テーマ別企業事例 「パートナーシップ構築宣言」第2弾 大企業と中小企業の共存共栄へ 村田製作所

官民挙げて取り組みを進めている「パートナーシップ構築宣言」の登録企業数が4000社を超え、ここへ来て急増している。今や「大企業と中小企業の新たな共存共栄」を構築することが企業活動の基本となりつつある。既に宣言している大企業と中小企業の本音に迫る。

「パートナーシップ構築宣言」案内サイトはこちら ▶ https://www.jcci.or.jp/partnership/

「選ぶ」ではなく「選ばれる」企業へ協業パートナーとして共に歩む

京都府長岡京市にある本社。売り上げの約90%が海外市場で、世界各地に89社(うち海外60社)のグループ企業を持つ

日本を代表する総合電子部品メーカーの村田製作所は、2021年2月に「パートナーシップ構築宣言」を公表した。自社の経営方針と親和性の高い構築宣言で、さらに社内外に広くコミットしていく。その気概が感じられる姿勢がサプライチェーンとの連携強化につながり、激動のエレクトロニクス業界で売上増を継続している。

社是と親和性が高いパートナーシップ構築宣言

─1944年の創業からの事業展開について教えてください。

中島規巨社長(以下、中島) あらゆる電気製品、電気機器を内部から支え続けてきました。チップ積層セラミックコンデンサーや携帯電話に搭載される表面波(SAW)コンポーネント、自動車の安全装置に使われるショックセンサーなど高いシェア製品群を有し、海外売上高比率は90%超をマークしています。2020年度の売上高は約1兆6300億円で、高品質の製品と優れたサービスを提供できるグローバルネットワークをもつことが強みです。

─御社は、21年2月にパートナーシップ構築宣言を策定・公表されました。その理由について教えてください。

中島 弊社ではコロナ禍前までは毎朝、全従業員が創業者のつくった社是を唱和していました。その一節に『協力者の共栄をはかり、これをよろこび、感謝する人びととともに運営する』があります。これがパートナーシップ構築宣言にある、取引先との共存共栄の関係構築の促進と、非常に親和性が高いと判断し、それにコミットするという意味合いで宣言するに至りました。

しかし、親和性が高いが故に、公表するまでには慎重に審議を重ねました。社是をベースにした調達の基本方針はすでに①法令順守、②社会的責任を果たす、③公正・公平・誠実である、の三つが制定されています。特に③を重く受け止め、仕入れ先との長期的な関係や相互理解、相互信頼の実現に普段から取り組んでいたので、これらの実践の継続で宣言の主旨は達成できると考えていました。しかし、実践している取り組みの明文化の提案が調達部門からあり、パートナーシップ構築宣言について2カ月検討した末に表明しました。

仕入れ先から「選ばれる」企業であり続ける

─それはなぜですか?

中島 京都商工会議所の後押しもありましたが、宣言を通して社内外にコミットすることで、さらに従業員の意識変化を望めるのではないかと考えました。私どもの事業は仕入れ先の協力があってこそ成立しているものばかり。こちらが選ぶのではなく、選ばれる企業であり続けるためにも、社内外の共通認識としてパートナーシップ構築宣言の公表には意義があるという結論に達しました。

─サプライチェーン全体を通して社会的責任を果たす。仕入れ先との良好な関係やパートナーシップの維持、発展を目指す。そうした気概を込められたわけですね。

中島 その通りです。経営陣の認識は、実際の部資材の調達にあたっている部署間にも浸透しており、制度、体制としても整いつつあります。例えば2020年度には関係者を含めた購買要求に関わる全従業員にeラーニングとeテストを行い、下請法や内部統制に関する意識の向上を図りました。これに加えて購買要求部門や発注部門に対する監査・診断を定期的に行っています。

仕入れ先のニーズと価格変動に柔軟に対応

─さらにエレクトロニクス業界の先陣を切って、仕入れ先への支払い条件の見直しもされました。

中島 パートナーシップ構築宣言を公表する約1カ月前より「月末締め翌月22日現金払い」に切り替えました。手形を切って4、5カ月先の支払いが多い業界ですが、近年は金融機関の低金利などの影響もあって現金取引を要望されるケースが増えてきました。

