今回のコロナ禍により、デジタル化の遅れや過度な東京一極集中といったわが国が抱える課題が顕在化しました。ポスト・コロナを見据え、日本商工会議所は9月30日、全国の商工会議所会員事業者から寄せられた意見を踏まえ、社会全体のデジタル化による生産性向上や変化に対し迅速に対応する柔軟性の強化と、事業者のさまざまな創意工夫を後押しする規制・制度改革とに関する要望をとりまとめ、政府はじめ関係各方面に提出しました。本要望の概要を紹介します。
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主な要望項目の概要
【基本的考え方】新型コロナウイルスにより、明らかになった課題の克服と企業活動への支援
■新型コロナウイルスにより、わが国経済は未曽有の影響を受けている。感染拡大が長引く中で、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動を両立させることが最優先の課題となっている。
■コロナ禍で明らかになったわが国の課題の克服に尽力するとともに、中小企業の経営者の心が折れず、今後も事業継続に希望を持てるよう、事業環境の整備とビジネスモデルの変革を後押しすることが必要である。
1 デジタル実装による抜本的な生産性の向上
■デジタル化の遅れや過度な東京一極集中といった課題が顕在化。官民を挙げたデジタル化の推進、個人の地方移住および企業の地方移転への関心の高まりという流れを後押しし、加速すべき。
■感染症のみならず、激甚化する大規模自然災害なども想定し、社会全体のデジタル化によって生産性向上とともに変化に対し迅速に対応する柔軟性の強化に取り組むべき。
(1)デジタル実装による社会基盤の整備
●企業の生産性向上に資する行政のデジタル化の推進
●地方公共団体などでの手続きの標準化、オンライン化・デジタル化推進
●請求書、見積書への社印・代表者印の押印の廃止と、補助金の申請・報告・請求などにおけるJグランツの活用促進と使い勝手の改善
●オンライン診療・服薬指導の時限的特例措置の恒久化
●教育のICT化を進めるための遠隔授業の要件の見直し
●マイナンバーの活用による社会基盤の整備およびマイナンバーカードの普及促進
(2)企業の生産性向上に資する行政手続きの見直し
●電子帳簿保存法の要件緩和による中小企業・小規模事業者の電子帳簿の促進
●雇用保険、就業規則、36協定に係る届け出の負担軽減
●「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」に係る手続きの負担軽減
●「小規模企業共済」に係る手続きの負担軽減
●商店街振興組合の総会の簡素化
●介護ソフトの書式統一、紙の「署名・捺印」「交付」などの見直し
●介護支援専門員の月1回のモニタリング訪問の見直し、遠隔面談・サービス担当者WEB会議の恒久化
●食品衛生責任者実務者講習会の簡素化
●防火・防災管理者講習の簡素化
●建築士定期講習の簡素化
●建設業における申請・届け出のオンライン化
●食品営業許可に係る許認可手続きの緩和
●第三者の個人保証の際の公証人役場での対面手続きの見直し
●税理士の2カ所事務所の設置禁止要件の緩和
2 規制・制度の見直しによる民間の創意工夫への支援
■需要の停滞、インバウンドの大幅な減少などに加え、新しい生活様式に合わせて消費行動が変わる中で、現在の「ウィズ・コロナ」から次の「ポスト・コロナ」へ向け、事業者のさまざまな創意工夫を後押しする規制・制度改革が必要。
●プレミアム付き商品券発行拡大のための保証金供託制度の見直し
●道路占用許可基準の緩和の拡大および恒久化
●期限付き酒類小売業免許の期限延長および恒久化
●乗合バス事業者の運行計画・運賃などの許可申請手続きの要件緩和
●旅館業法の宿泊拒否要件の見直し
●企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大
●離職後1年以内の元の勤務先への派遣を禁止する規制の撤廃
●災害発生など緊急時における「年次有給休暇の取得義務化」の適用除外
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