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訪タイ・マレーシア 経済ミッション 経済連携、インフラなど関係強化へ

プラユット首相(左から4人目)を表敬訪問したミッション一行

両首相に直談判 ビジネス環境改善求める

AEC発足により存在感が高まっているタイ、マレーシアに日本商工会議所の三村明夫会頭を団長とする大型経済ミッションが訪問し、両国首相と会談。タイのプラユット・ジャンオーチャー首相に環太平洋経済連携協定(TPP)参画を求めたほか、マレーシアのナジブ・ラザク首相には新幹線採用を呼び掛けた。特集では、進出日系企業のビジネス環境や投資環境の改善に向けたミッションの活動を紹介する。

(1面参照)

タイ プラユット首相 TPP参加に前向き

タイ・バンコクの首相府にプラユット首相を表敬訪問したミッション一行は、「TPPへの参加」「ASEANにおける基準・認証・表示制度の調和」「研究開発機能の強化や質の高いインフラ整備の推進」などの課題などを指摘。タイ政府の取り組みへの期待とともに、日本の産業界としての課題解決に向けた協力を申し出た。

プラユット首相からは、タイ経済発展への日本経済界の協力に感謝するとともに、「引き続き日本企業が安心して投資できるよう、政治の安定にも努めたい」との考えを表明。「TPPについては参加を前向きに検討するが、国内には、農産物の地理的表示の問題や薬の価格高騰に対する懸念などさまざまな課題があり、研究が必要。非常に魅力ある内容で、メリット・デメリットをしっかり検討して結論を出したい」と述べ、商務省で検討し、2~3カ月以内に分析結果を閣議で図る見通しを示した。

また、鉄道をはじめとするインフラ整備、産業高度化を支える人材育成、環境問題への対応など幅広いテーマについても言及。具体的には、「都市内・都市間の鉄道路線の新設・改善など交通インフラの整備と運営・メンテナンス」「エネルギーの効率化やエコカー・電気自動車の開発」「タイ産果物の日本への輸出」などに触れ、「日本の協力を期待したい」と要請した。

アーコム・トゥームピッタヤパイシット運輸大臣との会談で、アーコム運輸相は、「鉄道事業の展開は、タイ国内の中小企業における部品製造の体制整備にもつながる」との考えを表明。航空分野では、「航空整備工場の設置について日本企業と話をしたい」と述べた。

ポンチャイ・タルクルワラノン工業大臣政務官との会談では、日本側から、仕様統一・部品共通化によるコストダウンにつながる「ASEANにおける基準・認証制度の調和」などのタイ政府としての取り組みを要請。ポンチャイ大臣政務官は、「ACCSQ(アセアン標準化・品質管理諮問評議会)で、例えば自動車は19項目中11項目が統一され、残りについても他の諸国を説得している」と述べ、前向きな姿勢を示した。

マレーシア ナジブ首相 新幹線の優位性に理解

タイに続き、マレーシア・クアラルンプールの首相府に、ナジブ首相を表敬訪問したミッション一行は、「TPPを通じた日本からの投資拡大と両国の連携強化・発展」「ASEANとマレーシアの競争力強化につながる域内の基準・認証の調和」「産業育成につながる投資奨励策におけるインセンティブの透明化・明確化」などを要請。クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道計画については、「導入コストだけでなく、技術移転や人材育成も含めトータルで評価をすべき」との考えを示し、日本の新幹線方式の導入を求めた。

ナジブ首相は、「マレーシアは日本と長い友好関係があり、安倍首相とは友人として信頼関係がある」と両国首脳同士の親密さを強調。今後の経済政策については「経済改革を推し進め、安定した高い成長を続ける。新政策により、今年は4.5%の成長を目指したい」と述べるとともに、「TPPに参加し、競争を通じて国内産業を強くしたい」との考えを示した。

