厚生労働省はこのほど、令和2年「就労条件総合調査」の結果を取りまとめ、公表した。同調査は、わが国の民間企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的としたもの。対象は、常用労働者30人以上の民営企業(医療法人、社会福祉法人などの会社組織以外の法人も含む)で、このうち6406社を抽出、令和2年1月1日現在の状況について1月に調査し、4191社(65・4%)から有効回答を得た。特集では、その調査結果を紹介する。
1.労働時間制度
(1)所定労働時間
〇1日の所定労働時間は、1企業平均7時間47分(平成31年調査7時間46分)、労働者1人平均7時間46分(同7時間45分)となっている。
〇週所定労働時間は、1企業平均39時間24分(同39時間26分)、労働者1人平均39時間03分(同39時間03分)となっている。
〇週所定労働時間の1企業平均を企業規模別に見ると、「1000人以上」が39時間00分、「300~999人」が39時間09分、「100~299人」が39時間12分、「30~99人」が39時間30分となっている。産業別に見ると、「金融業、保険業」が38時間17分で最も短く、「宿泊業、飲食サービス業」が39時間51分で最も長くなっている。
(2)週休制
〇主な週休制の形態を見ると、「何らかの週休2日制」を採用している企業割合は82・5%(平成31年調査82・1%)となっている。
〇「完全週休2日制」を採用している企業割合は44・9%(同44・3%)となっている。これを企業規模別に見ると、「1000人以上」が65・8%、「300~999人」が55・2%、「100~299人」が50・7%、「30~99人」が41・4%となっている。(図1)
週休制の形態別適用労働者割合を見ると、「何らかの週休2日制」が適用されている労働者割合は85・9%(平成31年調査85・3%)、「完全週休2日制」が適用されている労働者割合は58・0%(同57・0%)となっている。
(3)年間休日総数
〇平成31年・令和元年(または平成30会計年度)の年間休日総数の1企業平均は109・9日(平成31年調査108・9日)、労働者1人平均は116・0日(同114・7日)となっている。
〇1企業平均年間休日総数を企業規模別に見ると、「1000人以上」が116・6日、「300~999人」が114・9日、「100~299人」が113・0日、「30~99人」が108・3日となっている。
(4)年次有給休暇
〇平成31年・令和元年(または平成30会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は、労働者1人平均18・0日(平成31年調査18・0日)、そのうち労働者が取得した日数は10・1日(同9・4日)で、取得率は56・3%(同52・4%)となっており、取得日数は過去最多(昭和59年以降)、取得率は過去最高(昭和59年以降)となった。
〇取得率を企業規模別に見ると、「1000人以上」が63・1%、「300~999人」が53・1%、「100~299人」が52・3%、「30~99人」が51・1%となっている。産業別に見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が76・8%と最も高く、「宿泊業、飲食サービス業」が41・2%と最も低くなっている。
〇年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合は43・2%(平成31年調査22・2%)となっており、計画的付与日数階級別に見ると、「5~6日」が66・6%(平成31年調査39・6%)と最も高くなっている。(図2)
(5)特別休暇制度
〇夏季休暇、病気休暇などの特別休暇制度がある企業割合は58・9%(平成31年調査59・0%)となっており、これを特別休暇制度の種類(複数回答)別に見ると、「夏季休暇」41・3%(同42・9%)、「病気休暇」23・3%(同25・7%)、「リフレッシュ休暇」13・1%(同13・1%)、「ボランティア休暇」4・6%(同4・5%)、「教育訓練休暇」4・3%(同5・8%)、「左記以外の1週間以上の長期の休暇」16・0%(同14・4%)となっている。(図3)
(6)変形労働時間制
〇変形労働時間制を採用している企業割合は59・6%(平成31年調査62・6%)となっている。企業規模別に見ると、「1000人以上」が77・9%、「300~999人」が72・5%、「100~299人」が64・4%、「30~99人」が56・2%となっている。
〇これを変形労働時間制の種類(複数回答)別に見ると、「1年単位の変形労働時間制」が33・9%、「1カ月単位の変形労働時間制」が23・9%、「フレックスタイム制」が6・1%となっている。
変形労働時間制の適用を受ける労働者割合は51・5%(平成31年調査53・7%)となっており、これを変形労働時間制の種類別に見ると、「1年単位の変形労働時間制」は19・1%、「1カ月単位の変形労働時間制」は23・0%、「フレックスタイム制」は9・3%となっている。
