日本商工会議所は5月9日、「中小企業の活力強化・地域活性化のための規制・制度改革の意見30」を取りまとめ、政府の規制改革会議(議長=岡素之住友商事相談役)、経済財政諮問会議、産業競争力会議に提出した。日商の中村利雄専務理事は同日、規制改革会議の岡議長を訪ね、意見書を手交。「中小企業の成長促進」「地域の再生・活性化」「対日投資拡大」「行政・財政改革」の4分野における重点30項目など、政府における規制・制度改革の取り組みを加速するよう求めた。
意見書は、今年2月から3月にかけて、各地の商工会議所を通じて会員企業などにヒアリングを行い、「中小企業の活力強化」「地域活性化」の視点で、規制・制度改革を希望する「現場の生の声」を30項目にまとめたもの。「中小企業の成長促進」(9項目)、「地域の再生・活性化」(17項目)、「対日投資の拡大」(3項目)、「行政・財政改革」(1項目)の4分野における問題点を列挙し、具体策を提案している。
今回の意見書で最も指摘が多かったのは観光分野。日本の空港を経由して外国へ向かう外国人の乗継客を地方への観光客として取り込むため、乗継客向けの無査証入国制度を導入することや、外国人旅行者の受入体制とおもてなしを強化するため、特別史跡である大阪城などの敷地内に施設の建設を認めることなど、7項目で規制緩和を求めている。
強い農林水産業づくりのための要望も多い。株式会社による農地の直接所有の解禁や、「農地」の地目のままで高度な水流技術を使うメロンなどの水耕栽培用の植物工場の建設を認めることなど、5項目の改善を提案している。
そのほか、既存の特区や新たに国際戦略特区で認められた特例措置の全国の希望地域への適用拡大も提言。中小企業の成長の促進に向けた改革意見では、中小・小規模事業者が農林水産加工品を製造する際の食品衛生法の施設基準の緩和、外国人技能実習制度の対象職種・作業の拡大、貿易業者が輸入申告を行う税関官署を自由に選択できる制度の早期実現などが盛り込まれている。
日商「規制・制度改革の意見30」の主な内容
○創業・起業・ベンチャーの支援
▶中小・小規模事業者が農林水産加工品を製造する際の食品衛生法の施設基準の緩和
○経営力の強化・人材の確保
▶外国人技能実習制度の対象職種・作業を拡大(介護、地場産品製造等)
○海外展開・国際競争力の強化
▶貿易業者が輸入申告を行う税関官署を自由に選択できる制度の早期実現
○観光産業の振興
▶日本の空港を経由して外国へ向かう外国人の乗継客を地方への観光客として取り込むため、乗継客向けの無査証入国制度の導入
○強い農林水産業づくり
▶「農地」の地目のままで高度な水流技術を使うメロン等の水耕栽培用の植物工場の建設を認める
○地域の安心・安全・成長を支える基盤づくり
▶高齢者等の買い物弱者のために、薬局による医薬品の移動販売を認める
○外国企業の誘致促進
▶国家戦略特区で認められる容積率緩和の特例措置を、国際的ビジネス拠点の整備に取り組む他の地域でも認める
○行政・財政運営の見直し
▶競り下げ方式による公共入札制度について、中小・小規模事業者への影響を検証し、見直す
最新号を紙面で読める!