テーマ別企業事例 キャリア教育で地域と企業を活性化 瀬戸商工会議所

地域に必要な人材の育成が地域や地元企業にとって深刻な問題となっている。そこで、地域を活性化し中小企業を成長させるため、若い人材の地域定着を目指して各地の商工会議所が取り組む、各世代に向けた新たなキャリア教育を紹介していく。

地場産業とご当地グルメを組み合わせ子どもたちの職業観醸成を図る

瀬戸焼そばは昭和30年代に市内で広まったとされており、味付けは豚肉の煮汁やしょうゆベースのタレを使用、器には瀬戸焼を使用するなどの定義がある

愛知県瀬戸市は古くから陶磁器づくりが盛んで、今では「瀬戸物」は陶磁器を指す一般名詞にもなっている。そこで瀬戸商工会議所は、地場産業の瀬戸焼を活用し、小学校と協力して瀬戸焼と瀬戸の食文化を組み合わせた授業「MY瀬戸焼皿をつくって瀬戸を食べよう」に取り組んでいる。郷土愛の醸成や地域PR、そして職業観の育成を目指す。

キャリア教育だけでなく将来的な市のPRにも期待

瀬戸市では、「MY瀬戸焼皿をつくって瀬戸を食べよう」と、小学校高学年を対象に、瀬戸焼と瀬戸のご当地グルメ「瀬戸焼そば」を組み合わせた授業を毎年行っている。授業で児童たちは自分の手で瀬戸焼の皿をつくり、後日できあがった皿の上に調理実習でつくった瀬戸焼そばを盛って食べるというもの。2013年から始め、すでに9年目を迎えている。この取り組みは瀬戸商工会議所が主体となり、瀬戸キャリア教育推進協議会と瀬戸焼そばアカデミーが協力して行っている。

瀬戸キャリア教育推進協議会は、瀬戸の子どもたちを瀬戸の大人たちが育てていくことを目的に16年前に立ち上げたもので、瀬戸焼そばアカデミーは、瀬戸焼そばを新たな地域資源として位置づけ、瀬戸市のイメージアップなどを目指して10年前に発足した。どちらも同所に事務局を置いている。この3者による共同での取り組みについて、瀬戸商工会議所総務企画課の小野利明さんはこう説明する。

「地方の中小企業は人材確保が難しく、企業も地元の人にうまくアピールできない。また学校にキャリア教育や職場体験を任せるのも難しい。そこで、キャリア教育の事務局を商工会議所が持つことで、教育現場と地元企業の橋渡しをしています。小中学生のうちにいろいろな企業の職場体験をすることで、将来、就職を考えるようになったときに、自分が働く姿をイメージでき、そういえば瀬戸にもいい企業があったなという気付きにつながればと思っています」

その一環である瀬戸焼の授業については、子どもたちに瀬戸の地場産業を知ってもらうとともに、彼らが大人になって社会に出たときに、ほかの地域の人たちに瀬戸焼や名物の瀬戸焼そばの話をしてもらい、市のPRにつながることも期待しているという。

自由な発想で皿づくり失敗も気付きにつながる

「瀬戸焼の授業は、器づくりに2時限、釉薬(ゆうやく)がけに2時限、調理実習に2時限の3回に分け、各学期に行っています。実施できる学校数は限られていますが、陶磁器の文化を学べ、食育にもつながるということで、先生方から好評をいただいています」(小野さん)

1学期の器づくりでは、たたらと呼ばれる粘土板を使い、丸や四角、三角といった皿を形づくっていく。授業の前には瀬戸焼の歴史やつくり方を説明し、実際の作成では地元の陶芸家が指導に当たる。

授業で瀬戸焼の説明や器づくりの手伝いを担当する総務企画課の遠山凌太さんは、授業の進め方についてこのように語る。

「授業では私たちがつくり方を指導するのではなく、子どもたちに自由な発想でつくってもらうことを意識しています。もちろん子どもたちは失敗することもありますが、それも何らかの気付きにつながると思っています」

2学期に行う釉薬がけでは、3色の釉薬の中から自分で選び、前回の授業でつくった皿に釉薬がけを行う。その際、釉薬によってどんな化学反応が起こってどんな色になるのか、釉薬を塗るときに手を抜くと色にムラがでることなども説明している。

そして3学期の調理実習では、瀬戸焼そばアカデミーの会員でもある市内飲食店のオーナーが講師を務め、瀬戸焼そばの由来やつくり方などを説明。教室には地元の陶芸家に焼いてもらった皿が届けられ、子どもたちは自分がつくった皿の上に、自分たちでつくった瀬戸焼そばを盛って食べ、授業後は、その皿を家に持って帰っている。

企業経営者が協力し会社の立ち上げを体験

「この授業はまだ9年目なので、その成果はまだ分かりません。ですが、子どもたちが将来、瀬戸のものづくりと食文化について外で語ってくれることで、瀬戸市のプロモーションにもつながっていくことを期待しています」(小野さん)

これ以外にも、瀬戸キャリア教育推進協議会では市内の小中高校生に向けたキャリア教育を推進している。そこでは、子どもたちが多くの大人と触れ合い、多様な生き方や価値観に触れることで、自分で生き抜く力を育めるよう取り組んでいる。中には、瀬戸焼の販売体験をするため、自分たちで模擬会社を立ち上げ、企業理念の設定や商品開発・製造、そして販売を学ぶプログラムもある。

「その際には、実際に会社の社長さんに来ていただき、会社というのはこういうもので、自分の会社はこういう理念があってこういう会社名にしたという話をしてもらっています。子どもたちはグループごとに自分たちで会社の理念や会社名を考え、最後は収支の計算まで行っています」と、同協議会のキャリア教育推進コーディネーターの山田素子さんは説明する。

「子どもたちは普通、自分たちの目に見える職業しか知らないことが多いので、プログラムでは、さまざまな業種の方にお話をしていただくことで、こういう職業もあると知り、将来の選択肢が広がってきます。また、お話に来てくれる人たちもご自身の仕事を楽しそうに話してくださるので、子どもたちも、働くことって楽しいんだ、大人になるって楽しそうだなと思ってもらえると思います」

こういった取り組みは成果が出るまでに時間が掛かるが、少しずつ、そして確実に、瀬戸市の産業のために力を尽くす若者が増えていくことが期待される。

会社データ

瀬戸商工会議所

所在地:愛知県瀬戸市見付町38-2

電話:0561-82-3123

HP:http://www.setocci.or.jp/

※月刊石垣2021年11月号に掲載された記事です。

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