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エネルギー基本計画 改定に向け意見書提出 安定性、経済性に課題

意見書を手渡す広瀬特別顧問(左)

日本商工会議所の広瀬道明特別顧問・エネルギー・環境専門委員長(東京商工会議所副会頭)は5月20日、経済産業省で保坂伸資源エネルギー庁長官と会談し、日商と東商の連名で取りまとめた「『エネルギー基本計画』の見直しに対する意見」を手交した。意見書は、次期基本計画策定に当たっての商工会議所の考え方を示したもの。広瀬特別顧問は「2050年カーボンニュートラル」など菅首相が示した政府方針の実現に向け、国が前面に立って政策を推進することなどを強く求めた。

会談で広瀬特別顧問は、要望内容を説明するとともに、エネルギーの「安定性」と「経済性」に関する中小企業の懸念の声を伝え、エネルギー基本計画には、「3E」についてバランスよく反映することの必要性を強調。福島第一原子力発電所の処理水の問題で海洋放出を決めるなど政府が明確に方針を示したことなどを評価し、今後とも国が前面に立って取り組むことを要請した。

保坂長官は、「2030年の温室効果ガス46%減」「2050年のカーボンニュートラル」を前提としつつも、日本は再生可能エネルギー推進が難しい地理的条件にあることに触れ、「エネルギーの安定性・経済性も重要な要素」との考えを表明。「エネルギー基本計画の見直しの議論は佳境の段階。政策の原則である『3E+S』の観点、日商の意見をはじめ事業者・需要サイドの視点も踏まえて検討する」と述べた。

広瀬特別顧問は、会談後、記者団に対し、電源構成比率について、「再生エネ・原子力などCO2を出さない電源の構成比は、相当程度のウェイトを占める必要はあるが、再エネには課題もある」と述べ、「政策目標はある程度柔軟にしておかないと影響が大きい」と指摘。「エネルギー基本計画でどのような目標が示されるか注視している」との考えを表明した。

日商・東商の意見書は、2050年と2030年の時間軸に分けて、エネルギー政策の在り方について、それぞれ意見を表明している。「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けては、「国・国民のコミットメントと官民を挙げた革新的イノベーション」「『3E+S』を前提としたエネルギー政策」の必要性を強調。

「多様なエネルギー源の長所を生かし、短所を克服して最大限活用する視点を基に、内外の状況変化に応じて柔軟に対応できるよう複線的なシナリオを用意することが肝要」との考えを示した。

特に中小企業にとっては、環境面だけでなく、経済性を考慮したバランスの取れたエネルギー政策が強く求められることを指摘。「経済と環境の好循環の視点で議論すべき」と訴えている。

具体的なエネルギー政策については、電力部門と産業・運輸・家庭部門のそれぞれについて課題を指摘。電力部門のうち、再生可能エネルギーについては、「電力供給の安定性確保」「エネルギーコストの抑制」「国内産業の育成」について考慮することを強く求めた。

火力については、「安定供給・コスト抑制の観点で欠かせない電力供給源」との認識を示す一方で、脱炭素化に向けたイノベーションや、エネルギー安全保障などの課題を指摘。原子力については、エネルギー政策における位置付けを明確にすること、運転期間を見直し・設備利用率を向上させること、安全対策を徹底することなどを求めた。

産業・民生・運輸部門では、「需要側の省エネ推進」「中小企業の取り組み支援」の2点を指摘。特に中小企業に対しては「理解しやすい全体像・道筋の提示」「自主的取り組みへの支援」を求めている。

2030年に向けたエネルギー政策とエネルギーミックスの見直しの検討に関しては、「安定供給と経済効率性の重視」とともに、「したたかさ」(戦略性)と「しなやかさ」(リダンダンシー、戦略的ゆとり)を備えた見直し内容となることを要望。現存の脱・低炭素電源の最大限活用、特に原子力発電の早期再稼働、新増設・リプレース推進を求めている。

「エネルギー基本計画」の見直しに対する意見(主な要望項目)

(日本・東京商工会議所 2021年5月13日)

Ⅰ.2050年カーボンニュートラル実現に向けて

1.国・国民のコミットメントと官民を挙げた革新的イノベーションを

2.「3E+S」を前提としたエネルギー政策を

Ⅱ.2050年に向けた具体的なエネルギー政策

1.電力部門

1)再生可能エネルギー

①電力供給の安定性確保

②エネルギーコストの抑制

③国内産業の育成

2)火力発電

・脱炭素化に向けたイノベーション促進

3)原子力発電

①原子力発電の位置付けを明確に

②運転期間見直し・設備利用率向上を

③安全対策の徹底を

2.産業・民生・運輸部門

1)需要側の省エネ推進

2)中小企業の取り組み支援

①中小企業にも理解しやすい全体像・道筋の提示を

②自主的取り組みへの支援に期待

Ⅲ.2030年に向けたエネルギー政策とエネルギーミックスの見直し検討

1.安定供給と経済効率性の重視を

2.「したたかさ」(戦略性)と「しなやかさ」(リダンダンシー、戦略的ゆとり)で

意見書全文は、https://www.jcci.or.jp/sangyo2/20210513_energykihonkeikaku_iken.pdfを参照。