私的年金については、「中小企業を中心にそもそも企業年金がない者がいる」「企業型DCの加入者のうちiDeCoに加入できるのは、iDeCoの加入を認める労使合意に基づく規約の定めなどがある企業に限られている」といった課題やさまざまな手続き上の課題がある。これらを踏まえ、加入可能年齢の引き上げなどの制度の充実を図ることに併せて、より多くの企業・個人が制度を利用できるよう制度面・手続き面の改善を図ることとした。
中小企業向け制度の対象範囲の拡大など
中小企業における企業年金の実施率は低下傾向にあることから、今回の見直しでは、中小企業向けに設立手続きを簡素化した「簡易型DC」や、企業年金の実施が困難な中小企業がiDeCoに加入する従業員の掛け金に追加で事業主掛け金を拠出することができる「中小事業主掛け金納付制度(iDeCoプラス)」について、制度を実施可能な従業員規模を現行の100人以下から300人以下に拡大する。【2020年10月1日に施行予定】
企業型DC加入者のiDeCoへの要件緩和
2016年改正でiDeCoの加入可能範囲が拡大されたが、企業型DC加入者のうちiDeCo(月額2万円以内)に加入できるのは、拠出限度額(DC全体で月額5・5万円以内)の管理を簡便に行うため、現行はiDeCoの加入を認める労使合意に基づく規約の定めがあって事業主掛け金の上限を月額5・5万円から3・5万円に引き下げた企業の従業員に限られている(※)が、事業主掛け金の上限を引き下げることが困難な場合が多く、事業主掛け金が低い従業員にとっては、拠出可能な額に余りがあるにもかかわらず、iDeCoに加入できない状態となっている。
今回の見直しでは、企業型DCの事業主掛金を管理する記録関連運営管理機関(RK)と、iDeCo掛金を管理する国民年金基金連合会との間で掛け金の合算管理の仕組みを構築することで、規約の定めや事業主掛け金の上限の引き下げがなくても、全体の拠出限度額から事業主掛け金を控除した残余の範囲内で、iDeCo(月額2万円以内)に加入できるようにする(図表参照)。【22年10月1日に施行】
その他の改善として、マッチング拠出を導入している企業の企業型DC加入者は、マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択できるようにしたり、外国籍人材が帰国する際には、公的年金と同様、脱退一時金を受給できるようにしたりする。また、規約変更の手続きや制度間のポータビリティ、運営管理機関の登録事項について、事務の改善を図っている。
こうした制度面・手続き面を改善することで、より多くの中小企業が私的年金を活用していただくことを期待している。
(※)企業型DCと確定給付型を実施している場合は、5・5万円↓2・75万円、3・5万円↓1・55万円、iDeCoの拠出限度額も2万円↓1・2万円にそれぞれ読み替えて適用する。
(厚生労働省 年金局企業年金・個人年金課)
おわり
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