海外企業の投資奨励策については「投資先としての魅力を高めるには、各社ごとによりフレキシブルにカスタマイズしたインセンティブが必要」と指摘。日本側には、直接投資だけでなく、国内中小企業との連携、金融・物流の活用などを求めた。

高速鉄道の国際入札についてナジブ首相は、「日本の技術・実績はよく理解している」とコメント。今後のスケジュールについては「4月頃には入札時期を含めた日取りが決まる」と述べ、結論にはまだ時間を要するとの見方を示した。

また、高速鉄道計画を所管するサイド・ハミド陸上公共交通委員会議長との会談で、三村会頭は、「クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道計画について日本の新幹線システムの採用を求めたい」とあらためて要請。ハミド議長は「ハードだけでなく、ソフト、運行・維持管理システムとそれを支える人材育成が重要」と日本側の考えに理解を示す一方で、「マレーシアにとって初の越境鉄道プロジェクト。各国からの提案について第1~2四半期のうちにシンガポールと話をまとめていきたい」との見通しを示した。

両国で経済フォーラム AEC発足 巨大市場に期待

日商の訪タイ・マレーシア経済ミッション一行は、両国の経済界トップが一堂に会するフォーラムを、それぞれバンコク、クアラルンプールで開催した。タイでは、経済連携など3テーマで意見交換し、タイの主要経済3団体と中小企業支援協力に関する覚書を締結。マレーシアでは、エネルギー、ハラルの2分野における両国の協力拡大について合意した。

タイ 中小企業支援協力で覚書

タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB-Thailand=タイ貿易院、タイ工業連盟、タイ銀行協会で構成)との共催で開催した「日本・タイ経済フォーラム」には、ミッション参加者のほか、タイ経済界、バンコク日本人商工会議所関係者ら187人が参加。スウィット・メーメンシー商務副大臣による基調講演のほか、「中小企業のビジネスチャンス」「TPP、RCEP、AECなどの経済連携」「インフラの整備の推進」などのテーマについて意見交換を行った。

日本の中小企業の進出支援については、ビザ規制の緩和やインフラ整備、AEC域内の各種手続きの効率化・簡素化など、TPPについては、タイの早期加盟の可能性などについて意見交換。タイ側にTPPへの早期加盟を促すとともに、域内の優遇税率、通関時間の短縮化などの貿易の円滑化、サプライチェーンの優位性、ビジネス環境の改善などの加盟のメリットなどが示された。

また、JSCCIBと日本商工会議所との間で両国間のビジネス関係強化と相互協力を推進するための両組織間の連携、中小企業振興分野での協力などに関する覚書も締結。具体的には、「ビジネスミーティング、研修、セミナーの開催などの開催」「経済全般、投資機会、貿易政策、法改正などに関する情報交換」「展示会・見本市への両国企業の参加促進」などについて相互に協力していくことなどを確認した。

マレーシア エネルギー、ハラルで意見交換

日本商工会議所とマレーシア日本経済協議会(MAJECA)との共催で開催した「日本・マレーシア経済フォーラム」には両国経済界の関係者ら177人が参加。基調講演であいさつしたオン・カ・チュアン第二国際貿易産業大臣は「TPP、RCEP、AECなど国際的な自由貿易の枠組みの中でマレーシアがハブとしての役割を果たしたい」と述べ、競争激化は逆に国内産業の強化につながるとの考えを示した。

フォーラムでは、「エネルギーに関する課題と懸念、エネルギー効率化」「ハラル食品のサプライチェーン」などのテーマで意見交換。エネルギーの効率活用達成のための技術として、発電設備の高効率化に向け、経済性と環境性に優れた最新鋭の高効率石炭火力発電設備などが紹介された。

訪日観光客の増加などに伴い、需要が増加しているハラル食品に関しては、マレーシア国内、日本国内におけるハラル物流サービスのネットワーク構築などについて日本側の取り組み状況などを報告。今後の拡大が予想されるイスラム市場のハブとしてのマレーシアの可能性などについての指摘があった。