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厚労省研究会中間とりまとめ 人口減少下の雇用政策を提言

人材不足分野に重点 地方拠点強化税制 本社機能移転を支援

厚生労働省の雇用政策研究会はこのほど、今後の雇用政策のベースとなる報告書(中間取りまとめ)を公表した。報告書のテーマは、「人口減少下での安定成長を目指して」。「生涯を通じた能力開発」「個々の能力が最大限発揮される環境の整備」「人手不足分野への対応」「地域の雇用対策」に焦点を当て、地方移住や本社機能移転などの「人材還流」を促す仕組みの創設なども盛り込んだ。特集では、報告書の概要を紹介する。

第1章 わが国の労働市場の変化(略)

第2章 人的資本のポテンシャルの最大発揮

⑴幼児期から高齢期までの生涯を通じた能力開発

○幼児期・学校教育段階における学びの重要性

(現状・課題) ・幼児期の能力形成、学校教育による基礎能力の向上は、その後の人生におけるさまざまな人材投資の生産性を高める。 ・わが国の子どもたちは、将来就きたい仕事や自分の将来のために学習・進学する意識がOECDの他国などに比べて相対的に弱い。 (今後の方向性) ・幼稚園・保育所などにおける教育・保育の充実に加え、ワーク・ライフ・バランスの実現による親子で過ごす時間の確保、地域における親子の居場所づくりなどの家庭教育への支援を充実。 ・学校から職場への円滑な移行に向けたキャリア教育などのさらなる推進。

○職業人生を通じた能力開発など

(現状・課題) ・グローバル化や技術革新の進展・経済の不確実性の増大に直面することが想定され、変化する仕事に必要な職業能力を身に付ける必要がある。 ・少子高齢化が進行する中、高年齢層の労働参加がますます重要となり、個々人の職業人生は確実に延びていくことが見込まれる。 (今後の方向性) ・節目節目のキャリアコンサルティングによる能力の棚卸し・職業生活設計の明確化。 ・教育訓練休暇のインセンティブ付与、教育訓練給付のメニューの整備・多様化など必要な能力開発のための支援。 ・高齢期に入る前からの職業生活設計や職業能力開発の支援。 ・自発的なキャリアチェンジが円滑に進む環境整備。 ・企業内外で客観的に評価可能な制度の整備・さらなる普及促進。

○さらなる活躍が期待される層への支援

(現状と課題) ・雇用者の約4割を占める正社員以外の労働者の能力開発機会が相対的に少なく、人的資本蓄積の減少やそれに伴う生産性の低下が危惧される。 ・特に男性について、若年層だけでなく中高年層でも人口に占める非労働力人口比率が高まっている。 (今後の方向性) ・多様化する企業側のニーズや労働者側のニーズを踏まえた上で、不本意非正規にはキャリアアップ助成金の活用などによる正社員化を推進。 ・生活困窮者自立支援制度における就労に向けた支援やサポステにおける職業的自立に向けた支援を推進。

⑵個々の能力が最大限発揮される環境の整備

○全員参加の社会にふさわしい働き方の構築

(現状・課題) ・長時間労働などの無限定な働き方、かつての「男性片働きモデル」が社会全体に染み付いており、少子高齢化をはじめとした経済・社会の構造変化に対応できておらず、企業や労働者の間にさまざまな歪みが生じている。 ・危機意識を持って、「全員参加の社会にふさわしい多様な働き方モデル」へ転換することが求められる。 (今後の方向性) ・ハローワークをはじめとした職業紹介機関による外部労働市場におけるマッチング機能強化。 ・中高年層の能力・経験が生きるような職務配置、雇用管理の導入。 ・効率的な業務遂行を評価する人事評価制度の普及。 ・長時間労働の抑制などの雇用管理改善に関する企業内体制整備へのアドバイスの実施。 ・個々の企業内での環境整備や行政による規制や支援に加え、業界団体や地域の関係者が連携して長時間労働の抑制に取り組むことも重要。 ・誰もが活き活きと活躍できる「多様な正社員」の普及・拡大。 ・時間ではなく成果で評価される働き方を希望する人々のニーズに応え、その意欲や能力を十分発揮できるような働き方の選択肢の整備。

○その他働きやすい職場環境づくり

(現状・課題) ・どのような働き方であってもその職務の内容や責任の程度、能力、経験などを勘案した公正な処遇が必要。 ・長時間労働などによる強いストレスを原因とする労災請求件数は増加。 ・職場におけるセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントなどが社会問題として顕在化。 (今後の方向性) ・公正な処遇を規定する法令の労使双方の理解、均等・均衡待遇の推進。 ・職場におけるメンタルヘルス対策の充実・強化など、労働者が安全・健康に働き続けるための職場環境づくりの促進。 ・男女雇用機会均等法など違反が認められる事業主に対する厳正な指導に加え、企業におけるハラスメント対策が進むよう、具体的な取り組み事例やノウハウを提供。

第3章 産業・地域の課題に対する積極的な雇用政策

⑴人材不足分野の現状と対策

○分野横断的な支援

(現状・課題) ・雇用情勢の改善の中で企業の雇用の不足感が高まっている。 ・進行する人口減少と少子高齢化が労働力の減少圧力となり、今後のトレンドとして、景気回復の中で労働需要増加の際に、供給制約という形で雇用の不足感が高まりやすくなることが想定される。 (今後の方向性) ・労働条件などの改善のための行政と業界団体等の連携。 ・人材不足を好機と捉え、省力化の取り組みを通じた技術革新。 ・国内人材確保に努めた上で高度外国人材の受け入れ促進。

