一般財団法人日本産業協会が実施する消費生活アドバイザー制度の資格試験は、企業にとって必要な消費者の安全・安心の確保、信頼関係の構築などができ、消費者志向経営を見据えられる人材を養成するために実施されている。企業経営における顧客満足(CS)度の向上がますます重要となる中、「消費生活アドバイザー」の活躍への期待が高まっている。
増える男性合格者
消費生活アドバイザーの平成25年度の試験は、1454人が受験し合格者は306人。合格率は21・0%だった。第1回(昭和55年度)からの合格者の累計は、男性5772人(40・0%)、女性8666人(60・0%)で、総数は1 4438人となった。 また、合格者数の性別では、3年連続で男性が女性を上回った。
消費者との架け橋に
消費生活アドバイザー制度は、消費者の意向を企業経営や行政などへの提言に反映させ、消費者からの苦情相談などに迅速かつ適切なアドバイスができる人材を養成することを目的に、昭和55年に通商産業省(現経済産業省)が創設。その後、内閣総理大臣および経済産業大臣の認定事業となるとともに、地方自治体の消費生活センターで消費者相談などに従事する者に必要とされる資格の一つに指定された。
消費生活アドバイザーは、企業の消費者志向経営の促進や消費者利益の確保などに当たる。賢い消費者を育成する役割も担う。
また、「消費者と企業や行政の架け橋」として企業の消費者対応部門や、販売・営業、品質管理、商品開発などの部門のほか、各省庁の消費者相談室や地方自治体の消費生活センターなど、幅広い分野で活躍している。
試験に合格し、一定の要件(実務経験または研修を受講)を満たした者に消費生活アドバイザーの称号を付与。資格の有効期限は5年で、資格更新の手続き(所定の研修を受講)をすると継続される。
最近の合格者のプロフィールを見ると、企業で顧客満足(CS)経営を進める管理職が増えている。また、将来の地域活動に役立てようと第二の人生設計を立てる人も多い。
企業が取り組む職場の活性化・人材育成
こうした背景には、企業が取り組むCS人材の育成が挙げられる。CS経営を実現するため、社員に消費生活アドバイザー資格の取得を推奨する企業が多数見られる。パナソニック、第一生命、日本生命、トヨタ、NTTドコモなどでは長年、社を挙げて同試験にチャレンジし、200人以上の社員が資格を持ち各部署で活躍している。
通信講座を開講
日本産業協会は、産業能率大学に実施を委託し、消費生活アドバイザー通信講座を開講している。この講座は試験に対応した内容で、社員教育などにも役立つとの声が多く寄せられている。なお、平成24年度試験の合格者へのアンケート調査では、回答者の約半数が同講座を利用している。
平成26年度消費生活アドバイザー試験日程など
■第1次試験(択一試験)
日程:10月5日(日)
試験地:札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、那覇
■第2次試験(論文試験/面接試験)
日程:11月29日(土)〔30日(日)東京・大阪の一部受験者〕
試験地:札幌、東京、名古屋、大阪、福岡
最終合格発表:平成27年2月上旬
■受験資格
性別、年齢、学歴の制限なし
■受験要項の配布期間
7月1日~8月22日
■受験要項・受験申請書(無料)の入手方法
住所、氏名を記入し、切手140円を貼付した返信用封筒(角2サイズ)を同封のうえ日本産業協会宛てに郵送。封筒の表面に「受験要項希望」、裏面に請求者の郵便番号、住所、氏名を明記。7月上旬より順次発送
配布期間中は、試験地の商工会議所(本部のみ)でも入手可能
■受験申請書の受付期間
通常受験者 8月1日~8月29日必着
第1次試験免除者 9月1日~9月8日必着
※1次試験合格者(2次試験不合格)は、翌年度に限り1次試験の受験が免除され2次試験から受験
■受験手数料
12,960円(税込、事業認可官庁へ申請中)
■試験範囲
1.消費者問題
2.消費者のための行政・法律知識
(1)行政知識 (2)法律知識
3.消費者のための経済知識
(1)経済一般知識 (2)企業経営一般知識 (3)生活経済 (4)経済統計と調査方法の知識 (5)地球環境問題・エネルギー需給
