「働き方改革実行計画」に対する日本・東京商工会議所の考え方(概要)

1.はじめに

①人手不足はかつてないほど深刻化。中小企業の最大の経営課題は「人手不足」。

②今後の経済規模の縮小を防ぐためには、「多様な人材の活躍推進」と「生産性向上」の両方に同時に取り組むほかない。働き方改革は、この隘路(あいろ)を切り開くための有力なきっかけとなり得る。

③今般、取りまとめられた「働き方改革実行計画」は、商工会議所がこれまで主張してきた内容が多数盛り込まれており、基本的に賛同する。

2.働き方改革の意義

①法案や制度設計を検討するに当たっては、現場の実態を踏まえた丁寧な議論の下で各界と合意形成がなされるようなバランスの取れた議論を進めることが必要。

②多様な意見を反映させる必要があることから、労働政策審議会などの場において、年齢や雇用形態、所属業界などさまざまな属性の方々からヒアリングする機会を設けるなど、柔軟な意見収集体制を整備することが重要。

③一連の働き方改革実行による企業実務への影響の大きさを鑑み、法律の施行に当たっては、国による周知・啓発や企業の体制整備のための十分な準備期間を確保することが必要。

④改革を成功させるには、企業の生産性向上は欠かせないが、実行計画全体を通じてその視点は不足。今後は規制強化だけでなく、規制緩和や現場の自主的な取り組みを促すことで生産性を向上させ、日本の成長率を引き上げていくという前向きな議論がなされるよう期待。

3.実行計画の継続的な取り組みとフォローアップ

①計画を行動に移すためには、詳細設計が何より重要。

②労働政策審議会などの場での議論に当たっては、取引条件も含め、大企業の働き方改革が中小企業にしわ寄せされることなどがないよう、中小企業の実態を十分踏まえ検討すべき。

4.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

①ガイドラインにおいて、「何が不合理な待遇差なのか具体的に定める」ことは当然ながら、その前段階として「同一労働同一賃金」の定義を明確にすべき。

②今後、労働政策審議会において、ガイドラインのグレーゾーンをできるだけ狭め、企業の実務担当者に分かりやすいものとなるよう、内容の明確化を図るべき。

③労働者の待遇に関する説明義務を事業者に課すことについては、その方向性に異論はないものの、事業者だけに過度な負担を強いるものとならないよう配慮すべき。

④同一労働同一賃金制度の導入に際し、現場でのさまざまな混乱や労使紛争が発生する事態を避けるためにも、企業における取り組みの優先順位を明らかにするほか、紛争の未然防止・早期解決のための手段・仕組みを整備するなどの対応が必要。

⑤法施行に当たっては、企業活動へ与える影響の大きさを鑑み、十分な準備期間を確保するよう強く要望。

5.賃金引き上げと労働生産性向上

①明確な根拠のないまま、最低賃金が継続的に大幅に引き上げられてきたことは残念。政府は、最賃引き上げの影響について検証し、状況に応じて目標達成を見直すことも検討すべき。

②中小企業が賃金原資を確保するために、社会保険料の負担軽減などの対策を検討すべき。

③各種助成金に適用される生産性要件については、業種特性や中小企業の実態を踏まえた柔軟性のあるものとなるよう検討すべき。

6.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正

①中小企業やそこで働く人々の生の声をできるだけ拾い上げ、制度設計に反映させるとともに、特に施行時期については、中小企業の体制が整うまで十分な猶予期間を設けるべき。

②国は省令・通達などをできるだけ早期に公表し、影響を最小限に抑えるよう努めるべき。

③36協定に係る手続きについては、今回の議論を機に、例えば紙ベースでの提出を電子化するなど、行政手続きの簡素化・効率化を同時に進めることを強く要望。

④5年後の見直しについては、労使自治の下、現場実態に応じた柔軟な働き方を設計・導入できるようにするなど、規制をできるだけ緩和する方向で議論すべき。

⑤労働時間に関する規制強化と柔軟な働き方の推進は長時間労働是正の両輪。労働基準法改正案については早期成立を強く要望。

7.柔軟な働き方がしやすい環境整備

①テレワーク推進のためのガイドラインでは、導入に適した仕事内容や労働時間管理の方法、長時間労働の防止策、情報管理の在り方などについて具体例を記載すべき。

②副業・兼業の意義は理解するが、人手不足の深刻化や長時間労働是正への対応、営業機密などの保護、社会保険・雇用保険に対する事業所負担の在り方など整理が必要。

8.子育て・介護などと仕事の両立

①働く方々の生の声やさまざまな保育ニーズをよく拾い上げて、制度設計に反映すべき。

②育休給付を最大2年に延長する前に、まずは、保育園などの整備を通じた待機児童問題の解消に注力するなど、優先順位を付けた政策対応が必要。

③子育て支援費用は企業だけでなく、社会全体の負担(税)による恒久財源で手当てすべき。

9.雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援

①大企業から人手不足に悩む中小企業への円滑な労働移動が重要。産業雇用安定センターなど公的機関のマッチング機能を強化するとともに、中小企業向けの周知・PRに注力すべき。

②U・I・Jターンに関し、大都市のミドル人材と地方の中小企業のマッチングが一層重要。

③インターンシップ推進のため、広報・採用選考活動の開始後、学生自らが希望する場合などにおいては、企業がインターンシップで取得した学生情報を採用活動に使用できるようにすべき。

④労働者申し立てを前提とした解雇無効時の金銭救済制度については、労働者保護に資することから、労働政策審議会で早期に議論すべき。

10.高齢者の就業促進

①さまざまな業種・規模の企業の参考となるよう、高齢者活躍推進に関する好事例を共有すべき。

②在職老齢年金、高年齢雇用継続給付については、財政の維持といった総合的な視点を持ちつつ、高齢者本人の就労意欲を維持・向上させるような制度となるよう検討すべき。

③定年の一律引き上げに反対。継続雇用に取り組む企業へインセンティブを強化すべき。

④高齢者にその知見を生かして積極的に活躍してもらう観点から、国が率先して、例えば、政府の審議会委員の就任(推薦)要件から年齢を除くといった対応も検討すべき。

11.外国人材の受け入れ

①高度専門職、外国人留学生、技能実習生、特定活動(国家戦略特区内での外国人材)の在留資格ごとに課題を整理し、総合的な議論を進めるべき。

②現在、日本商工会議所、東京商工会議所各委員会において、外国人材の受け入れについて検討を行っており、2017年度中をめどに、提言書を公表する予定。(平成29年5月30日)