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営業秘密漏洩、模倣品・海賊版の被害を防げ 中小の知財経営支援を 日商、競争力強化求める意見書提出

意見書を手渡す荒井委員長(右)

日本商工会議所は5月16日、わが国の競争力強化、中小企業の知的財産経営の推進、地域活性化の視点から政府の知的財産戦略本部が作成中の「知的財産推進計画2014」に盛り込むべき政策事項に関しての意見を取りまとめた。同日、荒井寿光・日商科学技術・知財専門委員長が、内閣官房知的財産戦略推進事務局の内山俊一事務局長に意見書を提出。その実現を強く求めている。特集では、わが国の競争力強化に不可欠な中小企業のイノベーション実現のカギを握る知的財産の活用に関する日商の意見の概要を紹介する。

「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見(概要)

わが国は、デフレ経済から成長経済へ移行を果たし、存在感のある国として存続するための重要な転換期にある。デフレマインドからの脱却を確実なものにするには成長戦略の着実な推進が重要であり、成長戦略の主役となるわが国中小企業のイノベーションによる競争力強化が不可欠である。

中小企業のイノベーション実現のカギは、ものづくりで蓄積された高度な技術に加え、ブランド、デザイン、ノウハウなどを含めた知的財産の活用にある。また、中小企業においても海外展開が増加する中、模倣品被害や技術・営業情報の流出被害への対応には、権利化にとどまらない知的財産の戦略的な活用、すなわちオープン&クローズ戦略が肝要となっている。そのため「知的財産推進計画2014」において、中小企業の知的財産の活用を引き続き重要な柱として位置付け推進することが必要である。

さらに、世界の注目が集まる2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、わが国の魅力を世界にアピールする絶好の機会である。クール・ジャパンとして評価の高いアニメや漫画などのコンテンツの一層の海外展開促進のみならず、地域における魅力ある商品・サービスのブランド化から販路開拓までの一貫した支援の強化が重要である。

喫緊の課題となっている営業秘密および模倣品対策については、企業の取り組みレベル向上につながる情報提供、普及啓発を行うと同時に、制度面においても早急に必要な措置を講じるべきである。以上を含め、わが国の競争力強化、中小企業の知的財産経営の推進、地域活性化の視点から「知的財産推進計画2014」に盛り込むべき政策事項に関して下記のとおり意見を述べる。

Ⅰ 重点要望事項

昨年6月に策定された「知的財産政策ビジョン」、「知的財産推進計画2013」に「中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援」がひとつの柱として盛りこまれたことは評価している。今後は、中小企業の知的財産の戦略的活用に向けてより具体的な施策を着実に展開することが必要となる。

第一に、中小企業の海外展開が増加するに伴い、営業秘密の漏洩や模倣品被害は深刻な問題となっていることから、企業の対策を促進する支援、ならびに制度面の強化を図るべきである。

第二に、産業競争力強化法で中小・ベンチャー企業の特許料や国際出願費用などの減免制度が拡充されたが、減免制度の対象とならない中小企業はいまだ多い。制度の対象となる企業を中小企業全体に拡大するとともに、実用新案、意匠、商標も減免対象とするべきである。

第三に、わが国には海外から評価が高いコンテンツや魅力ある地域の商品・サービスが数多くあるが、その潜在力を引き出しきれていないことから、情報発信の強化、ブランド化、販路開拓などの一貫した支援を行うべきである。

以上のことから、当面の重点課題への対応として次の施策が必要と考える。

1 営業秘密の保護強化に向けた企業支援ならびに制度面の対応

・「営業秘密管理指針」ならびに「技術流出防止指針」は、企業が直面している深刻な状況に対処できるよう、実態に即した見直しを図るとともに、中小企業にとって分かり易い内容とすること。

・営業秘密については、秘密管理性、有用性、非公知性を備えるための具体的な取り組みを示した〝実務マニュアル〟を作成し、〝実務マニュアル〟に沿って管理された情報を営業秘密保護の対象とすること。

・上記の指針やマニュアルを活用し、営業秘密は技術などのオープン&クローズ戦略の核となる知的財産であることの理解促進や、営業秘密の漏洩の実態、対策の広報など、中小企業の経営者に対する普及啓発を強力に推進すること。

・漏洩事例やベストプラクティスなど、営業秘密保護に関する官民の情報共有・連携体制を早期に構築し、企業における営業秘密管理レベル向上を図ること。

・営業秘密に関するワンストップ窓口を強化し、営業秘密の漏洩対策や侵害に係る訴訟などへの相談対応を図ること。

・企業活動の実態に即した営業秘密の要件緩和や国外流出に対する刑事罰の強化など、新法制定をはじめ営業秘密対策を強化すること。

・不正に取得した営業秘密を利用し、海外で製造した製品の輸入を差し止めるため、関税法を見直すこと。

2 模倣品・海賊版などの知的財産侵害に対する支援および対策の強化

・模倣品・海賊版等の知的財産侵害に対し、在外公館やジェトロなどによる現地サポート、政府による相手国政府への働きかけの強化、民間交渉への同席など、対応を強化すること。

・海外での模倣品・海賊版の流通を阻止するため、侵害発生国の税関、警察などの執行機関に対して、わが国の取り締まりの実践的なノウハウの提供を積極的に行うこと。

・輸入差止申立書に添付する特許庁の判定書の発行期間を短縮すること。

3 中小企業などを対象とする特許関係料金減免制度の改善

・国内および国際出願における特許料などの減免制度について、米国のスモールエンティティ制度を参考に従業員300人以下の中小企業は一律に利用できるように要件の緩和を図ること。また、対象を実用新案、意匠、商標に拡大すること。

