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2021年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望(概要) 事業継続支援と地方創生の推進 2020年8月31日 日本商工会議所

新型コロナ対応、迅速に

日本商工会議所は8月31日、「2021年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を取りまとめ、政府・政党など関係各方面に要望した。本意見・要望では、新型コロナウイルスで経営に大きな影響を受けている「中小企業などの事業継続に対し、一層の支援を迅速かつ継続して行うことが極めて重要である」と主張。また、コロナ禍の先を見据えた地方創生の推進と中小企業の生産性向上、大企業と中小企業の「共存共栄」の関係構築、観光産業の持続的展開への支援の必要性などについても訴えている。特集では、本意見・要望の概要を紹介する。

基本的考え方

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、わが国経済は、2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で27・8%減となり、リーマンショック後の2009年1~3月期の年率17・8%減を超えるコロナショックというべき未曾有の影響を受けている。

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が解除され、感染拡大防止と経済活動を両立しつつ、正常化を目指すステージへと移行したものの、再び全国で新規感染者が増加し、地方自治体独自の緊急事態宣言が発令されるなど再度の経済活動自粛の動きが見られ、全国の中小企業・小規模事業者の事業継続と雇用維持の努力は限界に達しつつある。調査会社は8月中旬、廃業を検討する可能性のある中小企業は8・5%にのぼる(30万社超が廃業の恐れ)との調査結果を公表した。現在のところ新型コロナウイルスの完全な終息が見通せず、経済活動が正常化に至るまでに長期間を要することが想定される。今後さらなる感染拡大が続き再度の全国規模の緊急事態宣言という事態に陥れば、倒産・廃業が急増し、わが国経済の崩壊を招きかねないことが強く懸念される。

政府はこれまで、令和2年度補正予算・第2次補正予算・予備費による持続化給付金や家賃支援給付金、持続化補助金、雇用調整助成金、特別貸付や無利子融資などさまざまな資金繰り支援等の大型の緊急経済対策等により、事業者支援に力強く取り組んできた。全国の商工会議所は1月29日に「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置し、経済活動維持に欠かせない「エッセンシャル・ワーカー」として感染リスクを抱えながらも事業者の資金繰りなど各種経営相談に対応するとともに、国・都道府県・基礎自治体からのさまざまな要請を受け、各種支援策の周知・活用支援を行うなど事業者に寄り添った支援を実施してきた。

政府は、地域経済や雇用を支える中小企業の経営者の心が折れずに、今後も事業継続に希望を持つことができるよう、より一層の支援策を迅速かつ継続して行うことが極めて重要である。

当面は、コロナ禍からの再起に向け、「感染症対策と経済活動の両立」が必要であり、新たな感染の波が発生しても再開した活動のレベルを極力落とさずに済むよう、検査体制の拡充と医療提供体制の安定化が急務である。新型コロナウイルスの感染が一定の収束を見通せた段階では、本格的に幅広い消費意欲を喚起するような対策や地域経済の活性化に向けた取り組みが重要である。

一方で、わが国は、人口減少・少子高齢化や地域経済の疲弊など、従前から抱えている構造的な課題にも直面している。課題解決の重要な鍵は、今や世界第31位にまで落ち込んだ「1人当たりGDPの向上」であり、生産性の向上に向け「デジタル技術の実装」を急ぐとともに、価値ある独創的な製品やサービスの創出、設備投資や国内外の販路開拓など「付加価値の向上」が必要である。さらに、サプライチェーン全体での競争力強化や地域経済の活性化には、「大企業と中小企業の新たな共存共栄関係の構築」が必要であり、「パートナーシップ構築宣言」の賛同企業を増やし、「コロナ禍後の未来を切り拓く」ことが肝心である。

またコロナ禍を機に地方への関心が高まっている中、地方移住促進等による「地方創生の推進」が重要である。

さらに、追い打ちをかけるように、今年度も激甚化する大規模自然災害が頻発しており、過去の大規模自然災害の被災や今年の新型コロナウイルスの影響により、二重苦・三重苦の状況に陥っている場合もあることから、被災した中小企業・小規模事業者の迅速な事業再開支援を行うとともに、中小企業経営の強靭化を図り、災害に強い国づくりを進める必要がある。併せて、発生から間もなく10年となる「東日本大震災」から確実な復興・創生を図るための支援を欠かしてはならない。