仕入れ先からの最も多く強い要望に応える姿勢は、多くのサプライヤーから好評をいただきました。

─公正、公平、誠実であるという調達の基本方針に準じて、値上げ要求にもかなりフレキシブルに対応しています。

中島 扱う原材料費には鉱物が多く、価格急騰も珍しくはありません。そこで市場価格との連動方式を採用し、直近1〜3カ月の平均値を仕入れ先との合意の上で決めています。値上げ要求も年1、2回と回数を決めずに、要望に応じて購買部門だけではなく事業部門も含めて前向きに対応しており、この取り組みも仕入れ先から高い評価を得ています。

仕入れ先は、いわゆる下請け業者ではなく、一緒に事業を取り組む協働パートナーという認識です。信頼関係があればこそ透明性のある情報や技術の共有ができるので、一般的なオープンイノベーションよりもさらに踏み込んだ技術交流会も活発です。新たな価値を創出するには信頼関係が不可欠ですから、万が一、不正行為があった場合の仕入れ先専用相談窓口も設けています。調達統括部長のみがメールを受信できる仕組みで、他にも技術管理部門や事業部門がさまざまな相談に対応できるように工夫しています。

─パートナーシップ構築宣言を公表後の今の思いをお願いします。

中島 私ども調達の基本姿勢と取り組みは「お取引のしおり」という冊子で仕入れ先とも共有し、仕入れ先のセルフチェック、体制強化にも注力してきました。

取引先との協業は、事業拡大、サプライチェーン全体の企業価値向上においても不可欠。激動のエレクトロニクス業界で選ばれる会社であり続けたいと思います。

会社データ

社名:株式会社村田製作所(むらたせいさくしょ)

所在地:京都府長岡京市東神足1丁目10番1号

電話:075-951-9111

HP:https://www.murata.com/ja-jp

代表者:中島規巨 代表取締役社長

従業員:75184人(連結)

【京都商工会議所】

※「お取引のしおり」に掲載している調達の基本姿勢と取り組みはWebで一般公開もしています

https://corporate.murata.com/ja-jp/csr/people/suppliers#id1

※月刊石垣2021年12月号に掲載された記事です。

この記事をシェアする Twitter でツイート Facebook でシェア

次の記事

テーマ別企業事例 老舗に学ぶ経営哲学 100年企業が守ってきた”わが家の商法” 吉澤石灰工業

栃木県佐野市

栃木県佐野市にある吉澤石灰工業は、1873(明治6)年に吉澤商店として石灰の製造・販売を始め、今年で創業149年を迎える。同社は佐野市の山間部で...

前の記事

テーマ別企業事例 「パートナーシップ構築宣言」第2弾 大企業と中小企業の共存共栄へ 伊藤鉄工

埼玉県川口市

古くから鋳造(ちゅうぞう)業が盛んで「キューポラのまち」として知られる埼玉県川口市で、伊藤鉄工は建築用の鋳物(いもの)製品をメインに製造・販...

関連記事

テーマ別企業事例 逆境だからこそ学びたい 女性社長の〝こだわり〟経営術 広瀬製作所 無料会員限定

大阪府大阪市

工業ミシンの心臓部といわれる〝かま〟を、開発から製造・販売まで手掛ける広瀬製作所。国内のみならず、アジア、米国、ヨーロッパなど、世界80カ...

テーマ別企業事例 逆境だからこそ学びたい 女性社長の〝こだわり〟経営術 プポン 無料会員限定

新潟県三条市

ヨーロッパを中心とした100ブランド以上の子ども服を扱うセレクトショップ「POUPONS」。社長の佐藤美奈さんはオープン以来、常にお客さまの好みに...

テーマ別企業事例 逆境だからこそ学びたい 女性社長の〝こだわり〟経営術 ドムドムフードサービス 無料会員限定

神奈川県厚木市

2020年に創業50周年を迎えたドムドムハンバーガーは、日本初のハンバーガーチェーンだ。だが、1990年代には全国に400軒近くあった店舗も現在は30を...

月刊「石垣」

20225月号

特集1
〝二刀流〟で逆境に打ち勝つ! 主業務×自社ブランドで販路拡大

特集2
コロナ禍を乗り越えて長続きする会社へ 人材が活性化する職場の仕組みをつくる

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

会議所ニュース

月3回発行される新聞で、日商や全国各地の商工会議所の政策提言や事業活動が満載です。

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

無料会員登録

簡単な登録で無料会員限定記事をすぐに読めるようになります。

無料会員登録をする