(7)みなし労働時間制
〇みなし労働時間制を採用している企業割合は13・0%(平成31年調査14・2%)となっており、これをみなし労働時間制の種類(複数回答)別に見ると、「事業場外みなし労働時間制」が11・4%、「専門業務型裁量労働制」が1・8%、「企画業務型裁量労働制」が0・8%となっている。
みなし労働時間制の適用を受ける労働者割合は8・9%(平成31年調査9・1%)となっており、これをみなし労働時間制の種類別に見ると、「事業場外みなし労働時間制」が7・6%、「専門業務型裁量労働制」が1・0%、「企画業務型裁量労働制」が0・2%となっている
(8)勤務間インターバル制度
〇1年間を通じて実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が11時間以上空いている労働者が「全員」の企業割合は32・4%(平成31年調査32・9%)、「ほとんど全員」の企業割合は33・7%(同35・0%)となっている。また、「ほとんどいない」の企業割合は2・1%(同3・0%)、「全くいない」の企業割合は13・1%(同10・7%)となっている。
〇勤務間インターバル制度の導入状況別の企業割合を見ると、「導入している」が4・2%(平成31年調査3・7%)、「導入を予定または検討している」が15・9%(同15・3%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が78・3%(同80・2%)となっている。(図4)
〇勤務間インターバル制度の導入予定はなく、検討もしていない企業について、導入予定はなく、検討もしていない理由(複数回答)別の企業割合を見ると、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が56・7%(平成31年調査53・0%)と最も多く、次いで、「当該制度を知らなかったため」が13・7%(同19・2%)となっている。
〇また、「当該制度を知らなかったため」の全企業に対する企業割合は10・7%(同15・4%)となっている。
2.賃金制度
(1)時間外労働の割増賃金率
〇時間外労働の割増賃金率を「一律に定めている」企業割合は81・6%(平成31年調査84・0%)となっており、そのうち時間外労働の割増賃金率を「25%」とする企業割合は93・3%(同94・9%)、「26%以上」とする企業割合は4・5%(同5・0%)となっている。
〇時間外労働の割増賃金率を「26%以上」とする企業割合を企業規模別に見ると、「1000人以上」が21・3%、「300~999人」が13・5%、「100~299人」が5・9%、「30~99人」が2・5%となっている。
(2)1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率
〇時間外労働の割増賃金率を定めている企業のうち、1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業割合は31・1%(平成31年調査27・3%)。そのうち、時間外労働の割増賃金率を「25~49%」とする企業割合は37・2%(同38・5%)、「50%以上」とする企業割合は60・1%(同60・6%)となっている。
〇1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業割合を中小企業該当区分別に見ると、「中小企業」25・9%、「中小企業以外」が58・7%となっている。
(3)諸手当
〇令和元年11月分の常用労働者1人平均所定内賃金は31万9700円となっており、そのうち諸手当は4万7500円、所定内賃金に占める諸手当の割合は14・9%となっている。また、所定内賃金に占める諸手当の割合を企業規模別に見ると、規模が小さいほど高くなっている。
〇令和元年11月分の諸手当を支給した企業割合を諸手当の種類別(複数回答)に見ると、「通勤手当など」が92・3%で最も高く、次いで「役付手当など」86・9%、「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」68・6%などとなっている。
〇企業規模別に見ると、「特殊作業手当など」「特殊勤務手当など」「地域手当、勤務地手当など」「住宅手当など」「単身赴任手当、別居手当など」および「調整手当など」は、規模が大きいほど支給企業割合が高く、「役付手当など」「精皆勤手当、出勤手当など」は、規模が小さいほど支給企業割合が高い。
〇令和元年11月分として支給された労働者1人平均の諸手当の支給額を諸手当の種類別に見ると、「業績手当など」が5万2200円で最も高く、次いで「単身赴任手当、別居手当など」4万7600円、「役付手当など」4万1600円となっている。
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