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情熱ぴーぷる 第19回女性起業家大賞・スタートアップ部門優秀賞

菓子製造工程の細分化で障がい者がプロとして働ける環境づくり

株式会社ジューヴル 代表取締役 矢島 幸子(やじま・さちこ)

株式会社ジューヴル 代表取締役 矢島 幸子(やじま・さちこ)

「やる」と決めるところから

医療系の大学で心理学を学んだ私は、大学卒業後は地域で暮らす精神障がい者の就労や生活支援の仕事に就きました。障がいや病気を持つことでの苦労や生きることの深みを教えていただきながら、約15年間の支援職を経験。先進地視察や研修を受ける中で、障がいを持つ人の経済的自立がほとんど進んでいないことを目の当たりにし、憤りを感じていました。制度が整っているのに、全国の就労継続支援B型事業の平均工賃は1万6118円(平成30年度)なのです。

そんな中、経営努力によって、障がい者に高工賃を支給するしくみをつくった事業所があることを知りました。目の前の低工賃の現実を変えるには、新しい会社をつくる必要があると一念発起。2017年のお正月明けのことでした。

職人の技術と障がい者の適性がマッチングするしくみを

当社では、patisserie soraka(パティスリーそらか)という菓子製造業、飲食店を運営しています。就労継続支援B型の認可を受け、同店で販売するスイーツやパン、焼菓子、カフェメニューの全てを、障がいのある利用者さんと共に製造、販売しています。

創業にあたっては、障がい者が経済的自立をするためのしくみをつくりました。これまでの経験では、福祉支援職が障がい者支援もしながら、工賃の原資となる売り上げの確保にも奔走するというスタイルがほとんど。私も含めて、福祉支援職に競合他社と差別化できるようなパンづくりは困難で、販路拡大や流通に乗るような量産も難しいということが課題でした。

菓子製造業で障がいのある人と共に働くと決めたときには、パティシエと連携して商品開発を行い、福祉支援職がプロ考案のスイーツの工程を細分化して、障がい者それぞれの適性とマッチングさせるしくみをつくりました。また、販路拡大には営業のプロと連携しました。そのしくみがうまく回り始めたことで、当社で福祉就労したいという利用者さんも増加し、創業4年目まで従業員数も年商も右肩上がりに成長。生活に課題を抱える利用者さんをより包括的にサポートするため、共同生活援助(グループホーム)を整備して、生活面からもサポートすることで、障がい者の就労意欲を支えるしくみをつくることができました。

patisserie sorakaのスイーツは開店当初から「グルテンフリー」で開発してきました。岩見沢が米どころであり、スイーツに適した米粉が農家直送で手に入ることや、食品アレルギーという食の課題に着目したスイーツを障がい者の就労が支えることで、つくり手も食べる人も幸せになるような社会の循環を生み出すことができるのではないか、と考えたからです。現在は、東京をはじめ全国各地へも販路を広げており、百貨店が開催する「北海道物産展」にも継続的に出展しながらブランド力をつけています。

今後も、社会が豊かになるような「やさしさをつなぐ」スイーツを共につくり出し、障がいのある人たちが、そこで自分らしく自立した生活を実現できるように、努力していきたいと考えています。

会社データ

社名:株式会社ジューヴル

所在地:北海道岩見沢市6条西1-4-3

電話:0126-35-1945

創業:2017年

事業概要:障がい福祉サービス・菓子製造業・飲食店

HP:https://jouvre-inc.com/

※月刊石垣2021年1月号に掲載された記事です。

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