・中小企業の各種申請手続きの簡素化を図ること。例えば、出願、審査請求、早期審査、減免制度の申請時において、それぞれ個別の書類を求めるのではなく、一括して申請できるようにするなど。

・費用負担の大きい中小企業の弁理士費用の税額控除や補助制度の創設を図ること。

4 職務発明制度の見直しに際しての円滑な移行

・法人帰属化や使用者と従業者の契約にゆだねるなどの方向で検討が進められている職務発明制度の見直しについては、中小企業の研究開発の実状を踏まえ、中小企業が円滑に対応できる仕組みにすること。

5 コンテンツの海外発信・放送および中小企業の海外展開支援の強化

・日本から海外に向けてコンテンツを発信する番組の創設や海外での日本番組の放送など、わが国のコンテンツの海外展開を本格化するべき。また、中小コンテンツ企業の国内外の展示会への出展補助、販路開拓の支援を強化すること。

6 地域ブランドの構築および販路開拓支援

・京都ブランド、まちだシルクメロン(町田)、A-PLUS(熱海)などの地域における製品やサービスのブランド力向上に係る取り組みを後押しし、情報発信や販路開拓など、強力に支援していくこと。

・地域の知的財産(育成者権、商標権、意匠権等)を総合的に活用し、地域産品の価値を高めるブランドマネジメントを担う人材の育成を図ること。

・商工会議所などが登録主体として追加される地域団体商標制度の活用を促進するため、商標を料金減免制度の対象とし、商工会議所などを減免措置の対象団体とすること。

Ⅱ 競争力強化戦略に関する要望事項

・国際標準や認証の活用事例に関する普及啓発のさらなる強化。

・中小企業における知的財産戦略の策定支援強化。

・特許の出願から権利化にかかる期間の一層の短縮。

・外国出願費用に加えて特許などの維持にかかる費用に対する補助の実施。

・資金調達などに活用するため、知的財産を資産価値として数値化・指標化する仕組みの構築。

・中小企業向けの知財に関する人財育成カリキュラムの開発。

Ⅲ コンテンツ戦略に関する要望事項

・国際見本市への共同出展や海外での日本イベントの開催など、官民一体となったコンテンツの海外展開や輸出支援策の拡充。

・模倣品・海賊版の拡散防止条約(ACTA)の加盟推進並びに経済連携協定などによる知的財産保護の働きかけ強化。

・海外における明白な権利侵害に対する政府機関の積極的関与。

・コンテンツの海外展開に関するプロデューサー、地域におけるコンテンツの普及啓発などを担う若手クリエイターなどの人材育成。

医療保険制度改革に関する被用者保険関係5団体の要望(全文)

平成26年5月19日

日本商工会議所

健康保険組合連合会

全国健康保険協会

日本経済団体連合会

日本労働組合総連合会

2013年12月に成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(プログラム法)」では、今後の医療保険制度改革について、「必要な法律案を平成27年に開会される国会の常会に提出することを目指す」とともに、最重要課題である高齢者医療制度のあり方については、「必要に応じ、見直しに向けた検討を行う」と規定された。それを受け、社会保障審議会医療保険部会では、今まさに医療保険制度全体の見直しに向けて議論が開始されたところである。

被用者保険は、医療保険制度の中核として国民皆保険を支えてきたが、高齢者を中心に医療費が増加するなか、なによりも高齢者医療への拠出金負担により、かつてない厳しい状況に追い込まれている。就労人口が減少する一方、団塊の世代がすべて前期高齢者に入っていく超高齢社会にあっては、今後も医療保険財政は厳しさを増すばかりであり、このままでは公的医療保険制度の維持は困難な状況に直面しかねない。この危機を回避するためには、最大の要因である高齢者医療制度の財源のあり方を早急に見直すとともに、伸び続ける医療費の適正化策を着実に実行することが必要不可欠である。

われわれ被用者保険関係5団体は、現役世代の納得性を確保するとともに、重い拠出金負担を軽減し、将来にわたり持続可能な制度を構築することをめざして、一致して下記の要望事項をとりまとめた。

政府・与党におかれては、次期改革案の取りまとめにあたり、われわれの総意を受け止め、その実現方に真摯に臨まれるよう切に要望する。

(要望事項)

■医療保険制度改革にあたっては、現役世代の納得性を確保するとともに、現役世代に過度に依存する制度を構造的に見直すべきである。

具体的には、75歳以上の医療費への公費5割を実質確保することはもとより、特に、前期高齢者の財政調整の仕組みを見直し、新たに公費投入を行うべきである。さらに、現役世代の拠出金負担に一定の上限を設定する等、負担増に歯止めをかける仕組みを導入する必要がある。また、これらの負担構造の改革に要する財源としては、消費税の税率引上げ分を活用、充当すべきである。

■プログラム法では、被用者保険における後期高齢者支援金の全面総報酬割導入が検討課題とされているが、これによる国庫補助削減分を国民健康保険の赤字補填に流用することは、国の財政責任を被用者保険に転嫁するものであり、断固反対である。

■超高齢社会においても持続可能な医療保険制度を構築するためには、診療報酬の仕組みの再構築、医療機関の機能分化・連携の推進、ジェネリック医薬品の使用促進、療養の範囲の見直し等様々な医療費適正化対策を更に推進すべきである。

■被用者保険の保険者が医療費の適正化・効率化や加入者の健康の維持・増進に効果的に取り組んできた努力を十分尊重するとともに、今後とも国保と被用者保険が共存し、地域と職域それぞれが各々の連帯を基礎に、保険者機能を発揮できる制度体系を維持すべきである。