日本商工会議所の三村明夫会頭は2日、オンラインで開催された第13回成長戦略会議に出席し、「社会経済課題の解決と成長による経済力強化を成長戦略の基本方針として明確に掲げるべき」との考えを表明した。会合では、政府が成長戦略の当面の方向性や今後の検討課題などを提示。「デジタル化への集中投資・実装と環境整備」「グリーン成長戦略に向けた新たな投資の実現」「人への投資の強化」「経済安全保障」などの分野で実施すべき検討課題などについて意見交換が行われた。
日商の三村会頭は、今年6月に決定した政府の成長戦略について、「経済や医療の安全保障、大都市への人口集中、気候変動・大規模災害など、コロナ禍を契機に顕在化した社会経済課題の解決を目指しつつ、同時に成長による経済力強化のための幅広い政策が盛り込まれた」と評価。その上で、「『社会経済課題の解決』と『成長による経済力強化』は、車の両輪として同時に追い求めるべきものであり、このような二正面作戦をぜひとも成長戦略の基本方針として明確に掲げていただきたい」と述べた。
それぞれの課題への取り組みについては、「個別課題に対症療法的に取り組む前に、それぞれの課題の本質的な意味合いを踏まえた全体像と、その中で解決すべき課題を抽出した上で、国として意思を込めたグランドデザインをみんなで議論して共有すべき」と主張。「当面、コロナ対策が最優先となることはやむを得ない」との見方を示した上で、「構造的課題を克服しつつ、成長力を高めることが、わが国のレジリエンスを高め、日本の持続的な成長を実現することにつながる」との見方を示した。
また、レジリエンスについては、二つの側面があると述べ、第一の意味として、「危機的状況に陥ったときにも、その基本的な機能を失わない能力である」と指摘。「国民の命と生活を守るためには、日本が強い豊かな国でなければならず、国の成長と財政健全化に新しい意味合いが加わった。コロナ禍ではデジタル化の遅れなどの課題も顕在化している」との見方を示した。
第二の意味は、「危機によって変化した環境や新たな課題に対応するため、自らを積極的に改革する能力だ」と指摘。「レジリエンスを実行する重要な主体は民間企業である」と述べ、「環境変化に合わせて自己変革を図ろうとしている企業に対しては、政府からも十分な支援をお願いしたい」と述べた。
会議に出席した菅義偉首相は、「今後の成長の原動力をつくるため、投資やイノベーションを促し、厳しい国際競争に打ち勝つ産業を創出していく」との考えを表明。「秋に向けて、課題の具体化のための議論を進めていただきたい」と検討を指示した。
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