2013年は日越外交関係樹立40周年に当たり「日越友好年」と定められた。文化交流をさらに推進することや、20年までに両国の貿易量を倍増させるとの期待も表明されるなど、日越関係はますます緊密なものになった。経済面においても、日本はベトナムにとって最大のODA供与国であり、また、年初から12月までの外国直接投資についても、日本は公表されている新規認可・増資額の合計で最大の投資国となっている。昨年1月には安倍総理が就任後初の外遊先としてベトナムを訪問し、グエン・タン・ズン首相との間で日越首脳会談が行われた。両首相は政治・安保分野の対話と協力をより積極的に推進すること、「日越友好年」に当たり、国民レベルの交流をさらに強化することなどで一致。今後、日越の互恵関係はますます深化を続けていくと思われる。
拡大する日越貿易と増える中小企業の進出
こうした両国の緊密さを象徴するように、日越間の貿易は拡大の一途をたどり、また日本企業のベトナム進出も引き続き堅調である。ホーチミン日本商工会でも昨年の1年間で105社の新規入会があり、14年1月現在684社まで増加、製造業から貿易・建設・運輸・サービス・IT・金融保険の12部会からなる日系企業のネットワークを有している。また、ベトナム日本商工会(ハノイ)、ダナン日本商工会を含めるとベトナム全体では1300社近い会員数を誇り、アセアン域内の日本商工会の中でも、タイに次いで二番目の規模にまで拡大した。
従来の大手メーカーの「製造拠点」に加え、日本国内市場の縮小により中堅・中小企業の製造業の進出も顕著だ。経済成長に伴う所得の増加を見込んでベトナム国内市場を狙った小売・サービス分野への進出も目立ってきている。
また、ベトナムの人口は13年11月に9000万人を突破し、40年までには日本の人口を追い抜くペースで増加している。平均年齢も27歳と若く、ベトナム市場の可能性と豊富で安価な労働力人口を背景に今後も日系企業の当地への進出は続くものと考える。
まだ数多く残るリスクと課題
他方、ベトナムのリスク・課題としては、依然としてインフラ整備、電力不足の解消が挙げられるが、国営企業改革・民営化、そして不良債権処理や投資環境整備など、まだまだ克服すべき問題が数多く存在している。
また、ベトナムの現地調達率(28%)はタイに比べ半分程度にとどまっている。日本政府も支援・協力している20年までの工業戦略を実現するためには、選定された戦略産業6業種それぞれの裾野産業を育成し、現地調達率を上げることも非常に重要なテーマとなっている。
ベトナムへの投資を検討している日本企業におかれては、それぞれの事業可能性の検証と同時に、実際にベトナムに足を運び、こうしたリスク・課題をご自身の目でしっかりと見極め、既進出企業の経験を十分に参考にしていただきたい。
(ホーチミン日本商工会事務局長・大林功)
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