以上を踏まえ、「2021年度中小企業・地域活性化施策」に関し、次の実現を強く要望する。

Ⅰ.新型コロナウイルスの影響の長期化を踏まえた「中小企業の事業継続」支援とコロナ禍の先を見据えた「地方創生の推進」

<重点要望項目>

1.事業継続に向けたさらなる金融支援の実施

〇日本政策金融公庫・商工中金による中小・中堅企業の財務基盤強化に資する資本性資金供給の継続

〇返済猶予等の既往債務の条件変更、積極的な新規融資等

2.「新しい生活様式」に対応するためのデジタル活用や規制緩和によるビジネスイノベーション支援

(1)「新しい生活様式」に対応するデジタル導入支援

〇IT・IoT、ロボット、AI、5G等の導入支援等

(2)デジタル活用によるビジネスイノベーション支援

〇ECサイトやウェブ商談会、オンライン取引・手続き等

(3)キャッシュレス決済の推進

(4)コロナ禍からの再起に資する規制緩和の推進

3.新製品・新サービス開発など売り上げ回復に向けた継続的な支援

(1)販路開拓、設備投資等の促進に資する支援

〇中小企業生産性革命推進事業の推進等

(2)小規模事業者の挑戦への後押しの強化

(3)商工会議所の経営相談体制の強化

4.業種・業態転換、既存事業の再編、事業承継・引継ぎに挑戦する中小企業への支援

〇ビジネスモデルの転換に向けた業種転換等支援の充実

〇官民連携ファンド等の活用による事業再編等の促進

〇「中小M&Aガイドライン」の普及・推進

〇中小企業・小規模事業者の技術や雇用等の経営資源が確実に引き継がれるための対応

〇経営者保証の二重徴求を原則禁止とする「経営者保証に関するガイドラインの特則」の民間金融機関による普及・推進

5.コロナ禍の先を見据えた地方創生の推進

(1)企業や労働者の地方分散の推進

〇勤務地を制限しないリモートオフィス等の環境整備

〇テレワーク定着を好機とした地方のサテライトオフィス化など人口偏在改善等の取り組みに資する交付金の活用推進

〇大都市圏人材を地方企業に転職させるUIJターンの促進

(2)地方定着を促進する取り組みへの支援

〇場所にとらわれない働き方の推進に取り組む企業を後押しする地方拠点拡充への支援

〇特色ある地方大学など教育機関と企業との連携

〇観光・農林水産業、地域産業の活性化

<重点項目>

1.活動再開の基礎的インフラである「攻めの検査」の拡充と医療提供体制の安定化

2.創業・ベンチャー、スタートアップ支援

3.感染症対策を含むBCP(事業継続計画)の策定の推進

Ⅱ.「価値創造企業に関する賢人会議」の成果実現等による「中小企業の生産性向上」

<最重点項目>

1.「パートナーシップ構築宣言」をはじめとする「大企業と中小企業の新しい共存共栄関係の構築」の取り組み推進

(1)「パートナ―シップ構築宣言」の普及・促進

〇官民協力による「パートナーシップ構築宣言」の普及・促進

〇宣言企業へのインセンティブの充実

〇関係省庁等によるモニタリングなど継続的なフォローアップ

(2)新しい価値の創造に向けた「オープンイノベーションの促進」

〇規模・系列等を越えたオープンイノベーションなどの新たな連携の促進、中小企業の知財やノウハウ保護

〇大企業とスタートアップ企業の契約の適正化

(3)取引適正化の推進

〇下請Gメンによる実態把握や取引適正化対策の徹底強化

〇「振興基準」に基づく主務大臣の指導・助言等の徹底

〇自主行動計画の実効性の向上

〇不当な知財取引の取り締まりの強化

2.新しい経済社会における中小企業政策の在り方

(1)中小企業の変化対応に向けた強力な支援

〇新しい経済社会に中小企業が変化対応できるよう、デジタル化や生産性の向上、取引適正化、新しい価値の創造、事業承継・M&A、創業・ベンチャー、販路開拓・グローバル展開等を政策的に位置付け、それらの支援の強力な推進

