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2017年版中小企業・小規模企業白書(概要) M&Aも重要な選択肢 起業・創業、各段階で支援を

図1 規模別労働生産性の推移

政府はこのほど、2017年版中小企業白書・小規模企業白書を閣議決定した。白書では、中小企業のライフサイクルと生産性および雇用環境と人手不足の現状を分析。経営者の高齢化が進む中、後継者不足が課題であると指摘した。また、起業に無関心な層の割合が欧米諸国より高い(開業率が低い)実態も指摘した。特集では、その概要を紹介する。

中小企業白書

第1部 現状分析

第1章 中小企業の現状

①中小企業の経常利益は過去最高水準にあり、景況感も改善傾向。

②中小企業の売上高、生産性は伸び悩んでいる。(図1)

③大企業の経常利益は大きく改善しており、中小企業との格差が拡大している。

④こうした状況の改善のため、下請中小企業と親事業者の適正な取引を普及定着させ、賃上げできる環境の整備を図るための取り組みを推進。

第2章 中小企業のライフサイクルと生産性

(開廃業などによる企業数の変化)

①企業数全体は減少傾向にあり、2009年から2014年にかけて39万者減少。小規模事業者の廃業が特に影響している。

②結果として、小規模企業が減少し、中規模企業が増加。

(開廃業などによる従業者数の変化)

①2009年から2014年にかけて全体の従業者数は横ばいで推移する中で、中規模企業で働く人は増加。特に中規模企業の開業による増加の影響が大きい。

②1社当たり従業者数で見ても、中規模企業で特に増加。

(業種ごとの開廃業率・2015年度)

①開廃業の現状は、業種によって大きく異なる。

(廃業の現状)

①中小企業の経営者年齢は高齢化しており、倒産件数は減少しているが、休廃業・解散企業数は過去最多。

②休廃業・解散企業のうち、経営者が60歳代以上、80歳代以上の企業の割合は過去最高。

(ライフサイクルと生産性の関係)

①ライフサイクルの各要素の動向が、中小企業全体の生産性に及ぼす影響を分析。

②開業企業は生産性を押し上げているが、直近の押し上げ効果は縮小。生産性の高い既存企業がシェアを拡大して全体を押し上げている。一方で、既存企業の生産性の低下や、生産性の高い企業の倒産・廃業が全体の生産性を押し下げている。

③開業企業のうち約5割が全体の生産性を押し上げている。

④直近は押し上げ効果が縮小しており、生産性の高い企業の参入が減少したことが要因。

⑤全体の廃業企業のうち約5割が生産性を押し下げ。廃業による生産性押し下げのうち、M&Aや海外移転などによると思われるものを除いても、全廃業企業の半分が生産性を大きく押し下げている。

⑥こうした企業は、存続企業と比べて、従業員数および売上高は小さいが利益率は高い。他方で後継者決定率が相対的に低く、企業の後継者不足による廃業を減らすことが重要。

第3章 中小企業の雇用環境と人手不足の現状

①中小企業では、人手不足感が強まっており、有効求人倍率も高いが、特に規模の小さな中小企業で従業者数が減少している。背景には、職種や賃金などのギャップがある。

(多様な人材の活用状況)

①規模の小さな企業ほど、女性やシニアといった多様な人材を積極的に活用。

②中核人材として活用または活用を検討する中小企業も多い。

第2部 テーマ別分析

第1章 起業・創業

①わが国は国際的に見て開業率が低く、起業に無関心な人の割合が高いが、起業を目指す人が起業に至る確度は高い。(図2)

②いかに起業への関心を高めていくかが重要。周囲の勧めなどが重要なきっかけとなる。

③起業後5~10年の企業は、高成長、安定成長、持続成長の3タイプに分類される。

④高成長型ではサービス業・製造業が多い。経営者が若く、起業家教育の影響が見られる。(図3)

⑤いずれの成長タイプも、ステージが進むにつれて課題は資金調達から人材確保へと移行。販路開拓は各ステージ共通の課題だが、内容は変化している。

⑥目指すタイプを実現できた者、できなかった者の差を見ると、資金調達の成否が影響。

⑦高成長型企業では、安定・拡大期において、出資のニーズが高く、また、経営補佐人材、内部管理人材や経営企画人材など業務拡大に必要な人材のニーズが高まる。(図4)

