するための薬価制度の抜本改革の推進や後発医薬品のさらなる使用促進、診療報酬の包括化、ICTを活用した医療の適正化・効率化など保険診療や診療報酬の在り方に踏み込んだ見直しに取り組むべきである。
○保険者機能の強化について
健康寿命をより延伸させ、健康な高齢者には社会保障を支える側に加わっていただくことが、制度の持続可能性を高めることにつながる。そのためには、職域・地域にかかわらず、全ての医療保険者には、加入者に対する健康増進などこれまで以上に重要な役割が求められる。個々の保険者が、それぞれの特性を生かして保険者機能を発揮できる制度体系を維持し、保険者機能をより強化していくべきである。(5月25日)
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