(2)「新たなKPI」の達成に向けた道筋の明確化

〇従来のKPIのフォローアップ・検証の実施

〇新たなKPIの達成に向けた道筋や施策の提示

(3)地域コミュニティーの持続性の確保に向けた支援策の充実

〇地域の需要と雇用を担う中小企業・小規模事業者の支援のさらなる拡充

(4)地域経済の中核となる「中堅・中小企業」の経営力強化

〇地域未来投資促進法に基づいて「地域経済牽引事業計画」を策定した中堅・中小企業への支援措置のさらなる充実

〇中堅企業向けの「SBIR」「信用保証制度」の創設

<要望項目>

1.知的財産権の創造・活用支援

2.多様な人材の活用推進と活躍に向けた環境整備に対する支援

3.働き方改革関連法に対応するための中小企業へのきめ細かい支援

4.海外ビジネス展開支援、自由貿易体制の堅持、経済連携協定の推進

5.消費税転嫁対策特別措置法の終了(2021年3月)後の価格転嫁対策の継続

6.中小企業による地球温暖化対策に向けた取り組み推進

Ⅲ.「観光産業」の持続的展開支援と「民間主導のまちづくり」支援、高いストック効果を持つ「インフラの実現」による「地域活性化」

<重点要望項目>

1.「観光産業」の持続的展開への支援

(1)安全・安心対策の強化とその「見える化」の支援

〇事業者、観光地、旅行者における感染拡大防止の徹底

〇3密回避・非接触型事業運営を図る事業者への支援

(2)地域における観光戦略の見直しと弾力的な需要喚起策の展開への支援

〇地域の強み、狙うべき誘客ターゲットの掘り下げへの支援

〇地域プロモーションの展開支援、需要喚起策の柔軟な実施

(3)観光客の地方分散および需要の変化に対応した事業投資の支援

〇観光需要の地方分散を促進する交通ネットワーク整備拡充

〇地域の観光産業における新たなビジネスモデルの導入促進

〇ビジネス需要の取り込みによる地域観光産業活性化に向けた支援

2.地域主体の豊かな暮らしを実現する「民間主導のまちづくり」支援

(1)新たな時代をつくり出す意欲あるまちづくり活動支援

〇民間まちづくり推進主体の財政面・人材面の強化支援

〇地域コミュニティー形成、交流人口の拡大と地域連携の推進等

(2)民間によるまちづくりへの挑戦に対する資金面・技術面の支援(PPP/PFIの活用等)

〇まちづくりの民間資金活用(PPP/PFI)による実施

〇クラウドファンディングやソーシャル・インパクト・ボンドなど、まちづくり資金調達の多様化と充実

〇まちづくりにおけるスマート化の推進

3.強靭な国土をつくり、地域の成長基盤を支える社会資本整備の推進

①多極分散型国土を実現する幹線道路とその接続道路(2次・3次交通接続)の整備促進

②新幹線(リニア含む)の早期完成、関連する鉄道網との連絡・連携体制の整備促進

③トラック・鉄道・内航海運・航空など多様な輸送モードを無駄なく効率的に結合させるハード・ソフト整備

④大規模自然災害等に対して、企業活動の継続や地域BCM(事業継続マネジメント)とかみ合った防災・減災を実現する、回復力と代替性を兼ね備えた社会資本の整備

<重点項目>

1.知的財産権の創造・活用支援

2.多様な人材の活用推進と活躍に向けた環境整備に対する支援

3.働き方改革関連法に対応するための中小企業へのきめ細かい支援

4.海外ビジネス展開支援、自由貿易体制の堅持、経済連携協定の推進

5.消費税転嫁対策特別措置法の終了(2021年3月)後の価格転嫁対策の継続

6.中小企業による地球温暖化対策に向けた取り組み推進

Ⅳ.頻発する大規模自然災害からの復旧・復興

<要望項目>

1.被災事業者の事業再開・雇用維持に向けた支援

2.中小企業・小規模事業者の販路開拓・生産性向上等に資する支援の充実強化

3.中小企業の意識向上を図り、防災・減災対策を促進するための事業者へのインセンティブ

4.防災・減災対策や災害発生後の被災事業者の支援を担う商工会議所の経営支援体制の強化

Ⅴ.東日本大震災からの確実な復興・創生

<要望項目>

1.復興庁による支援継続と巨大化する自然災害への対策強化

2.原子力発電事故問題の終息に向けた国家的対処の継続

3.風評払拭、産業振興の強力な推進の継続

4.漁業・水産業不振や二重債務問題などの課題への対策強化

5.震災地域の再生および将来にわたって持続可能な地域社会構築のための先端産業・新産業の創出・育成支援

本意見・要望の全文は、https://www.jcci.or.jp/news/2020/0831153058.html参照。