日本商工会議所の三村明夫会頭は11月17日、定例の記者会見に臨み、政府が検討している経済安全保障推進法案などに関して、「経済安全保障と医療安全保障に対する備えは絶対に必要」との考えを示した。制限対象については、範囲の明確化を求めるとともに、相談窓口の設置の必要性を訴えた。円安が進む為替相場については、「円安がさらに進行した場合は危惧しなければならない」と指摘。「現状は、そこまで深刻化していない。もう少し冷静に状況を注視すべき」と述べた。
経済安全保障を巡る国際情勢について、三村会頭は、「今回のパンデミックのような危機的な状況に陥ると、各国が自国を優先することは明らかだ。米中摩擦によってそれがさらに加速している」と指摘。政府の経済安全保障推進法案制定の動きについて賛成する考えを表明した。
一方で、日米両国の企業とも中国市場と極めて密接な関係にあることから、「冷戦下におけるソ連と米国の関係とは異なり、現在は世界でマーケットを共有している」と強調。「機微技術など制限対象は限定的にしつつ、経済活動の大部分は自由に行われることが全世界の発展、全人類の幸せに寄与する」と述べ、「制限するのであればその範囲を明確にしてほしい。グレーの部分、判断が難しいものに関しては相談窓口を設置するなどしっかりとサポートする体制の構築が必要だ」との見方を示した。
為替相場で、1ドル115円近くまで円安が進んでいる現状については、「足元の状況はドル高とみている」と指摘。「良い円安か、悪い円安かの判断は難しい。円安がさらに進行した場合は危惧しなければならないが、まだそこまで深刻化していない」と述べ、「政策当局の今後の対応を注視したい」との考えを示した。
また、「円安のデメリットを受けるのは、製品を輸出していない中小企業だ」と強調。「原材料価格が上昇し影響を受けている中小企業のためにも、購入先には、価格転嫁を受け入れてほしい。コストの上昇をサプライチェーン全体でフェアに負担するという方向に進んでほしい」と述べた。
ガソリン価格の高騰については、「私は、この状況はある程度続くのではないかと見ている」との考えを表明。「この問題を解決するためには、過度なインフレにならない程度で国民全体が消費者物価上昇を受け入れ、それが賃金上昇につながる好循環が必要だ」と述べた。また「今回のエネルギー価格高騰は日本経済が抱える根本的な課題を反映している。これを乗り越えられれば今後の景気回復に大きな役割を果たす」と述べ、重要な局面にあることを強調した。