⑧安定成長型企業の資金調達ニーズはステージが進むにつれて借り入れから公的補助金、出資に移行。また成長初期以降、経営者の補佐人材などさまざまな人材ニーズが高まる。

第2章 事業の承継

①親族外承継は全体の3分の1を占め、多くの場合、社内人材が後継者。

②事業承継の準備を周囲から勧められた場合は後継者決定割合が高い。後継者の選定には時間がかかるが、未決定企業は総じて経営の引き継ぎに関する対策が進んでいない。

③資産の継承について、親族外承継の場合には課題への対応が遅れており、対策に時間を要する資産の引き継ぎ方法への対策・準備が課題となる。

④経営者は、後継者選定とともに計画的に承継の準備を進め、支援機関や金融機関などは連携し、多様な課題をきめ細かく支援していくことが重要。

⑤後継者がいないが事業を継続したい企業にとっては、事業の譲渡・売却・統合(M&A)は重要な選択肢。一般に、従業員の雇用維持のほか、会社の発展を重視する経営者が多い。

⑥課題は多いが準備・対策は進んでおらず、専門家に相談する割合も低い。こうしたニーズを捉え、多様な課題に対応できる支援体制が必要である。

第3章 新事業展開の促進

①新事業展開は中小企業の成長に寄与。

②目指す新事業展開の戦略別に、マーケティングの取り組み状況によって成否に差がある。

③マーケティングの中でも市場ニーズの把握に強みを持つ企業が新事業展開に成功。営業部門だけでなく、経営企画部門も市場ニーズの把握に取り組む傾向がある。

④また、こうしたマーケティング活動の評価・検証まで実施する企業は従業員の意欲向上や人材育成の効果を享受している。

⑤新事業展開の際の共通課題である人材不足に対応するためには、外部の経営資源の活用が有効。利益にも好影響を与えている。実際に活用した企業はさほど問題を感じていない。

⑥IoTなどの新技術の中小企業での活用度合いは低いが、一定の関心がある。非製造は新技術を活用した「見える化」などで生産性向上につながる可能性もある。

⑦中小企業にとって新しいビジネスチャンスとなるシェアリングエコノミーには比較的高い関心がある。

第4章 人材不足の克服

①成長・拡大を目指す企業は中核・労働ともに人材不足感が強い。

②特に中核人材の不足は、新事業展開の停滞や需要増に対応できないなど、成長・拡大を目指す企業の新事業展開に影響が出ている。

③定着に成功する企業は、職場環境改善、業務負担軽減に注力し採用にも成功している。

④多様な人材を活用できている企業は、時間外労働の削減や人間関係の配慮など中小企業ならではの柔軟性を生かした職場環境改善の取り組みを行っている。

⑤人手不足の中でも多様な人材を活用できている企業は、生産性向上につながる業務の合理化・標準化に取り組んでおり収益力の向上につながっている。

⑥人材不足でも業績を伸ばす企業は省力化、IT導入、アウトソーシングなどに取り組んでいる。

⑦デザイン・マーケティングなど高度な人材が求められる業務でも、アウトソーシングにより成長を目指す企業も増えている。

小規模企業白書

第1部 現状分析

第1章 小規模企業の現状

第2章 中小企業・小規模事業者のライフサイクルと生産性

第3章 中小企業・小規模事業者の雇用環境と人手不足の現状

以上は『中小企業白書』と共通。

第2部 テーマ別分析

第1章 起業・創業

①~④は『中小企業白書』と共通のため省略。

⑤持続成長型企業の8割が小規模企業で、他の成長タイプに比べて、廃業企業などの他者から、顧客、技術などの経営資源を引き継いでいる傾向がある。

⑥創業期には資金調達、安定拡大期には人材、特に後継者の確保に課題がある。

⑦持続型企業が相談する相手は、ステージが進むにつれて身内から金融機関などの接触機会の多い相手へ移行。周囲のサポートを受けることが円滑な事業化につながる。

第2章 事業の承継

①小規模事業者では、親族内承継がほとんど。

②小規模事業者では、事業用資産と個人用資産の分離ができていない可能性があり、親族外承継に抵抗感を感じる企業が一定割合存在。(図5)

③小規模事業者では、廃業を検討する場合も多いが、法人と個人で課題は大きく異なる。

④小規模法人では、廃業の際、自社の事業や資産を他社に譲りたいとする者もいるが、相談相手は限定的であり、こうしたニーズをとらえた効果的なマッチングが必要。(図6)

第3章 売上拡大に向けた取り組み

①小規模事業者の業績は伸び悩み、新規販路開拓や人材の確保が課題となっている。

②売上拡大に向けた取り組み(新市場開拓、新商品開発、多角化、事業転換など)の実施に当たり、PR活動に併せてニーズの把握や自社の強みの把握に取り組む事業者は高い効果を感じているが、その際、人材不足が課題。

③小規模事業者では人手不足感が強まっているが、職場環境を整備し、女性やシニアなど多様な人材を活用することや、外部委託を活用することにより、効果を得られている。

※図1~6は2017年版『中小企業白書・小規模企業白書』より