パラリンピックのチカラ File 20 憧れの選手に導かれ、神のようなコーチに支えられ、狙うは表彰台のど真ん中!

重定 知佳 (しげさだ・ちか)

1982年11月22日福岡県生まれ。リカーブ女子日本記録保持者(634点/2019年達成)。2018年2月より林テレンプ所属

インドネシア2018アジアパラ競技大会の重定選手。上山選手とのミックス戦で銀獲得 撮影:小川和行

「アーチェリーを続けてよかった。人生が180度変わりました」

70m先の的に矢が吸い込まれる爽快感に魅せられた重定知佳選手は、競技歴約4年で東京パラリンピックの出場内定も射止めた。だが、平坦な道のりではなかった。

中学2年の時、脊髄の難病と診断され、胸から下の運動機能が弱まり、歩行が困難になった。高校卒業後から11年間車いすテニスに取り組んだが、「対人競技は向いていない」と引退。その後、「ちょっと刺激が欲しい。一人で気楽にできそう」と始めたのがアーチェリーだった。

「1年間だけ真剣に」と取り組み、「これが最後」と臨んだ試合前日、偶然にも、リオパラリンピック7位入賞者で、憧れの存在だった上山友裕選手と出会う。「世界を目指せる」と励まされ、心が動いた。

「決めたらトコトン」「コツコツ努力好き」「負けず嫌い」な性格も相まって急成長。2017年に日本女王に輝くと、世界選手権代表にも初選出された。だが、極度の緊張で「矢をつがえられないほど」手が震え、完敗。「今のままでは世界で通用しない」

16年間勤めた会社を辞め、競技を生活の中心に据えた。急な環境変化の影響か、一時伸び悩んだが、19年に入ると好転。同年夏の世界選手権で東京大会代表にも内定した。

大きかったのはその春から師事していた末武寛基コーチの指導だ。「理論派で教え方も的確。背後からの声で、試合中も落ち着ける。私より8つ年下だけど、〝神〟」と絶対の信頼を寄せる。

上昇気流のまま東京大会へと思っていたら、コロナ禍で延期となり、「ショックが大きかった」。自信の糧だった練習量が激減し、筋力も落ちて弓が満足に引けなくなった。「終わった」と落ち込んだが、末武コーチの「1年あれば」の助言で、自己流だったフォームの矯正に着手した。

筋力トレーニングも増やし、新フォームに慣れてきた今年は再び得点も上向いている。「安定してきました。あとは、どれだけ再現性を高められるか」。練習あるのみだ。

「今はもう、金メダルしか見えない」。〝憧れ〟から〝相棒〟に変わった上山選手と組むミックス戦と、各々の個人戦で、「狙うは金3個」だ。

アーチェリー

極限の緊張感の中、遠方の的を射抜く驚異のテクニックと集中力!

オリンピックでも使われる一般的な弓(リカーブ)と先端に滑車が付き小さな力でも引ける弓(コンパウンド)の2種類の弓が使われる点が特徴。クラス分けは車いすを使うW1、W2と立位、または椅子に座って競技するSTの3つ。障がいに応じて補助具やアシスタントなども認められる。「口で弓を引く」「足で弓を支える」など多様なスタイルも見どころだ。

競技紹介 https://olympics.com/tokyo-2020/ja/paralympics/sports/archery/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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