パラリンピックのチカラ File 22 再び出会えた自分が輝ける場所 後方のゴール目指して、ただ全力で

市川 友美 (いちかわ・ともみ)

1979年11月8日愛知県生まれ。両下肢機能全廃、障がいクラスはPR1(シングルスカル)。湖猿RT所属

東京パラリンピック代表内定を決めた「アジア・オセアニア大陸予選」での市川選手の力強いオールさばき 撮影:小川和行

水上を滑るように進むスピード感や水面を渡る風の爽快さが魅力のボート競技。市川友美選手もそんな魅力にひかれた一人だ。5月の国際大会で優勝し、東京パラリンピック日本代表にも内定している。

ボートを始めたのは2016年、東京パラに向けた選手発掘イベントで、174㎝の長身と長い腕が強みになると誘われたのがきっかけだ。

子どもの頃からスポーツ好きで、20代になると夏はサーフィン、冬はスノーボードとアクティブに過ごしていた。思いがけない事故に遭ったのは12年、33歳のときだ。オーストラリアのスキー場で働きながらスノーボードをしていたある日、ジャンプの着地時の衝撃で骨折。脊髄を損傷し両脚がまひした。

車いす生活になった当初は落ち込んだが、リハビリをしながら少しずつ前向きになった。ボートは未経験だったが、持ち前のセンスと努力でめきめきと上達。18年には国際戦デビューを果たし、日本記録も更新した。19年の世界選手権では最下位(14位)に終わり、その悔しさが、成長を加速させた。

一般的な競技用ボートはシートが前後にスライドするので、腕だけでなく、脚の曲げ伸ばしも使ってオールをこぐ。しかし、市川が使うパラ競技用のボートはシートが固定されており、オールをこぐ力は上半身の筋力だけだ。

コロナ禍による1年延期も味方につけ、肩や腕の筋力に加え、体幹強化にも取り組んだ。競技を始めた頃は障がいにより体幹がほぼ利かず、いすの背にもたれていないと姿勢を維持できなかったが、厳しいトレーニングのおかげで体幹が回復。前傾した上半身を起こしながらオールを大きくこげるようになり、ひとこぎの推進力が増した。メンタルにも向き合い、スタートでの緊張感を克服するなど課題に日々、取り組む。

初めて臨む世界最高峰の舞台に向け、「どこまで自分を向上させて臨めるかという挑戦だと思っている。今こんな状況で、どうなるか分からないけれど、応援してくれる家族や友達に頑張っている姿を見せられるのはうれしい」。やるべきことに集中し、オールを握る手に力を込める。

ボート

爽快な疾走感と迫力あるラストスパート。最後まで目が離せない!

ルールは一般のボート競技とほぼ同じで、進行方向に背中を向けてこぎ、2000mの直線コースで速さを競う。駆け引きや迫力あるラストスパートにも注目。種目はシングルスカル(男女別)、ダブルスカル(男女混合)、舵(かじ)付きフォア(男女混合+舵手)の三つ。肢体不自由と視覚障がいの選手を対象とするが、障がいの内容や程度に応じ、種目が規定されている。

競技紹介 https://olympics.com/tokyo-2020/ja/paralympics/sports/rowing/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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