日本・東京商工会議所は1月24日、中小企業向けに職場のハラスメント対策のポイントを分かりやすく解説したガイドブック「ハラスメント対策BOOK」を取りまとめ、公開した。改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)により、2022年4月からパワーハラスメント防止措置が中小企業に対して義務付けられる。冊子では、ハラスメントに関する近年の動向と法律の概要を紹介。また、各種ハラスメントの定義から防止に向けた措置、ハラスメント発生後の対応策や公的な支援策に至るまで、事業者が取り組むべき一連の流れを、具体的に分かりやすく解説するとともに、職場で生じやすいハラスメントの具体的事例やハラスメントかどうかの判断基準も掲載している。特集では、冊子の内容のうち、特に、職場における対応にスポットを当てて紹介する。
日本商工会議所が実施した調査(2021年7~8月)結果によると、パワハラ防止法の名称・内容を知っている企業は42・5%にとどまる。多くの中小企業から、「パワーハラスメントと業務上の適正な指導との線引きが困難である」「適正な処罰・対処の判断に迷う」といった戸惑いの声が寄せられていた。日商・東商では、冊子をサイト上で公開。セミナーや各地商工会議所の窓口、経営指導員による巡回指導などで会員事業者などに配布し、中小企業のハラスメント対策への対応を促進していく。
冊子では、パワハラ対策の主なポイントとして、「防止措置の義務化の時期」「パワハラの6類型」「事業主が講ずべき措置」などを分かりやすく提示。対応を呼び掛けている。
詳細は、https://www.jcci.or.jp/20220124_jharassment.pdfを参照。
Ⅰ ハラスメントに関する動向と法律の概要(略)
・ハラスメントに関する事業主の義務、ハラスメント問題と事業主のリスク、ハラスメント問題に取り組む意義など
Ⅱ ハラスメントの種類(略)
・職場における各種ハラスメントの具体的内容や判断基準など
Ⅲ 職場におけるパワハラ、セクハラ、マタハラへの対応(抜粋)
1 指針に定められている事業主が講じるべき措置の内容
●パワーハラスメントの指針
・事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置などについての指針
●セクシュアルハラスメントの指針
・事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置などについての指針
●妊娠・出産などに関するハラスメント指針
・事業主が職場における妊娠、出産などに関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置などについての指針
●育児休業などに関するハラスメント指針
・子の養育または家族の介護を行い、または行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置などに関する指針
※内容は各指針参照
2 事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
(1) ハラスメントの内容、方針などの明確化と周知・啓発
(取り組み例)
■就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書に、事業主の方針を規定し、その規定を併せて、ハラスメントの内容およびハラスメントの発生原因や背景などを労働者に周知・啓発すること。
■社内報、パンフレットなどの広報または啓発の資料などにハラスメント内容、発生原因や背景、事業主の方針を記載して配布すること。
■ハラスメントの内容、発生原因や背景、事業主の方針を労働者に周知・啓発するための研修、講習などを実施すること。
■妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントへの対応を行う場合は、事業主の方針と併せて制度などが利用できる旨を周知・啓発すること。
(2) 行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
(取り組み例)
■就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書に、ハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
■ハラスメントに係る言動を行った者は現行の就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、それを労働者に周知・啓発すること。
3 相談体制の整備
(1) 相談窓口の設置
(取り組み例)
■相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
■相談に対応するための制度を設けること。
■外部の機関に相談への対応を委託すること。
(2) 相談に対する適切な対応
(取り組み例)
■相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
■相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
■相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。
4 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
(1) 事実関係の迅速かつ正確な確認と適切な対応
(取り組み例)
■相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会などが、相談者および行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止め方など、その認識にも適切に配慮すること。また、相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取するなどの措置を講じること。
■事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などは、都道府県労働局の調停などにより紛争を解決することも考えられること。
(2) 被害者に対する適正な配慮の措置の実施
(取り組み例)
■事案内容に応じた対応
(パワハラ、セクハラの場合)
・事案の状況に応じ、被害者と行為者の関係改善に向けた援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者または事業場内産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応などの措置を講じること。
(妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの場合)
・被害者の職場環境の改善または迅速な制度などの利用に向けての環境整備、被害者と行為者の関係改善に向けての援助、行為者の謝罪、管理監督者または事業場内産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応などの措置を講じること。
■都道府県労働局の調停などによる紛争解決案に従った措置を被害者に対して講じること。
(3) 行為者に対する適正な措置の実施
(取り組み例)
■就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書におけるハラスメントに係る規定などに基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪などの措置を講じること。
■都道府県労働局の調停などによる紛争解決案に従った措置を行為者に対して講じること。
(4) 再発防止措置の実施
(取り組み例)
■職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の事業主の方針及び職場におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針、妊娠・出産・育児休業などに関する制度が利用できる旨を、社内報、パンフレット、社内ホームページなど広報または啓発のための資料などに改めて掲載し、配布などすること。
■労働者に対して職場におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習などを改めて実施すること。
5 職場における妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
(1) 業務体制の整備など、事業主や妊娠・出産などした労働者などの実情に応じた必要な措置
(取り組み例)
■妊娠などした労働者の周囲の労働者への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うこと。
■業務の点検を行い、業務の効率化などを行うこと。
6 併せて講ずべき措置
(1) 当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
(取り組み例)
■相談者・行為者などのプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応すること。
■相談者・行為者などのプライバシー保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
■相談窓口においては相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページなど広報または啓発のための資料などに掲載し、配布などをすること。
(2) 相談、協力などを理由に不利益な取り扱いをされない旨の定めと周知・啓発
(取り組み例)
■就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書に、労働者が職場におけるハラスメントの相談などを理由として、その労働者が解雇などの不利益な取り扱いをされない旨を規定し、労働者に対し周知・啓発すること。
■社内報、パンフレット、社内ホームページなど広報または啓発のための資料などに、労働者がハラスメントの相談などを理由として、その労働者が解雇などの不利益な取り扱いをされない旨を記載し、労働者に配布すること。
最新号を紙面で読める!