日本商工会議所は14日、日本経済団体連合会、関西経済連合会と連名で共同提言書「経済安全保障推進法案の早期成立を求める」を取りまとめ、公表した。同日、日商の久貝卓常務理事ら3団体首脳が小林鷹之経済安全保障担当大臣に直接手渡し、提言内容の実現を求めた。小林大臣は、「経済界の予見可能性は可能な限り高めていく必要がある」と述べ、経済界と意見交換しながら対応していく考えを表明。中小企業への負担については「慎重に考えていかねばならない」と述べた。
政府は2月25日、経済安全保障推進法案を閣議決定。法案は、安全保障を確保する経済施策として、「重要物資の安定的な供給の確保」「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保」「先端的な重要技術の開発支援」「特許出願の非公開」の4分野で必要な措置を講じる内容となっている。
「重要物資の安定的な供給の確保」では、政府が指針を策定し、医薬品・半導体・レアアースなどの対象物資を政令で指定。民間事業者は、重要物資の安定供給確保のために作成した計画が認定されれば、金融支援などを受けることができる。
「基幹インフラの安定的な提供の確保」では、事業者は重要設備の導入や維持管理などの委託に関する計画を事前に提出し、政府が審査する内容。対象は、電気・ガス・石油・水道・鉄道・電気通信・金融など14分野で、対象事業者や設備などは、今後、政省令で指定される。
「先端的な重要技術の開発支援」では、宇宙・海洋・量子・AIなどの分野の研究開発や実用化を支援する官民協議会を設置し、政府が伴走支援を行う。協議会の参加者には政府が有用な情報を提供する一方、守秘義務を設け、研究成果は公開を基本とし、情報の範囲や取扱いは参加者が決定することになっている。
「特許出願の非公開化」では、核兵器や武器の開発につながる技術など、わが国の安全保障を損なう恐れがある発明の出願を非公開とする制度を導入。特許庁と内閣府の二段階で審査し、非公開とされた発明は外国出願も禁止される。
日商など3団体の提言では、「国際情勢が厳しさを増す中、経済と安全保障を切り離して考えることはもはや不可能であり、経済面でも安全保障を確保することは喫緊の課題である」と指摘し、政府の法案成立を目指す方針に支持を表明。内容については、「基幹インフラの重要設備に関する審査の遡及(そきゅう)適用が見送られるなど、全体として経済活動の自由や国際ルールとの整合性に配慮した内容となっている」と評価している。
一方で、各分野の基本指針や政省令に委ねられている制度の具体化に当たっては、事業者に過度な負担が生じることのないよう、「対象をできる限り絞り込むべき」と強調。特に、「基幹インフラの安全性・信頼性の確保の対象となる事業者や設備の指定に当たっては、中小企業への負担や影響に特段の配慮が求められる」との考えを示した。
さらに、「法案成立の暁には、経済界の意見を十分踏まえて政省令などを決定されたい」と要望。また、並行して取り組むべき政策として、わが国産業競争力の強化のための規制改革、国際標準の獲得、人材の育成・確保などを指摘している。
提言を受け取った小林大臣は「経済活動の自由は大変重要。他方、国民の暮らしをどう守るか。当然バランスを取らなければならない」と指摘。事業者側の予見可能性については、「可能な限り高めていく必要がある」と述べた。
また、中小企業への負担については、「慎重に考えていかねばならない」との考えを表明。「グレーゾーンについてもできる限り事前に相談にしていただけるような窓口体制はつくる必要がある」との考えを示した。
国際情勢などにより、予見が難しい状況になった場合については、「経済界と意見交換しながら対応していきたい」との考えを表明。サイバー攻撃などについては、それぞれの企業でも十分に対策することなどを求めている。
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