長引くコロナ禍はいまだ収束が見通せず、景気回復まではまだまだ厳しい状況は続くという予想も出ている。しかし、苦境の時ほど経営者のモチベーションが重要になってくることも事実だ。そこで、厳しい状況下にも負けない強さとしなやかさを備える経営で従業員を守り、業績を上げ続ける女性経営者が持っている〝こだわり〟に迫った。
顧客の好みやニーズに徹底対応してファンを全国に拡大
ヨーロッパを中心とした100ブランド以上の子ども服を扱うセレクトショップ「POUPONS」。社長の佐藤美奈さんはオープン以来、常にお客さまの好みに耳を傾け、「こういう服が欲しかった」が見つかる品ぞろえを心掛けてきた。その結果、今では新潟県内はもちろん、全国にファンを持つ人気店となっている。
開店して「こんな幸せな商売があるのか」と実感
金物工業の盛んな新潟県三条市で、2003年に「POUPONS」はスタートした。当時、輸入子ども服を専門に扱うセレクトショップは日本でも珍しく、県内では草分け的存在だ。同店は、大型商業施設や商店街のようなにぎわいのある場所にはない。しかし、ヨーロッパを中心とした100を超えるブランドやオリジナルブランドの子ども服を取りそろえる店として、県内全域から足を運ぶ常連さんをはじめ、通販サイトを通じて全国にファンを持っている。ちなみに、POUPONSとはフランス語で「赤ちゃん」という意味だ。
「店を始めたきっかけはフリーマーケットです。姉がフランス人と結婚して、フランスのかわいい子ども服が手に入りやすかったので、それをフリマで売ったら毎回好評で。中には『次はどこでやるの?』と聞かれることもあり、こんなに欲しい人がいるなら、個人輸入して売ろうかという話になりました」と同店を運営する佐藤美奈さんはいきさつを説明する。
早速、三条商工会議所が募集していたチャレンジショップ制度に応募。空き店舗の片隅を借りて、姉と2人でセレクトショップを始めた。当時はフランスの人気ブランド「PETIT BATEAU(プチバトー)」のベビー服をメインに扱っていた。肌触りの良さや丈夫さに加え、日本製品とは違う色味が新鮮で、上々の滑り出しとなる。
「かわいい商品を仕入れて、かわいい赤ちゃんを連れたお母さんが買いに来て、喜んでもらえる。こんなに幸せな商売があるのかと思いました。姉がフランスに帰ることになり、私一人でやっていこうと当時勤めていた会社を辞め、プポンをオープンしました」
誘客やネット販売につながる企画を次々と実践
店舗の運営に当たり、佐藤さんが特に配慮したのが品ぞろえだ。同店は、たまたま前を通り掛かって立ち寄るような店ではない。子ども服を買うためにわざわざ来てくれたのに、商品が品薄では申し訳ない。そこで来店客から好みや要望を聞きながら、少しずつ取り扱いブランドを増やしていった。
開店2年後には黒字に転換し、スタッフを雇い始める。皆、子どものいる女性だ。子ども服になじみがあり、消費者としての厳しい目線を持っている上に、働くお母さんの大変さを理解しフォローし合える強みがある。そうしたスタッフの意見も取り入れながら、お客さまのニーズに応えていった結果、「ベビーからママまで」幅広く扱う店となっていった。
「三条市は県のほぼ中央に位置し、交通の便もいいので、徐々に県の遠方からも買いに来てもらえるようになりました」
着実に固定ファンをつかみ、お客さまの来店頻度を上げていこうと、佐藤さんが力を入れたのがイベントだ。開店記念日に合わせた周年祭をはじめ、子どもと手づくりが楽しめるワークショップ、小さくなった服を販売する「おさがりマーケット」などを企画し、人が集まる機会を設けた。ほかにも、同市内にあるアウトドアメーカー・スノーピークとコラボしたビッグイベントも3年連続で開催。毎回2000人を超える集客を果たしている。また、早い段階からネットの活用にも積極的だ。
「ネット販売を始めたのも早いですが、日本でまだ登録者の少なかった時期からインスタグラムを始めて情報発信してきました。お母さんたちはインスタを良く見ているので、いいコミュニケーションツールにもなっています」
現在、インスタのフォロワー数は2万1000人に上る。新商品情報や子どものスナップ写真などを主に載せてきたが、それを見て商品の取り置きを頼まれるなど、ネット販売の売り上げにも貢献しているという。
来店を促す起爆剤として新たにカフェをオープン
これまで緩やかに増収増益を続けてきたが、コロナ禍の昨年は減収を余儀なくされた。ネット販売が好調である程度は補うことができたが、コロナ終息後に客足を取り戻すには、起爆剤となる新たな特徴が必要だと佐藤さんは言う。
「今や画像さえあれば、どこのブランドの服か分からなくても、ネットで簡単に検索して買える時代。しかも客層はデジタルネイティブです。そういう人たちにも店に来ていただけるように、この3月にカフェをオープンしました」
実は昨年8月に隣に空いた店舗に移転し、旧店舗をカフェにする準備を進めてきた。ショップ&カフェという新たな機能のほか、カフェ店内でオリジナルブランドの新作展示会や飲食店などとコラボした販売会、イベントなどを随時開催していく予定だという。
「大きな挑戦ですが、今からワクワクしています。20年近くやってきて分かったのは、私やスタッフが楽しんでやっていると、お客さまも必ず反応してくれるということ。今後も自分にできることを少しずつ、気負わずにやっていきたい」と佐藤さんは穏やかに語った。
会社データ
社名:株式会社プポン
所在地:新潟県三条市東裏館2-1-34
電話:0256-35-2075
代表者:佐藤美奈 代表取締役社長
従業員:6人(パート含む)
【三条商工会議所】
※月刊石垣2022年4月号に掲載された記事です。
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