4.生活基礎知識
(1)医療と健康 (2)社会保険と福祉 (3)余暇生活 (4)衣服と生活 (5)食生活と健康 (6)住生活と快適空間 (7)商品・サービスの品質と安全性 (8)広告と表示 (9)暮らしと情報
■消費生活アドバイザー証の交付
消費生活アドバイザー名簿に登録のうえ、消費生活アドバイザー証を交付
称号付与手数料(初回)10,800円、更新手数料(5年ごと)10,800円
(いずれも税込、事業認可官庁へ申請中)
【問い合わせ先】
一般財団法人 日本産業協会
〒101-0047 東京都千代田区内神田2-11-1 島田ビル3階
TEL:03-3256-7731 ●03-3256-3010
ホームページ:http://www.nissankyo.or.jp
企業の取り組み事例
トヨタ自動車 豊富な知識・感性でお客様志向を向上
当社では創業以来「お客様第一」を経営理念の一つに掲げており、よりお客様目線を意識して業務を進められるよう「消費生活アドバイザー」資格の取得を推奨しています。約200人の資格取得者のうち、40%以上が日常業務で直接お客様と接することが少ない技術・開発部署に在籍していることが当社の特徴です。
これらの部署には、常にお客様目線を忘れずにいたいという思いから資格を取得した社員が多数います。このような社員によって平成3年に「トヨタ消費生活アドバイザーの会」(以下「会」)が結成され、以降さまざまな取り組みをしてきました。
業務に直結した活動の一つに車両評価があります。発売前に実際の試作車を点検し、何か不都合はないか、お客様目線で確認し、気付いたことを開発責任者に伝え、改善につなげています。
また、施設評価では「会」のアドバイザーが当社の関連施設に出向き、お客様目線で評価し、気付いたことを関係者に伝え、より良い運営につなげています。これまでに「トレッサ横浜」(複合型商業施設)、「メガウェブ」(体験型ショールーム)、「モビリタ」(トヨタ交通安全センター)などの施設で実施しました。アドバイザーの指摘が案内板の増設や、点字設備の補修、お客様の動線改善など、具体的成果に結びついています。
グループ各社に在籍する消費生活アドバイザーとも連携しています。当社とグループ企業が地域社会との交流を目的に毎年開催するイベント「オールトヨタビッグホリデイ」。この会場で、来場者が「賢い消費者」になっていただけるよう、消費者関連情報を展示やクイズ、紙芝居などいろいろ工夫してわかりやすく伝えています。 以上の取り組みは一例ですが、今後ますます資格取得者の増加、「会」の活性化を図り「より一層のお客さま第一の浸透と定着」を目指していきたいと思っています。
(お客様関連部 企画総括室 渉外グループ 丸田美恵・消費生活アドバイザー)
役割はますます増大
一般財団法人 日本産業協会 会長 森田 富治郎
消費者を取り巻く環境が大きく変化する中で、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる経済社会の構築が強く求められております。政府においても、消費者関連法令の整備や、増加の一途をたどる高齢者の消費者トラブルを防止するため、高齢化社会に対応した地域体制づくりの策定に向けた検討など、消費者行政全体の充実・強化が図られております。
このような状況のもと、内閣総理大臣および経済産業大臣の事業認定資格である消費生活アドバイザーが、企業の消費者志向経営や消費者利益の確保などの推進役として果たすべき役割はますます増大し、各方面からも大きな期待が寄せられております。
当協会では、消費生活アドバイザー制度のさらなる普及振興を図るとともに、より高度化かつ複雑化する消費者問題に的確に対応しうる消費生活アドバイザーの育成に全力を傾注する所存ですので、関係各位の今後一層のご支援・ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
(第一生命保険株式会社 特別顧問)
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