経済産業省はこのほど、総合資源エネルギー調査会の「電力・ガス基本政策小委員会」が取りまとめた「2021年度夏季の需給見通し・対策」を公表した。小委員会では、過去10年間で最も猛暑だった年度並みの気象条件での最大電力需要に対して予備率3%以上の供給力があるかを検証。今夏は、安定供給に最低限必要な予備率3%をかろうじて確保できる見通しだが、広域的な供給計画の予備率の8%は下回った。想定を超える猛暑や発電所のトラブルが重なった場合には、さらに厳しくなる恐れもある。
具体的には、北海道、沖縄を除く全国8エリア(東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州)では、7月の予備率が3・7%、8月は九州を除く7エリアで同3・8%の見通し。梶山経済産業大臣は記者会見で、「今夏は安定供給に必要な供給力はかろうじて確保できるものの、ここ数年で最も厳しい見通し」と述べるなど危機感を表明。老朽化などにより火力発電の休廃止が相次いでいることから、早急な対策の取りまとめを指示した。
経産省では、20年度の冬に需給がひっ迫した経験を踏まえ、発電・小売事業者に対しては、供給対策・市場対策に関する要請を行う。需要家に対しては、節電の要請はしないものの、ここ数年と同様に無理のない範囲で効率的な電力使用・省エネへの協力を呼び掛けることにしている。
また、同時に公表した各エリアの冬季需給については、夏季に比べてさらに厳しい見通しで、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の6エリアでは2月の予備率が最低限必要なラインである3・0%。東京エリアでは3%を大きく下回るマイナス0・3%となっている。
東京エリアに関しては、他エリアから最大限の融通を受けたとしても1、2月の需要をまかなえない見通し。12年度以降で最も厳しい数字となっている。
冬季も火力発電所の供給力の減少の影響が大きく、政府としては、今年の冬に向けた追加的な供給力の確保策として、「発電所の補修点検時期のさらなる調整」「現時点で供給力にカウントされていない自家発などの精査及び供給要請」「休止中の電源の稼働要請」なども検討。追加的な費用負担の問題も含めて安定供給確保が課題となっている。
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