このコーナーでは、下請取引に関する「かけこみ寺」に相談があった事例を参考に、中小企業の取引上のトラブルや疑問点の解決の基本的な考え方及び留意点を解説します。今回は「一般取引関係」の「納入後のクレーム」についての相談事例をご紹介します。
取引基本契約書などの確認を
Q.
LED照明器具部品などを製造・販売するA社は、輸送用機械器具を販売するB社と平成20年に取引基本契約書を締結の上、LED照明の電子部品を製造して販売することになり、現在までに7000台を納入しました。
最近、約1年前に販売・納入済みの部品30台について、B社から機能障害が生じたとのクレームがあったので、A社としてはその後改良された新しい部品と交換することを申し出たところ、B社は従前納品済みの商品全量を回収の上、新部品との交換と併せてB社の被った損害額を請求するとの主張がありました。A社は、その要求に応じる義務があるでしょうか。
A.
商人間の売買においては、商法は買い主の検査や瑕疵(かし)通知義務について民法の特則を定めています(商法526条)。それによれば、買い主であるB社は、検査により売買の目的物に瑕疵があることや、目的物に数量不足があることを発見したときは、「直ちに」売り主であるA社に対してその旨の通知を発しなければならないとされており、その通知をしないと契約の解除や代金減額、または損害賠償の請求が制限されています。
そこで、A・B社間で締結されている「取引基本契約書」や契約履行過程でやりとりされた書面(覚書やメモの類、ファクス、メールなど)を改めてチェックし、A社として商法の前記規定による反論の可否を吟味することが大切です。とりわけ本件売買の目的物である電子部品(商品)に関して、買い主B社の商品検査および瑕疵通知義務がどのように約定されているかがポイントです。
売却して納品した商品については、その後改良されて新しい商品となっているようですが、A・B社間の契約で商品改良がされた場合の交換などに関してどのように約定されているかもチェックする項目となります。契約書の内容を、どのように定めるかの事前の準備が大切です。契約書を作成するに当たって、自社に不利益な点を解消するように「下請かけこみ寺」の専門家の助言を得られることをおすすめします。なお、A・B社間の契約内容によっては、部品の設計や製造に瑕疵があると、A社が契約上の債務不履行として商法526条の範囲を超えて責任を生じる恐れもあります。契約締結段階の事前チェックが重要ですので注意してください。
提供
公益財団法人 全国中小企業取引振興協会(全取協・ぜんとりきょう)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営。
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