事例2 日本が誇る縄文文化を世界に発信していきたい
塚本レイ子/山梨大学理事
東京都千代田区で不動産賃貸業を営み、東京商工会議所議員でもある塚本レイ子さんは、山梨県笛吹市にワイナリーを持つ株式会社ルミエールの取締役でもある。自ら「縄文時代のワイン」を再現するなど、縄文文化を世に知らしめる活動を続けている。塚本さんに縄文の魅力を聞いた。
山梨での生活が縄文との関わりを生んだ
塚本さんは中学生になって日本史の勉強を始めた。
「ところが古語が非常に難解で、私にとっては英語を読む方が楽でした。そのため世界史に興味を持つようになったのです。勉強を始めて驚いたのは、紀元前2600年の頃には、メソポタミアでは文明が栄え、王朝があり、立派な建物が建てられていた。同じ頃、日本は神話の時代です。なぜ?という単純な疑問を抱いていました」
その後、大学で西洋史やキリスト教史を学ぶうちに、外国から日本を見る習慣ができたという。やがて結婚して山梨県との関わりが生まれた。
「夫が山梨でワイナリーを経営していましたので、私も行くようになりました。畑を掘れば縄文土器のかけらが出てくるような地域でしたので、改めて縄文の存在を意識するようになり、次第にその魅力に惹かれていきました。そんなとき(今から十数年ほど前に)、ワインを通じて、当時、九州国立博物館の館長だった三輪嘉六先生と、文化庁長官をお務めになった青柳正規先生と知り合い、体系的に縄文を学ぶ機会をいただきました。お二人は私の師であり、その交流は今も続いております」
そこから塚本さんは「縄文大使」になることを決意した。
「ワインの関係でフランスによく行くのですが、縄文の話をするととても興味をもってくださる。英国の方もです。そこで日本ではワインを通じて知り合った在外公館の方々にも縄文をPRしています」
「縄文王国やまなし」の図録を使って内外にPR
PRを通じて痛感したことは、あまりにも縄文文化が知られていないことだった。そこでこの秋、九州国立博物館で開催される「文化交流展 特集展示縄文王国やまなし」(10月29日〜12月22日)の実現にも奔走した。
「実は、文化交流展で販売する展示図録兼書籍『縄文王国やまなし』には、山梨の縄文についてさまざまな分野の方に、それぞれの視点によるコラムを寄稿いただきました。どのようなことが語られるのか私自身、とても楽しみですし、展示会に来られた方にも興味深く読んでいただけると思います。さらに、この展示図録は英語を併記していますので、海外の方に縄文をPRするためにも使いたいです」
縄文土器は国内各地から出土しているが、「山梨のものは造形が非常に素晴らしい」と塚本さんは言う。
「そこに私は魅せられました。縄文文化に触れたいと思う人は国内外にたくさんいるはずです。その人たちの行動を支援するような仕組みを各自治体などでつくっていただくと、日本のツーリズムの発展や縄文の海外発信にもつながっていくと思います」
「また全国の知事さんや商工会議所の関係者が集まるような場で、縄文を活用した観光のアイデアを出し合えれば、縄文が地域の観光資源となり、地域振興に貢献するのではないでしょうか」
塚本さんの縄文を愛する純粋な活動は、きっと日本に縄文ツーリズムを根付かせるはずだ。
最新号を紙面で読める!