○介護

(現状・課題) ・高齢化の進行に伴い介護ニーズはますます高まり、現状の施策を継続した場合、2025年に約37・7万人の介護人材が不足する見通し。 ・仕事内容そのものの負担に加え、処遇や労働環境が離職の主な原因。 ・三大都市圏、特に東京の近郊市において高齢化が急速に進み、介護ニーズもこうしたところで特に増大。 (今後の方向性) ・就職活動期の高校生や大学生に対する情報発信強化などの参入促進。 ・労働環境の改善、キャリアパスの整備などを通じた定着支援。 ・介護ロボットの導入に向けた支援。 ・大都市圏の特徴を踏まえた広域単位での連携や在宅介護の推進。

○保育

(現状・課題) ・17年度に向けて、国全体で新たに6・9万人の保育士が必要。 ・賃金・休暇・就業時間・責任・保護者との関係などを理由に保育士としての就業を希望しない有資格者が多い。 ・待機児童の約4割が東京都に存在しており、保育ニーズは地域的に偏在。 (今後の方向性) ・地域の多様な人材を活用した保育士の負担軽減策、短時間勤務の保育士の導入促進、職員の勤続年数や経験年数に応じた賃金改善など雇用管理改善を図るための各種取り組みを進める必要。 ・全国画一的な対策ではなく地域の実情に応じた柔軟な対応が必要。

○看護

(現状・課題) ・高齢化の進行に伴い医療ニーズはますます高まり、2025年の看護職員の必要数に約3~13万人のギャップが生じる見通し。 ・潜在看護職員の復職支援が重要な中、一旦離職すると医療技術の進歩に対する不安などから再就職が円滑に進まない。 ・夜勤・交代制勤務などの厳しい労働環境。 (今後の方向性) ・看護師など免許保持者が離職した場合などの届け出制度を創設し、ナースセンターが適切なタイミングで復職研修などの必要な支援を行うとともに、ハローワークも連携して復職を支援。 ・労働時間の改善に向けた取り組みや多様な働き方が可能な環境整備などを推進。

○建設

(現状・課題) ・建設投資額が大きく減少したことに伴って、就業者が減少し、技能労働者の高齢化と若年者減少による将来の担い手不足が構造的な課題。 ・「収入の低さ」を主な理由として若年層の入職不足・離職問題が発生。 (今後の方向性) ・公共工事設計労務単価への労働市場の実勢の適切・迅速な反映。 ・若年層の参入促進のため、座学・実習などの訓練から就職支援までのパッケージ化。 ・女性の参入促進のため、女性の職業訓練の充実や働きやすい現場の環境整備。

○運輸(自動車運送事業)

(現状・課題) ・不規則な就業形態、長時間労働、低賃金のため、若年層や女性の就労が少なく、男性中高年層の労働力がメイン。 (今後の方向性) ・多様な働き方の導入とともに、行政や業界団体が連携し、長時間労働を抑制。 ・女性や若年層への戦略的なリクルートによる参入促進。

⑵地域雇用対策

○目指すべき方向

・これまでの「地域間の雇用機会の格差対策」という観点だけでなく「人口減少対策」を念頭に対応する必要がある。 ↓「人の生活を支える」という視点が重要。 ・東京圏以外の地域も安定して成長することが必要。 ↓地域に「ひと」を集め、人が育つことが重要。また、「ひと」が集まる地域に安定した良質な「しごと」を創出する必要がある。

○地域雇用と取り巻く現状

・三大都市圏、特に東京圏に人口が集中。合計特殊出生率が低い東京圏への人口集中はわが国全体の人口減少を加速化させかねない。 ・東京圏は良質な雇用が集中し高賃金である一方、高い物価、高い家賃、長い通勤時間など、生活コストが高く、生活満足度が低い。

○具体的な対策

人材還流と人材育成 ・(全年齢共通)移住先における仕事や生活環境などの情報を地方自治体などが一元的に提供する仕組みの検討。 ・(若者)奨学金を活用した地方定着の取り組み、大都市圏の若年者に対する地方就職の魅力発信、ハローワークの全国ネットワークを生かしたUIJターン希望者・求人双方の開拓によるマッチング。 ・(シニア)日本版CCRCの検討。 ・地域の多種多様な人材ニーズに対応し、国、都道府県などの関係機関が連携して人材育成を推進。 安定した良質な雇用の創出 ・実践型地域雇用創造事業や戦略産業雇用創造プロジェクトなどの活用。 ・産業競争力強化法に基づく「創業支援事業計画」による創業支援、都市部の大企業での経験を地域の中小企業などで生かせるよう人材情報の一括提供の仕組みを整備し「廃業」ではなく「事業承継」という形へ。 ・企業が本社機能などを東京から移転あるいは地方において拡充し、雇用者を増加させた場合に、税制優遇措置(左図)を拡充(雇用促進税制の拡充)。 ・雇用対策協定の締結、ワンストップ窓口の設置や情報共有など国と地方自治体がそれぞれの強みを生かした雇用対策の推進。公的機関だけでなく、民間企業・NPOなどの地域の関係者との連携を通じた地域課題への対応。 地域特性に応じた対策 ・(連携中枢都市レベルの都市)近隣市町村と有機的に連携し、地域の核として圏域全体の経済成長をけん引していくことが期待される。 ・(一定の産業集積がある地域)賃金や労働時間など「雇用の質」の改善をはじめとする雇用管理改善に向けた施策の実施などにより、地域の雇用機会の魅力を高め、「働きやすさ」や「働きがい」を実現していくことが必要。雇用のミスマッチ対策も必要。 ・(産業集積がほとんどない農村地域など)農産物の6次産業化や特産品のブランド化など地域の固有の資源を生かした雇用創出やテレワークの推進などITインフラを生かした雇用創出、新しい視点で地域の隠れた魅力を発見する外部の人の移住(Iターンなど)の促進が重要。