こうしてヒット商品は生まれた! 畳縁

クラシック柄、モダン柄、キャラクターや動物などのポップ柄まで、約1000種類の畳縁がそろう。価格は10mで900~2500円(写真は1・5mの商品)

学生服や国産ジーンズなど繊維産業の盛んな倉敷市児島エリアで、1892(明治25)年に創業した畳縁(たたみべり)メーカー・髙田織物。生活様式の変化で畳の需要が減っていく中、同社は畳縁の新たな活用法や新商品を打ち出し、ヒットを連発している。現在では、畳縁のさらなる可能性や多様性を発信し、持続可能なビジネスモデルとしての畳縁を追求している。

無地が主流の畳縁に柄物を投入して他社と差別化

畳縁とは、畳の長手方向に付けられた細長い布のことである。畳の角の摩耗を防ぎ、畳を敷き合わせる際に生じる隙間を締めるなどの役割がある。その製造で今や国内シェアの40%を占め、オリジナルのヒット商品を連発しているのが髙田織物だ。

同社は、1892年に「備前小倉袴地帯(真田帯)」などの製織で創業した。以降、細幅織物のメーカーとして歴史を歩んできたが、関東大震災を契機に畳の需要が急増したため、大正時代の中ごろから畳縁の製造に力を入れるようになった。

「戦後も復興に伴う畳の需要増があり、同業他社は新規顧客を獲得し、販路を広げていました。一方当社は、当時の経営者である祖父がシベリアに抑留されていたため、完全に出遅れてしまったんです。後発メーカーが市場に食い込むには、価格設定を低くするか、商品の付加価値を高めるかのどちらかしかなく、後者の道を選ぶことにしたんです」と、六代目で同社社長の髙田尚志さんは説明する。

当時の畳縁は綿素材の黒や茶色の無地が主流だった。そこで他社との差別化を図るため、カーテンや着物などを織る際に使われるジャカード織機を導入し、綿の無地にポリエチレン糸で柄出しをした畳縁の製造に乗り出す。次第に、合成繊維を用いて四菱や亀甲、千鳥格子などクラシックな和柄からアーガイルや花模様などのモダン柄までバリエーションを増やすほか、動物柄など遊び感覚の商品まで次々と生み出し、「大宮縁」と名付けて全国展開を開始した。

広く認知してもらおうとハンドメイド素材に着目

畳の需要の増加とともに好調に売り上げが伸びていった畳縁だが、バブル崩壊以降、生活様式の変化や、安価な海外製品の流入により減少の一途をたどる。1970年代には全国に約100社あった畳縁メーカーも20社ほどになり、全体の生産量は減り続けた。そんな中、新商品をつくり続ける同社に対して反発する畳業者もあった。

「畳業界からすれば、畳縁は畳の材料の一部で、安ければ安いほどいい。新しい商品など必要としていないんです。しかし、それではいつまでも畳縁に豊富な種類があることを認知してもらえません。お客さまに『この畳縁が気に入ったから畳を買いたい』と言ってもらうのを業界の常識にしたいと思うようになりました」

手始めに、同社は工場見学を開始した。ところが、新たな問題が浮かび上がる。畳縁の最小ロットは10畳分あり、6畳間や8畳間の畳替えだと余りが出てしまう。無地ならほかの畳への再利用が可能だが、柄物だと難しい。そうした問題を解決しようと、同社が着目したのはハンドメイドだ。

「もちろん畳縁を有効活用する意図もありました。ただそれ以上に、畳を買ったり替えたりする機会は一生に数回がせいぜいですが、ハンドメイド素材としてならお客さまにもっと頻繁に、気軽に手に取ってもらえると考えたことが大きな理由です」

畳縁を素材として認知してもらうために、ペンケースや小物入れ、カードケースなどのオリジナル商品をつくった。さらにハンドメイド関連本を出版し、ギフトショーなど雑貨の展示会にも出展しながら、新たなビジネスへの進出を目指した。

突破口となったのは、2014年にオープンした畳縁ファクトリーショップ「FLAT」だ。1000種類にも及ぶ畳縁をハンドメイド素材として販売するほか、展示ギャラリーも併設している工場直営の畳縁専門店だ。

「自社工場のスタッフが丁寧に素材の説明をしながら販売するのが特徴で、観光スポットとしても人気です。今まで畳縁の存在を意識したことがなかった人に、その魅力やデザイン性を伝えることのできる拠点ができたことで、想像した以上にハンドメイドの市場に受け入れられ、最近では書店などでも扱ってもらえるようになりました」

こうして新たな需要を掘り起こすことに成功し、近年では畳縁をあしらった祝儀袋「縁結びの神様」をはじめ、「ハローキティ」や「鬼滅の刃」などキャラクターのライセンス商品が大ヒットを飛ばし、畳縁全体の売り上げも好調に推移している。

伝統文化からポップカルチャーへ

昨年より続くコロナ禍は、畳業界全体に打撃を与えたが、ハンドメイド素材としての需要は好調だったそうだ。巣ごもり生活の新たな楽しみとして手芸を始める人が増えているのだ。これも畳縁の認知を広げようと、地道な努力を続けてきたことが実を結んだ格好だ。髙田さんは次なる展望として、畳縁の可能性や多様性を国内外に広く発信していきたいという。

「現在、高価格帯の畳縁がよく売れていて、海外の富裕層にも注目されてきています。そうした流れもあり、当社が今スローガンに掲げているのは、畳縁を伝統文化ではなく、ポップカルチャーにしていきたいということ。25年までに国民の10人に1人が、畳縁と言ったら『あのかわいい織物だよね』と言われるものにするのが直近の目標です」

そう語る髙田さんの表情は、すでに確かな手応えを感じているようだ。

会社データ

社名:髙田織物株式会社(たかたおりもの)

所在地:岡山県倉敷市児島唐琴2-2-53

電話:086-477-7162

HP:https://www.ohmiyaberi.co.jp/

代表者:髙田尚志 代表取締役社長

設立:1950年

従業員:34人

【児島商工会議所】

※月刊石垣2021年10月号に掲載された記事です。

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