パラリンピックのチカラ File 18 本場英国で武者修行の日々 すべては東京で世界の頂点に立つために

櫻井 杏理 (さくらい・あんり)

1988年11月15日京都府生まれ。

障がいクラスは程度の重いカテゴリーB、メイン種目はエペ。日阪製作所所属

2019清州IWAS車いすフェンシング世界選手権大会のエペ種目でプレーする櫻井選手

一般のフェンシングとほぼ同じルールだが、特殊な装置に固定した車いすに座って対戦し、フットワークが使えない点が大きな特徴であり、見どころ……そんな車いすフェンシングの日本女子のエースとして高い期待を集めるのが櫻井杏理選手だ。

幼い頃からスポーツ好きで、高校時代は陸上の長距離選手として活躍。理学療法士の専門学校生だった20歳の時、持病の椎間板ヘルニアが悪化して手術を受けたが、後遺症で車いす生活となった。失意の数年を過ごしたが2014年、勤めていたアウトドア用品店での身のこなしが競技関係者の目に留まり、スカウトされた。「フェンシングさえ見たことがなく、対人競技も初めて。でも、挑戦という意味では未知の世界に飛び込むのも面白いかな」

イチから始め「やればやるほど難しさを感じた」が、挑戦欲と持ち前の運動センスですぐに日本代表入りを果たす。「未知」だった競技もしだいに、スピーディーな動きの中で一つひとつに意図や駆け引きがある「奥深さ」に魅せられた。

16年のリオ・パラリンピック出場は惜しくも逃し、「東京こそ」と誓ったが、競技歴は浅く、練習相手や指導者不足など課題はまだ山積みだった。よりよい競技環境を求めて思い切って18年秋、ロンドンに移住。以前から指導を仰いでいた山本憲一コーチのいる名門フェンシングクラブ「レオン・ポール」に拠点を移した。

クラブにはジュニアからシニアまで世界各国から強豪選手が集まる。車いすの固定装置も常設され、健常の選手が「アームワークを磨きたい」と代わる代わる車いすに座り練習相手になってくれるという。さまざまな選手と剣を交えることは技術力向上に加え、外国選手との対戦に慣れることにも役立つ。「国際大会の特別感が消え、雰囲気にのまれにくくなった」と異国暮らしの効果は幅広い。

‶充実の毎日〟はコロナ禍で一変、ロックダウンでクラブも閉鎖されたが、熟慮の末「目標達成にはベストな選択」とロンドン滞留を決めた。「ピンチをどうチャンスに変えられるか。東京(パラ)で最高のパフォーマンスを発揮して頂点に立つという目標を、ぶれずに追い続けます」

車いすフェンシング

華麗な剣さばきの応酬を支える、精密な技や一瞬の駆け引きにも注目!

スピーディーでスリリングな展開は瞬き厳禁。見事な剣さばきや柔軟性を生かした迫力ある攻防、接近戦に打ち勝つ強い精神力や集中力も見どころだ。障がいのレベルによりカテゴリーAとBに分かれて競う。フェンシング同様、それぞれ剣の形状が異なる3種目(フルーレ、エペ、サーブル)が行われるが、車いすを考慮して有効面は少し異なる。

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/wheelchair-fencing/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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